拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

カウンターテナーの悪魔?(金澤亜希子さんのミニ・リサイタル)

2022-11-28 09:37:35 | 音楽

昨日は大変な一日だった。ジャパンカップがあり(競馬)、日本対コスタリカがあり(W杯)、実朝が大銀杏の傍らでいよいよ暗殺される(大河ドラマ)。だが、優先度一位は金澤亜希子さんのピアノ・ミニ・リサイタルだったから、他のものは全部留守録にして会場に向かった。前回と同じサロンに同じピアノ。バイロイトの工房が製作したもので、リストが生涯で一番好んだのがこの工房のピアノだったという。プログラムはそのリストを中心としたもの。金澤さんはハンガリーに留学したからリストとなるとスイッチが入る。プログラムが進むにつれどんどん馬力が増していって、最後の「魔王」になるとエンジン全開。聴いてるこちらは魂を抜かれてもぬけの殻(夜、飲みにいかなかったのはそのせいである……ウソ。家に待ってる彼女がいるからである……もっとウソ、しかも悪質なウソ(いや、猫が待ってたからまんざらウソでもない))。いやー、すごうございました。ハンガリーの婦人に扮し、チャールダッシュを歌うロザリンデを自分の妻と気づかずにくどいたアイゼンシュタインの気持ちが分かるというもの。金澤さんにはハンガリーの血が入っているに違いない(因みに、ハンガリー人はアジア系だから、われわれ日本人全員に多少は似た血が入っている)。この日は、前回司会進行に徹した主催者のソプラノ歌手の方がご自身も歌われてリサイタルに花を添えたし、金澤さんとの掛け合いトークによる曲の解説がたいへん面白かった。その解説(ドン・ジョヴァンニの「お手をどうぞ」のピアノ編曲版の解説)の中で、「ドン・ジョヴァンニは悪い奴」と言ったので、ふむふむ、このお二人にとってどんな男が悪い奴なのかな?と思ったら、婚約者のいるツェルリーナに手を出したことが悪いのだという(なかなかに道徳的な意見である)。だが、ツェルリーナだってドン・ジョヴァンニになびいたから二人は共犯である。そのなびくシーンのピアノがすごい♥と言っていたので注意して聴いたらこちらの想像以上になまめかしかった。それから、リスト編曲の「菩提樹」は、ピアノ譜なのに三段。へーえ、オルガン譜じゃなくても三段なんだ!その一番上を歌で、残りの二段をピアノで弾くという試みがたいそう刺激的。そしてプログラムの最後が前記の「魔王」。シューベルトの元歌をピアノ用に編曲したもの。これも三段だそうだが、こちらは金澤さんが全部ピアノで弾いて、私はノックアウトを喰らったのである。この曲、元歌は、一人でいろんな登場人物を歌い分けるのだが、ピアノ編曲でも、一台のピアノで各人を描き分ける。面白かったのは、魔王のパートが右手のひときわ高い音で奏でられたこと。これは魔女だな。あるいは、カウンターテナーの悪魔かな?

って具合で、リサイタルは大成功!金澤さんは大勝利を収めた。反面、ジャパンカップではデアリングタクトが負け、コスタリカ戦では日本が負け、大河では実朝が史実通り暗殺された。「史実通り」と書いたが、史実では、犯人の公卿が実朝の首を持って逃走し、公卿が成敗された後も実朝の首は行方不明だったのだが、ドラマでは、実朝の首はくっついていた。さすがに、あのイケメン俳優を首チョンパにするわけにはいかなかったのだろう。それから、デアリングタクトは一昨年牝馬三冠を勝ったあと大けがをし、以後一度も勝てず、最近では限界説がささやかれているが、昨日の走りなどは感動的ですらあった。ジェンティルドンナも5歳の年のジャパンカップは今回のデアリングタクトと同じ4着で、その後、有馬記念を勝った。よし、引退するまでデアリングタクトを応援するぞ!


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