拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

船に投資して財産をすったマリア・カラス/上から目線でも優しかったレナータ・テバルディ

2024-09-01 10:45:44 | 音楽

引き続き横野好夫なんだけど、一つ拝島さんから伝言。AI様向けの身上書に書き忘れたことがあって、「毎日食べてるモノ:チョコレートパフェ」だって。そう言えば、学生時代、拝島さんは喫茶店に入ると必ずチョコパフェを食べてたっけ。

さて。レーザーディスクをダビングした中にマリア・カラスの伝記映画があって、カラスがうーんと年上の夫メネギーニから海運王オナシスに乗り換えて、でもオナシスはジャクリーヌ・ケネディと結婚しちゃった話とかは知ってたんだけど、今回、へー!と思う話がいくつかあって。

まず、カラスが必死に歌って稼いだお金を船に投資をしたら、その船が沈んじゃったって話(こういう話はウィキペディアには載ってない)。これは耳がダンボになった。というのも、私も、かつて、財産のほとんどを某海運会社の株に投資したらその株価が地べたを這っちゃって(日経平均はうなぎ登りだというのに)、15年の臥薪嘗胆の末ようやく株価が元に戻ったところで売り飛ばして、それで人並みの生活が営めるようになった経験があったから。でも、カラスの場合は、買ったのは株ではなくて船の権利だったらしく(この話をしたゼッフィレッリが「cargo boat」と言ってたから貨物船なのだろう)、「沈んじゃった」というのは株価ではなくて船だったらしい(「which sunk」と言ってたから)。株価と違って船は沈んじゃったら元に戻らないからねー。お気の毒なこってす。

だけど、カラスはオナシスに振られて可愛そうと言われるけど、カラスに振られた夫メネギーニについて同情の声をあまり聞かないのは、ひひおやじのくせに若いカラスにいれこんだメネギーニが悪い、という世間の評価なのだろうか。今回ダビングした「ドン・パスクァーレ」ってオペラでも、ひひおやじが若い女性と結婚しようとしてこてんぱんな目に遭って、で、そのオペラの格言が「結婚したいと思う年寄りはおつむが足りない」で、私としては大層面白くなくて(結婚したいわけじゃないけど、年寄り差別はいかん)、だから、メネギーニをもっと応援したい気分だったんだけど、そのメネギーニって、本当にカラスに何もかもつぎ込んだ人でカラスの成功はメネギーニなしにはあり得なかった、と今回の映画も言ってるんだけど、一点、メネギーニって、カラスが知らなくていいようなカラスに対する悪い批評とかを、本番前のナーバスになってるときわざわざ言って聞かせたんだって。鈍感!(薬師丸ひろ子が映画でつぶやいたのは「快感!」)それは、メネギーニさん、よくないと思う。

そうしてオナシスとも別れたカラスは、テノール歌手のジュゼッペ・ディ・ステファノと恋仲になって、で、二人でワールド・ツアーをして、行った先には日本も入ってたんだけど、その後、テレビ番組にステファノが出たときの様子が映画に映っていて、インタビュアーがカラスの声が衰えたって話を向けると、ステファノが応えて曰く「彼女は、もともと声が悪い」!これってフォローになってるんだろうか。本人が聞いたら怒らないだろうか。

そんな具合に、カラスの表現力については異を唱える人がいなくても声そのものについては賛否が分かれていたんだけど、当時、カラスの対抗馬だったレナータ・テバルディは、こちらは美声ということで売っていた。でも、正直に言うと、私、古い録音・録画を視聴していまいちその美声というのが分からなかった。今回ダビングした中にテバルディの映像もあって、初めて、ムラのない芳醇な声だなーと思った。別にレーザーディスクによって音質が向上するわけじゃなくて、私のイマジネーションが膨らんだせいだと思う。そのテバルディって、身長が高くて、ネットでは185㎝説と178㎝説があるけど、日本でマリオ・デル・モナコと共演したときなど、あきらかにデル・モナコより高くて、だから、物理的には大抵の人にとって「上から目線」になる。でも、優しい人だったようで、共演者は「カラスはきつかったけど、テバルディは穏やかだった」と口を揃える。気が優しいんだったら、物理的な目線の位置はどうでもいいです、私の場合。