朝、目覚めて最初に見たモノが、右の二の腕に浮き出た弾力のある線だった。
まだ眠りから完全に抜けきれないでいる脳細胞は、これを「血管」だと誤認し、
触りごこちまで"血管である"と信じ込んだ。
それから確認もせず、夜になって「血管」を思い出す。見てみると、みみず腫れだった。
乾燥しているから、夜中にかきむしった跡だろうとは思う。しかし、こんな場所が痒かった試しがない。
たまに部屋をクモが徘徊するので、夜中に二の腕を這ったのだろうか。それで爪を立ててひっかいた。
それが仮説1。
こないだ亡くなった前ローマ法王への聖痕なのだ。偉人を失った悲しみが、二の腕に形となって・・・・、
などと書くと冒涜になってしまう。仮説にもならない。
じゃ、一ヶ月ほど前に亡くなった、マーティン・デニーへの・・・・、・・・もういい。
寝相がよくなく、誰に披露するわけでもなく様々なアクションを実はキメているのだが、
そのモーション中に二の腕を枕の角へ強くこすりつけてしまった。
これが仮説2。
誘拐されたのだ。発光する空飛ぶ乗り物を駆る未知の知的生物に誘拐された証拠なのだ。
記憶こそないが、二の腕に刻まれた動かぬ証拠とこの日のための知識が、
その空白の時間帯での出来事を示唆しているのだ・・・・、これもいい・・・。
現実から飛躍するのもいいところだ。だいたい、語尾に「~のだ」と続けたところで、
腹巻をしたおっさんのキャラと被っている。それに、知識なんか無いじゃないか。
単に、たまたま痒くて、たまたま引っかいたのを覚えていないだけ。
仮説3。
いずれの仮説のどれかは正解しているのかもしれないが、
これ以上考えようとも突き詰めようとも思わない。
みみず腫れは事実であり、その原因を抽象化して表すならば、
夢でも幻でもなく、「現実」ということだ。
「現実」が切りつけた、噛み付いた、跡だ。
普段あまり気にもかけない類の現実とは、常にそういうものだと思う。自然は特に。
わからなくても、想像してみると、理屈がついたりするものだ。
月は昇り、星は瞬き、雲は流れ、犬は吠え、車の陰に黒猫は隠れ、僕の二の腕にみみず腫れは出来た。
まだ眠りから完全に抜けきれないでいる脳細胞は、これを「血管」だと誤認し、
触りごこちまで"血管である"と信じ込んだ。
それから確認もせず、夜になって「血管」を思い出す。見てみると、みみず腫れだった。
乾燥しているから、夜中にかきむしった跡だろうとは思う。しかし、こんな場所が痒かった試しがない。
たまに部屋をクモが徘徊するので、夜中に二の腕を這ったのだろうか。それで爪を立ててひっかいた。
それが仮説1。
こないだ亡くなった前ローマ法王への聖痕なのだ。偉人を失った悲しみが、二の腕に形となって・・・・、
などと書くと冒涜になってしまう。仮説にもならない。
じゃ、一ヶ月ほど前に亡くなった、マーティン・デニーへの・・・・、・・・もういい。
寝相がよくなく、誰に披露するわけでもなく様々なアクションを実はキメているのだが、
そのモーション中に二の腕を枕の角へ強くこすりつけてしまった。
これが仮説2。
誘拐されたのだ。発光する空飛ぶ乗り物を駆る未知の知的生物に誘拐された証拠なのだ。
記憶こそないが、二の腕に刻まれた動かぬ証拠とこの日のための知識が、
その空白の時間帯での出来事を示唆しているのだ・・・・、これもいい・・・。
現実から飛躍するのもいいところだ。だいたい、語尾に「~のだ」と続けたところで、
腹巻をしたおっさんのキャラと被っている。それに、知識なんか無いじゃないか。
単に、たまたま痒くて、たまたま引っかいたのを覚えていないだけ。
仮説3。
いずれの仮説のどれかは正解しているのかもしれないが、
これ以上考えようとも突き詰めようとも思わない。
みみず腫れは事実であり、その原因を抽象化して表すならば、
夢でも幻でもなく、「現実」ということだ。
「現実」が切りつけた、噛み付いた、跡だ。
普段あまり気にもかけない類の現実とは、常にそういうものだと思う。自然は特に。
わからなくても、想像してみると、理屈がついたりするものだ。
月は昇り、星は瞬き、雲は流れ、犬は吠え、車の陰に黒猫は隠れ、僕の二の腕にみみず腫れは出来た。