Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『フルーツひとつばなし』

2018-05-30 20:27:47 | 読書。
読書。
『フルーツひとつばなし』 田中修
を読んだ。

ポピュラーな果物から、
日本ではあまり知られていないけれど、
おいしくて世界で愛されている果物まで、
50種類の果物をかんたんに解説し、
さらに果物の「なぜ?」と思えるようなところの
おもしろい話を盛り込んだ本です。

ポリフェノール、ビタミンC、ビタミンE。
抗ガン作用だとか、長生きに大事だという抗酸化物質ですが、
ぶどうだとかレモンだとか果物に多く含まれるものです。
でも果物って、おまけというか趣向品みたいなもので、
僕がスーパーの青果担当をしていた時には、
野菜ほどなんてぜんぜん売れない、
と先輩から聞いたし実際そうだったのだけど、
でも、たくさん食べたいものですよね。

日本人の果物摂取量は世界のそれと比べても低いそうです。
オランダ人は、日本人の4~5倍くらい食べていて、
それが食べ過ぎだとしても、
今の日本人の平均の150gよりは多く食べた方がよいと書かれていました。
200g以上が推奨で、アメリカ・ドイツ・フランス・イギリスなんかでは
250gは食べているそう。

また、
世界には、おいしそうだけど知らない果物がたくさんあり、それを本書で知りました。
食べる機会があれば、初めて味わう味に感激するのだろうなあ、と想像してみたり。
ジャックフルーツ、チェリモヤはまったく知らなかったです。
ドラゴンフルーツ、マンゴスチン、スターフルーツも、
名前だけ知ってたり店先で見てたりしていても、食べたことはないですね。
僕くらいのフルーツ音痴だと、マンゴーの正式名称がマンゴスチンだと思ってましたから。
まったく見た目も、たぶん味も違う果物なのでした。

実は、ビワも食べたことが無いし、
アケビやザクロなんかも食べ方すら知らないです。
キンカンはミカンの小さい感じの果物ですが、
これはスーパーの青果係をやっていたときにつまみ食いしました、どうも。
おいしかったんですよね。へえ、おいしくてマイナーだな!と驚いたりして。
きっと、果物に限らず、世の中にはそういうのって多いんだと思います。


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『鈴木さんにも分かるネットの未来』

2018-05-23 23:12:28 | 読書。
読書。
『鈴木さんにも分かるネットの未来』 川上量生
を読んだ。

KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長でスタジオジブリ見習いプロデューサーの
川上量生氏によるインターネット解説本です。
分かりやすいことは分かりやすいのですが、難しいことは難しいという感じ。

ネットを利用する人と、ネットに住んでいる人(ネット住民)という分け方は
なかなかしっくりきました。
完全に言い得ているわけでじゃないとは思うけど、それありますな、という感じ。
さらに、最近ではデジタルネイティブなる第三の種類の人がいるわけでした。

また、
優れたリーダーがコントロールするシステムと
各部分がばらばらに自分の判断で動くけど
なぜかうまくいくシステムとがあるという解説のところがよかったです。
後者は自律分散システムと呼ばれていて、
これこそ、今の自分の職場で強いリーダーがいないがため採用すべき方式のように思った。
優れたリーダーが統治するシステムと自律分散システムは、
三国志でたとえるなら、前者は魏(曹操)であり、後者は蜀(劉備)というイメージです。

ネット世界のビジネスのこれからにおいて「プラットフォーム」と「独占」がカギです。
これは先日読んだ『ZERO to ONE』でピーター・ティールも同じことを言ってましたし、
僕がこれまで読んできた中では、『ITビジネスの原理』だとか、
佐々木俊尚さんの著作ですとかで同じような解説がありましたねえ。
というか、それらを読んでいたからこそ、
今回この本の内容にもなんとかついていけたような気がします。

ネットでの無料化の是非や、コンテンツの大事さについての論考、
さらにビットコインの説明
(これは読んでいてもなぜ投機対象になるのかはっきりわからなかった)、
オープンかクローズドかその趨勢、などなど
興味深いネット世界のこれからの見通しが詰まっています。

川上氏ならではのITビジネスなどの細かい部分での情報もありそこも面白いのですが、
全体を通して振り返ってみると、
インターネットの知識の底上げにいいかもしれないなあと思える本でした。


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『壁』

2018-05-22 02:12:01 | 読書。
読書。
『壁』 安部公房
を読んだ。

本書は『砂の女』で知られる安部公房の芥川賞受賞作。

ある日、名前を失ってしまったことで、
社会の外に放り出されることになった主人公。
その世界は奇妙さを増していき、
ある意味で支離滅裂な夢のようなイビツなものとなっていく表題作の『壁』と、
他、二章からなる作品です。

非現実的なタイプの小説です。
現実性からかなり高くジャンプしています。
そこには、現実性の強い重力から逃れながらも、
現実性から逃れたがゆえの、
孤独による、よるべなさのようなものがあります。
しかし、その世界観といい、文体といい、
何故かとても心地よくもあるのです。

その幻想世界にある、現実社会を照らすするどい寓意。
それはメインに表だって飾られたものではなく、
うっすらと感じる程度に内包されているというか、
抽出的に読解してみることで感じられるものだったりします。

また、村上春樹の『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』の
「世界の終わり」の部分はこの『壁』から大きな着想を得ている感じがしました。
もう、アンサーソングみたいに書いたんでしょう?ってくらいです。
「世界の終わり」で街を取り囲む「壁」というモチーフといい、
主人公とはがされた「影」の存在といい、この『壁』と共通しますね。

科学が、先達たちの業績の上に積み上げていく形で
少しずつ発展しているものであるのと同じように、
作家も、先達たちの切り拓いた先をさらに切り拓くように、
バトンを受け取って仕事をするのが、こういうところからわかりますよね。

数年前に『砂の女』を読んだ時には、
まだピンとくるものが弱かったように思うのですが、
今回、安倍公房の本作品を読んで、
皮膚感覚といったような自分と近い感覚での読書体験をすることができ、
おもしろかったので、また、彼の作品をそのうち読んでみようと思います。


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『お客様に選ばれる人がやっている 一生使える「接客サービスの基本」』

2018-05-10 21:36:38 | 読書。
読書。
『お客様に選ばれる人がやっている 一生使える「接客サービスの基本」』 三上ナナエ
を読んだ。

接客サービスの仕事の実用書です。
著者は元ANAのキャビンアテンダントだそうです。

接客業の基本中の基本は
お客さんの「不安と不満をとりのぞくこと」。
まずそこをふまえて、さまざまな項目で、
いろいろな接客マナーな方法を教えてくれます。
そのひとつひとつに無理が無く、
そして、まるで読者が著者に接客をされているかのような感覚で
新たな知識を知ったりすることができます。
いままでの自分の接客方法を振り返るときも、
著者がそばによりそってアドバイスをくれるような感じでした。
頼もしくもありがたい、接客サービスの指南役。

なので、読者にどうこう指図するような、
他律的な息苦しい感じはないし、
絶対にこうだっていう堅苦しさもなかったです。
接客サービス業って、そんなカチカチな姿勢で臨むものではないということですね。

たとえば、
安心・特別感、公平さ、そういうものが大事なのだということや、
お客さんへの一歩踏みこんだやり方や、
「買ってもらう」「選んでもらう」ことを目的にせず、
もっと先のお客さんの利益を考え、
「サービスを喜んで受けてもらうこと」を念頭におくことなどなど、
そういったトピックが、たくさん載っています。
さらに、具体的なエピソードをまじえて語られる個所も多いですし、
文体もやさしくて、読書慣れしていない人にも勧められます。

僕も接客業をやっているのですが、
本書を読んでみて、
自然とやれていることが意外と多くて自信になりながらも、
できたりできなかったりという技術もあることが自覚できました。
また、こりゃまずってるな、というケースもあったんですよ。
そういうのは一から考えなきゃいけなくて、
改善するのも骨だったりするのだけれど、
気付けていないより気付けることができてよかったなあと思いました。

面白くて実用的で良書です。
労働割合の8割がサービス業ともいわれる昨今ですから、
この本の魅力をみんなが知って役立てればいいですねえ。


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『来るべき民主主義』

2018-05-08 22:36:15 | 読書。
読書。
『来るべき民主主義』 國分功一郎
を読んだ。

2013年に行われた東京都小平市での、
都道328号線建設をめぐって行われた住民投票と、
その住民投票が実現するまでに及ぶ住民の運動を起点に、
議会制民主主義の欠陥を分析し、
それをどのような方法で補っていけばよいかを論じた本です。

議会制民主主義においては、
民衆の代わりとなる代議士が政治を行いますが、
実際に政策などを実現するのは行政であり、
その行政には独断的な強い決定権がある。
つまり、この国を動かしているのは民衆が選んだ政治家ではなくて、
公務員たち行政の側だというところに、
日本の民主主義の欠陥があることを解説しています。
そこをどうしていけば民意が反映されるのかを考えたところが、
本書の一番の読みどころだと僕は思いました。

法という否定的・消極的なもの、
制度という肯定的・積極的なもの、
という分析にはうなりましたね。
だから「制度が多いほど、人は自由になる」と。
ドゥルーズの制度論に依るかたちで述べられている
この部分は特にエキサイティングでした。
そういった制度を増やす方向で、
たとえば住民投票制度をつくり、おこなうことで、
行政も民主的な方へもっていくことができる。

また、最後のほうで、
「民主的であるかどうか」と
「民主主義であるかどうか」とを考えることの違いについて、
前者が実感であり感覚的判断あるのに対して、
後者が概念的判断であることの説き明かしにも膝を打ちました。
そして、感覚的な「民主的であるかどうか」を考えるほうがよいのだ、
とする姿勢にも教えられるものがあり、共感を持ちました。

中盤などでは、なんてことないように書かれている考えが、
非常にするどく人間心理をとらえていたのもおもしろかったですよ。
それは、我慢をしすぎて生きていると我慢を他人にも強いるようになり、
せっかく「我慢しないように社会を変えよう」と声をあげる人がいるのに、
「我慢しなさい」とその人を引きずり降ろそうとするものだ、というところなどです。

著者はむずかしい概念を扱う学者なのでしょうが、
それを人間の実感を大事にしたかたちで語るところに、
読者を惹きつけるものがあるのかなあと思いました。


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『ZERO to ONE』

2018-05-03 21:43:51 | 読書。
読書。
『ZERO to ONE』 ピーター・ティール with ブレイク・マスターズ 関美和 訳 瀧本哲史 序文
を読んだ。

イーロン・マスクらと肩を並べるIT世界の大物ピーター・ティールが、
2012年にスタンフォード大学で行った起業講義をまとめた本。

独占的企業こそが繁栄を生むこと、
隠れた真実を見つけることで、
ゼロからイチを生む独占的企業になるスタートをきれることといった、
本書の中盤の箇所が特におもしろかったです。

独占的企業といえば、たとえばgoogleがそうであり、
そういった企業は研究開発や社会貢献に
お金をつぎ込むことができたりもします。

隠れた真実を見つけることは容易ではないかもしれないですが、
たとえば会社から離れて考えてみれば、
文学といったものも、隠れた真実をあぶりだすものであったりしますから、
それほど珍しいものでもないことがわかります。

また、人間と機械に関しては、
置換と補完がある、といいます。
発達したAIなどの機械が、人間にとって代わる、
つまり仕事を奪うのが置換ですが、
人間の助けになる形で発達する補完の方向もあります。
技術が人間を補完する例だと、
パラリンピックの選手たちの義足がそうですが、
あんなふうに、AIや機械が人間を補完するように
発達していく方向はあるのでしょう。

また、これがキーとなる「モノの見方」であり、
起業して成功するにしても最重要なんじゃないかと思える考え方なのですが、
それはなにかというと、
未来がどんな世界になっているかを意識すること、なんですね。
未来を正確に予測できる人はいないけれど、
未来は今と違う形になっていることを想像できる人は強い。
多くの人は、「未来はどうなっているか?」と問われると、
異なる視点で現在をみているだけの答えを返すそうです。
未来は今とは違うが、
だけど未来は今の世界が元になっている、と著者は言います。
未来を見る感覚、
そして、バックキャスティングで考えていくことが大事なのかもしれないです。


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