Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『インセプション』

2010-07-28 20:07:59 | 映画
クリストファー・ノーラン監督の最新作で、
レオナルド・ディカプリオ主演、渡辺謙出演の映画
『インセプション』を観てきました。
2時間半くらいある大作なのですが、
面白いので、長くて疲れるってことにはなりません。
ちょっとトイレにいきたくなるだけです(事前にいっとけ)。

他人の夢に侵入して、その人の秘密や情報を入手してしまう、
夢泥棒集団みたいなのがいるんですよ。
その主犯格なのがディカプリオです。
この映画のタイトルになった『インセプション』は「植え付け」という意味です。
夢から何かを抜き取ることを仕事とする彼らが、
「植え付け」とはどういうことか。

『メメント』や『ダークナイト』の監督さんですから、
どういった構成でみせてくれるのだろうと楽しみにしていた反面、
あまりに複雑に場面を配置していて、観ていて疲れるんじゃないかという危惧がありました。

しかし、そこは天下の一級エンタテイメント作品です。
観客にわかりやすいように、いじわるや伏線はありません。
わかりやすく、解釈しやすく、記憶に残りやすい展開の仕方。
あんまり書くとネタバレになりますが、各々のシーンのメリハリがいいというか、
ケジメがついているというか、ストーリーが複雑な絡み合い方をしても、
明確に色分けして示してくれるので、混同しにくいかと思います。
かといって、軽くて淡白な表現にはなっていません。
そういうところ、すごく頭と気を使って作りこんでいたなぁ。

複雑なものや割り切れないようなものを、
このノーラン監督にやってもらうと良い作品ができるような気がします。
今回の『インセプション』も十分に複雑で、音楽でいえばデモの段階では、
わかる人はわかるけれど…というレベルのものだったと思われます。
それを監督がよく咀嚼して表現し直して映画にしている印象を受けるんですよね。
そこでどういう取捨選択が行われたかはそれぞれの監督によるところなのでしょうけれど、
ノーラン監督は、その作品のプロトな段階にある面白味ってものをちゃんと見抜いて、
どう見せればいいかっていうところの考え方が、丁寧で、もしかすると文学的なのかなぁ
という気がしました。もちろん、映像の作り方だとかはすごく現代の映画的なのですが、
純文学的な傾向を持っているなぁと感じます。

と、もうちょっと内容について触れますと、
夢の中のシーンが多いのですが、夢にリアリティがありすぎなところがどうかとも言える。
これがティム・バートン監督だったら、まったくもって悪夢で支離滅裂な世界の中での
ハードボイルド活劇になったかもしれない。
夢で自分が死ぬことについてだって、リアリティがありすぎです。
僕は何度も経験がありますが、夢の中で、たとえば戦車についているような機関銃で
ばばばばばばと撃たれて、細切れにされて死ぬことがあったんですが、
その撃たれる瞬間に、僕はもう一人の僕となって違う場所に出現して、
機関銃でぼろ雑巾にされるもう一人の僕の様子を、痛々しく見守っていました。
そういうね、瞬時に同一人物であるのに主格が変わるってのが夢だったりするでしょう。

つまりは、そんな、夢に侵入するなんてのは、もっとテレパシックな交信になると思うのですよ。
この『インセプション』の夢世界の表現というのは、
漫画『20世紀少年』のバーチャルアトラクションからヒントを得ているかもしれません。
似ている感じがしましたね。

それと、あと重要な、この夢世界の核となる部分に疑問があるのですが、
それはネタバレになるので書きません。
二回か三回か見て考えてみたら納得がいくだろうかねぇ。
ちょっと僕には鈍い所があったりするので、わからなかっただけなのかな。

終わり方は映画的で良かったです。

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地上波デジタル

2010-07-23 15:21:35 | days
うちのテレビがやっと地デジになりました。
天気予報や番組表やニュースをいつでも見ることができます。
そして、画質が大幅に向上しました。
地デジになって初めてみた女優さんは堀北真希ちゃんだったのですが、
すっげー可愛かったです。びっくりです。こりゃ人気もあるよなぁ、と納得。
サッカー選手の長友くんがメロメロにもなるよなぁ、と理解。

僕は小さい頃から視力が良くなかったですから、
地デジの世界というのは、視力が良い人の世界を体験しているようなものです。
建物から離れていても、細部がわかりますし、
顔もしっかり見ることができる。
「コンタクトを外すと ぼやけてるから好き」
という加藤いづみさんの歌があったりもしますけれど、
そんなぼんやりした世界ばかりを見て30歳を過ぎてみれば、
視力の良い、くっきりとした明瞭な世界がとても新鮮です。
僕が小さい頃から今まで視力が1.5くらいで生きていたら、
世の中にすごく醒めていたかもしれませんし、
もっとシビアな人間になっていたかもしれません。
そして、幻想も持たない人になっていて、
ときおりみかけるとびきりの美人に、今の僕よりも驚いているか、
もしくは、そういう「美」があることをわかっているせいか、
もっと世界の深部まで見通せる知性を持とうとしていたかもしれない。

それだけね、視界というものは、あったらあったで素晴らしいものなんだよなぁという話。
と、ここまで書いて、スティービー・ワンダーのことが脳裏に浮かんだので神妙な気持ちに。
スティービー・ワンダーの音楽には、見えないことへの欲求不満による爆発力が
あるような気がするのですが、そこに踏み込むのはデリカシーの欠如ですよね。
「Overjoyed」が聴きたくなってきました。
Comments (4)
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『借りぐらしのアリエッティ』

2010-07-20 13:41:15 | 映画
スタジオジブリの最新作『借りぐらしのアリエッティ』を観てきました。
宮崎駿さんが脚本を担当。

品が良くてまとまりがあって、かといって物足りなさが募るわけでもない
小作品といった感じでした。面白かったです。
米林宏昌監督はジブリのカラーを損なわず、かといって小さくまとまらず、
すごく良い仕事をされたのではないかという気がします。

言う人だったら、もっとはみだせ!と言うかもしれない。
でも、ジブリとしてはみだす役目は、ジブリの色を作った
宮崎駿さんしかいないわけです。
宮崎さん以外がはみ出したら、それはジブリではなくなってしまう。

宮崎駿さんが現役の間はずっとそうでしょうね。
彼が退いたのちに、彼以外の人がジブリをクリエイトしていくために、
作品の中で「はみだす」役割さえ担うようになっていくのではないかなぁ。

この『借りぐらしのアリエッティ』では、小人のアリエッティの家族も素敵だし、
人間側にも物語があって、キャラの濃さがちょうどよくて
心地よく作品に没頭していられる、といいますか、作品に引寄せられました。
ストーリーや細部に夢があるし、ジブリも宮崎駿さん以外の人でも
これだけの質の高いものを生み出せるのだぞというのを示したと思います。

最初の方に、品が良いと書きました。
そういうファンタジックなお話なのです。
アクションシーンとかスピード感のあるドタバタだとかはありませんが、
それが逆に、この作品の中での落ち着いたトーンとして、カラーを成立させていて、
もしかすると、『ポニョ』よりも飽きのこない作品かもしれません。

ただの小人の生活を見せる。
たとえば15分だけ、それが質素なものだとしても、
十分に観る人を満足させられると思われます。
それだけ、生活のにおいに魅力があるのです。
出されるお茶にしても、パンにしても、部屋の構造にしても、
ブルジョワじゃなくても、「なんか、いいな、憧れるな」
っていう要素が感じられる。
もともと、ジブリってそうでしたよね。
ナウシカ、ラピュタ、魔女の宅急便。
描写される西洋風のなにげない生活に、
幸福感のかけらを観客は観て取ってなかったか。
あぁいうのは、古いだの新しいだのを超えた、
普遍的な「生活の快楽感」を土台に作られているのだと思います。

ネタバレになっちゃうけど、アリエッティのセリフにこんなのがあります。
「わたし、洗濯好きなの」だったかな。
これがよく、ジブリの魅力の一面を表しているではないですか。
洗濯が嫌だ、面倒くさい、疲れる、じゃないんですよ、
「好きなの」ですからね。
そこで、「おっ」と思いませんか。
こりゃ生活が楽しくなる、って感じがするでしょう。
それに大体、ジブリの主人公クラスの登場人物は勤勉ですよね。
観ていて気持ちが良いのもそこにある。
良い顔して仕事しているのって、いいよなぁって感じがするでしょう。

こういうところに、ジブリ作品の、鑑賞後の気持ちよさの一つが
あるような気がします。もちろん、ジブリの魅力は、
僕が書いたようなことだけじゃないことは、
みなさん、よくご存じだと思っています。

大体2年に一度でしょ、ジブリ作品の公開って。
いいよねぇ、ジブリのある国に生まれてさ!

時間のある方は是非観てみると良いでしょう。
時間を作って観てみても、日常の短いピットインのような、
ちっちゃなオアシスに立ち寄ったみたいな、
元気をもらえる映画であるといっても、言い過ぎではありません。

米林監督は、また是非、第二段の映画も期待してしまいます。
グッジョブでした。
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世界ハ回ル

2010-07-19 15:27:33 | days
先週の日曜日がワールドカップの決勝で、
僕は徹夜して見たのですが、それが少し身体の負担になったようで、
翌日は「眠たいな」くらいの疲れだったのに、2日後の朝は、
眼が覚めるなり、天井がぐるぐる回っていました。
頭がぼうっとした感じだし、やることをやっていても
どこか抜けている感じで、失敗とまではいかなくても、
段取りが悪くなったり、いろいろ不具合が生じたのでした。

大体3日くらいそういうのが続きました。
頭を振ると、世界が回る。
寝返りなんてとんでもない動作なのです。
ぐるんと勢いよく頭を180度反転させたものならば、
ジェットコースターなど比較にならないくらいの浮遊感と、
猛烈な揺れに襲われます。
吐き気がしないだけ良かった。

その後、まだぼうっとした感じが残りはするものの、
昨日くらいから9割方調子が戻ってきた感じがしています。
またこれから暑くなったら目まいが再燃するのかもしれません。
それはいやだなぁと思う。

そして、本を読んだりはできるのだけれど、脳のほかの部分が
ちょいスリープ状態っていう感じって、脳梗塞後とか老化とかしたときの
感覚に似ているのかもしれないなという気がした。
わかっているけど、うまくいかないっていう。
すごく残念ですよねぇ、そういうのって。
きっと1カ月もすれば忘れ去ってしまうだろうけど、
脳が不自由になった人の気持ちがわかりました。

おいらもこのまま正常に戻るといいんだけれど…。
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『みぞれ』

2010-07-18 23:59:29 | 読書。
読書。
『みぞれ』 重松清
を読んだ。

短編集です。
30pくらいのものと、60pくらいのものが11篇収められています。

あとがきで重松さんは、どの作品から読んでも良いと書かれていますが、
僕は初めから順繰り順繰りと最後まで読んだのでした。
読んでいて読みやすいのだけれど、ちょっと軽すぎやしないかという感想。
読んでいる最中に文章にひっかかるところもなくすらすら読めすぎる。
そして、言葉はうまいのだが、作品中のテーマとか、諸所の問題の解決が
簡単すぎるように読めた。

さらに、「望郷波止場」という作品では、
マスコミの悪趣味さ、面白ければいいんだという方向性の醜悪さを
感じさせられ、その描写がすらすらと書かれているものだけに、
その中で真面目でしっとりとした部分が中盤にでてきても、
読み手として咄嗟の反応ができず、嘘寒く感じてしまい、
それどころか、どうとでも書けることに対して「言葉がうますぎる」と
怒りさえ感じるくらいでした。とはいえ、その後を読むことで
怒りは収まり、まぁ良かったかなという感想を持つことになるのです。

しかし、ほんと、週刊誌とかをほとんど読まないし、テレビ業界の
考え方っていうのを知らないのだけれど、こういうのを読んで知ってみると、
とにかく、良いか悪いかは別として、物事の筋は通すらしいんです。
こうだからこうだ、っていう感じでしょう。
そういう理屈だか屁理屈だかに依拠している気持ちじゃないと、
テレビマンは精神面がひずんでくるんだと思われます。
そうやって、正気を保っているフシがある。
なんたって、やってることは醜悪だったりしますから、
その醜悪さに目を向けて凝視することなどできないのでしょう。
その方法論のほうに目を向けて重視するという、ある意味、焦点のすり変えを、
人間の、人間性防御の本能によってやっているんだと推察します。

なーんてさ、素人が、わかったようなことを書くと、
生意気だ!とか言われるんじゃないだろうか。
まぁ、テレビ業界を知っているわけじゃないので、本当に推測でしかないんですけどね。

そんなわけで、この短編集を読んでいて、軽すぎるとか醜悪だとか
感想を持ちながらも、習慣と、貧乏性なのと、作者への礼儀だと勝手に思っている性分ゆえに
最後まで読み終えたわけなのですが、最後の2篇はけっこう好きな作品でした。
あぁ、最後にはちゃんと良い気持ちにさせてもらえるのだな、という感じ。
全体としては、本当に、どうしようもない人間、いらだたしい人間が数多くでてきます。
だけれど、それが人間なんですねぇ、そういうのがいるのが社会なんですねぇ、
フィクションの中で、そういった彼らの特徴を精妙に捉えていて、
それを足がかりとして、そういった性向の困った人間を分析する手立てになったりもします。
…とかって、これ、悪用ですね。
分析というか、彼らのことを考えてみる機会とヒントが与えられるわけですよ。
困ったちゃん達がのさばってちゃ楽しくないのでね、そういう人たちと精神的に対抗しうるための、
彼らと対峙する予行練習みたいな意味合いが読書によって得られるのです。
この本の物語の中では、そういった困ってしまう人々との付き合いの中で、
ただただ苦笑するほかないタイプの人たちがいて、それがまた美しかったりもします。
そうするのが性に合うか合わないかは、人によるのでしょう。

面白かったか面白くなかったを言えば、
不快でもあり感動もする、きれいごとときれいごとじゃないものが
混じった短編集と評するところです。
興味のある方は、余裕のある方は読んでみるといいかもしれません。
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『にんげんだもの<逢>』

2010-07-17 11:29:43 | 読書。
読書。
『にんげんだもの<逢>』 相田みつを
を読んだ。

相田みつをさんという名前と言葉、書体には、
うちのトイレでお目にかかっていました。
なぜだか、一枚紙の小さめのポスターが貼ってあった。
とくに内容を読むことはなかったのですが、
「相田みつを」という名前はたまに見かけるし、
ちょっと流行ったことのある人なんだろうなぁ
くらいにしか考えていなかった。

暇つぶしに入った隣町の本屋さんは、
小さないながらも品ぞろえのセンスが良く、
少ない本棚から目に飛び込んでくる本のタイトルが
実に粒ぞろいだったります。
あ、この作家さん、こういう本も出していたの、と
気になって手に取ってみたり。
大手の本屋さんのように、ふわーっと売れ線の本や有名な本ばかりが
並んでいるのとは訳が違い、
本を仕入れる時の店主の苦慮というか、
感性を使っているなぁっていうのが
わかる感じがするのでした。
店員の40歳くらいのメガネのかけた女性(店主か、店主のおかみさんでしょう)なんかは、
国語が好きで得意でしたとい雰囲気を感じさせる人でした。
まぁそれと、品ぞろえに好感を持つのって、
そのお店の店主と気が合いそうだっていう気がするのかもしれないですねぇ。

さて、本書は、漫画を読むよりも簡単に読めてしまう文庫本です。
人生訓のように読めてしまうけれど、巻末の解説を読んでみると、
人生訓ではなくて詩なのです、とみつをさんの息子さんが
書いてらっしゃる。

書体に味がある、言葉にも味がある。
言葉の何が良いかって、
読む人が心のどこかで感じているようなことを
平素な言い方でボロっとこぼしてくれるところなのかもしれません。
そういう簡略的な凝縮の形ってあるのなぁって思います。
そして、自然や人間をありのままに見ることができる眼をお持ちなんです。
普段からそう見えるものなのか、創作に臨む姿勢で、沈黙に向き合うことで
研ぎ澄まされる、あるいは邪魔なものが消え去ってシンプルな感性になる感覚なのか、
知りたいところです。

一気に読むと、ちょっと穏やかになる感じがします。
人によっては、毎日のギスギスした生活での凝りがほぐされる人もいるでしょう。
憑きものが落ちたようになる人もいるんじゃないかなぁ。

そんな相田さんは若い頃は広告の仕事をちょっとしていたんだそうです。
糸井重里さんの「ほぼ日」をよく読みますが、糸井さんの言葉の感覚のある一面に
近いものがあるようにも読めました。
広告って、まぁ、どんなものか深く考えたことはないけれど、
難しいことを言っちゃ、伝えることができる人の絶対数が限られてきますよね。
だから、誰にでも届くような言葉づかいだったり感覚だったりってものを
心がけて仕事している部分もあるんじゃないのかねぇ。
それが、作風にも出るんだと思われます。
立場によって人が作られる、という言葉がありますが、
その例に当てはまってませんかねぇ。
っていうか、誰でも少なからずそういうのはありますがね。
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プジョル

2010-07-16 20:43:22 | 一言。
スペイン代表のDF、あのプジョルの歳が、僕の一個下でビビる。
でも、誕生日が同じで親近感がわく。おいらも歳とったなぁ。
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『善人は、なぜまわりの人を不幸にするのか』

2010-07-14 14:45:49 | 読書。
読書。
『善人は、なぜまわりの人を不幸にするのか』 曽野綾子
を読んだ。

昨年、『ほぼ日刊イトイ新聞』の「イトイの読んだ本、買った本。」という
コーナーで取り上げられていたのを読んで買ってみた本です。
形式は、過去の曽野綾子さんのいろいろな書き物の中から抜粋した形での
編集ものです。

タイトルからして、できれば善人でありたい、そしてちょっとは「僕って善人」
という恥ずかしい自負を持っている自分ですから、
自分で自分を攻撃するために読むことになりかねない読書でした。
ただ、まぁね、昔っから、善意が人を苦しめる場合というのを
感じとっていたところがあって、拒否する時は善意であっても拒否して、
「なに、この人!」と思われたことも、数多あるに違いない僕なので、
そういった面でのすっきりしない感じを料理してもらえるんじゃないか
という期待もありました。

そして、読んでみたらどうかというと、
初めの方こそ、なかなか核心を突く章がでてこないなぁと思っていたのですが、
ところどころクリティカルヒットする部分があったり、
全体として、文章にこめられている意味合いが深くて厚い感じがして、
いわゆる「すぐに役に立つものは、すぐ役に立たなくなる」のとは
反対のものだなぁという印象を受けました。

いろいろううなずかされたり、ハッと気づかされたりしたのがありました。
その中でも、「誤解」というものに対する考察は、目からうろこがでる
気がしたものです。
以前、岡本太郎さんの著書を読んだ時にも、誤解なんて気にしないで
どんどんされてしまえ、みたいな箇所がありました。
そうは言われたものの、なかなかそれを丸のみするごとく信じることって
できないじゃないですか。
それが、この本だと、誤解というものはされてもその人の本質は変わらないだとか、
曽野さん自身も、自分が誤解されることと、他人を誤解してしまうことを
惧れて、何もしゃべれなくなった、ということが書かれていて、
これだけ深く本質を見つめてきた人生の先輩でもそうなんだなぁ、という
良い勉強になるんですよ。
引用して、僕の文章にくっつけて使うと、こういうのがあります。

>人生で、なにかを知り尽くすことなどできるわけがない。

相手や、ましてや自分自身さえも知りつくすことなどできるわけがない、
とも使える言葉ですね。

それと、気の持ち様で、同じ事柄を、楽しい方向へとる人もいれば、
わざわざ不幸な方向へ解釈する人もいるというところなどは参考になりましたね。

最後に、著者の曽野綾子さんについて。
今年で79歳になる、なかなかに高齢な方ですが、去年、日本郵政の
社外取締役に就任されたとのことで、バリバリ活躍されています。
そしてWikipediaで彼女の項を開いてみると、20歳前後の曽野さんの
お写真が表示されています。それが美少女なので、一度見てみてください。
目が悪くて人間が苦手で文筆家の資質がある美少女。
萌え~っていう人はかなりいるはずです。
とかって、曽野さん本人にこんなことを言ったら、とんでもなく怒られそうですね。
内緒で書いておきます。
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スペイン優勝

2010-07-12 20:05:43 | スポーツ
約1カ月の長きにわたって繰り広げられ、
我らが日本代表も、その大会に雄姿を刻みつけた
ワールドカップが本日閉幕しましたね。

決勝は無敗のオランダvs初戦で敗戦を経験しているスペイン。
ともに優勝経験の無い国同士での戦いでした。

あのオランダでさえ、スペインの球回しには
イエローカードをもってして対処するしかなかったようです。
ブラジルを相手に逆転勝ちした、ブラジルと対等に渡り合った
オランダがですよ。ボールポゼッションの面では、
受けに回らざる得ないという状況なんですからねぇ、
どれだけスペインのサッカーの次元が違うかってことを
思い知らされるところです。
決定力こそ、ちょっと足踏みする程度のものだったりしますが、
中盤にウェイトをおくとそうなるものなのかもしれませんね。

ただ、まぁ、前述のオランダのファウル覚悟の球回し阻止の動きによるものなのか、
それとも決勝の、勝利をどうやっても手にしたいという平常心でいられないような
緊張感によるものなのでしょうか、スペインはいつものような華麗なパスサッカーを
みせる場面はかなり少なかったです。

前半後半を終えて0-0。
そして延長戦へ。
オランダはイエロー二枚の退場者を出して10人に。
そして、スペインの、相手の裏を取る動きが成功し始め…、
イニエスタ、ゴール!!
スペインが1-0で勝利しましたよねぇ。

ほんと、スペインのサッカーは面白いです。
中盤を構築するイニエスタとシャビがともにバルサの選手で、
代表もバルサみたいなサッカーをしていると言われたりします。
一昔前の銀河系集団のレアル・マドリードのダイナミックなサッカーも
面白かった記憶がありますが(ダイジェストでしか観ていませんが)、
バルサのサッカーも相当面白いぞって思います。
これにメッシが加わるんだもの。一体どんなだよ!

そういえば、日本代表がベスト16に入ったことで臨時発刊された
Numberの特集号を買ってきました。Numberはグループリーグを
突破したかしないってときにも増刊号をだしていたし、
相当力を入れていますね。
これは今読んでいる本を読んだあとに雑誌『Newton』を読んで、
そのあとに読もうと思っています。あくまで予定ですけれど。

とにもかくにも2010南アフリカワールドカップは面白かったです。
なにより日本代表が素晴らしい結果を出してくれたことが大きかったかもしれないです。
ほんと、ありがとう、お疲れ様、おめでとう。
振り返ると、64試合中17試合を観たようです。20試合は観たかったかなぁ。
ただ、準決勝とか、3:30キックオフなんて、毎日のように観れませんて。
それでなくても、今日徹夜して決勝をみたせいで、フラフラしますからね。
ただ、それに値する、面白いものを観ることができたということです。

しばらくは日本代表の親善試合もないし、この余韻に浸ろうと思います。
あぁそうか、新代表監督の発表があるのか。
そのときはまた記事を書くかもしれません。あしからず。
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GOLD観ル

2010-07-11 22:38:53 | days
やっぱり録画して正解だった、
木曜22:00からの新ドラマ『GOLD』を観ました。
昔っから、すごく楽しみしているテレビ番組がオンエアされるときって、
寝飛ばす傾向があるんです。
ここぞという時のうたた寝率はイチローの打率よりも高いはず。

さて、『GOLD』ですが、面白かったですよ~。
事前の情報から、主演の天海さんの役どころ、
早乙女悠里はもっとつっけんどんでヒステリックで厳しい、
鉄の女なのではないかとイメージしていましたが、
そうではありませんでした。
経営者、そして母としての厳しさを持つものの、
人間的な揺らぎというものを持っているように見えます。
それは、たとえば、ネタバレになりますけれども、
次男が夕食の席で反抗の言葉を吐きだした時の表情や、
それから言葉を発するまでの「間(ま)」というものに感じられました。
また、長澤まさみちゃん演じる新倉リカとの掛け合い
のときにも、普通の人間としての表情をみせますし、
言葉は辛辣であっても、表情や言い方などから、
他人との心の交流を閉ざした人ではないことがわかります。
そういうところで、まず一つ、このドラマは面白いぞと
思った点を書きました。

いや、一つ一つ面白かった点を書いていくと面倒なことになります。
旦那の寺島進さんの砕けて優しそうな、「現在ダメ男」もイイですし、
反町隆史さんのコーチも硬派で良かったです。
ただ、このコーチと長女の関係がこのあと只ならぬものに発展しそうなのが、
どう転ぶかなぁという唯一の心配のタネでもあります。
なんてたって、『高校教師』や『聖者の行進』の野島伸司さんの脚本ですから。

そして、長澤まさみちゃん演じる新倉リカちゃんが良かったですね。
なんてたって可愛いしスタイルがいいから画面に映える、スーツが似合うってなもんですが、
接してみて肩の凝らないタイプなのがリカちゃんなんじゃないでしょうか。
もしも身近に彼女がいたら?っていう、お決まりの想像をしてみると、
…すごく楽しい。
朗らかで、下ネタもいけそうだけど下品そうじゃなくていろいろなお話ができそう。
こんな、疲れるタイプじゃなくて、魅力的な女子を演じられるのは長澤まさみちゃんだけ!
第一話では、悠里さんを呼び捨てにする場面が面白かったのはさることながら、
終盤、顔をパックしてマッサージしてもらっていて、
「はぁぁぁ~…、ごく、らく、ごく、らく…」と、
たまらず漏れ出したような訥々とした呟きがほんとに可愛かったですし、
笑いを誘いもしました。
こりゃ、第二話以降もまさみちゃんには存分に楽しませてもらえそうです。

ちなみに、新倉リカという名前は、「新倉」という名字と「リカ」というカタカナで
出来ていますけれど、今でもやっているかどうかはわかりませんが、
日本テレビ系でお盆が近くなると放送されていた『あなたの知らない世界』という番組のコーナーに
出演していた心霊研究家の人が新倉イワオという、新倉姓でカタカナ名でしたね。
だから、今回、リカちゃんの履歴書には「霊感が強い」と書かれていたのかなぁと大胆に推測しましたが、
どうなんでしょうね、こういうところが伏線だったりするどうかはわからないですね。

そんなところです。
『GOLD』は面白いですし、これからも面白くなりそうです。
長澤さんがでていて3倍面白くなっているし(ひいき目)。

気になる方は2話目からでもGo!ですよー。
夏の楽しさがUPするドラマだと思います。
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