魔笛は鉄人のリモコン

朝ドラ主題歌を聴いていて「こいび」で切れて、数秒後「ととここにいて」とつながった。なんだ「こいびと」かい。変なところで切るな、と思っていたが、おとといの魔笛で、パパゲーノがパパゲーナと会えなくて首をつろうとする場面で「ドゥ、ファル」で切れて、しばらくして「シェ・ヴェルト」とつながったのを聴いて、変なところで切れるのは朝ドラだけではないと合点がいった（Du,falsche Welt＝汝、悪い世の中）。バッハのカンタータだって、長いメリスマを歌ってるうちに、あれ、これなんていう言葉を伸ばしてるんだっけ、と分からなくなることもある。魔笛に戻る。おとといの公演でいろいろ連想した話を書いたがもう一つ。タミーノの魔法の笛（魔笛という題名の所以）は、そもそも夜の女王サイドから渡されたものである。それを携えてタミーノがザラストロ側に寝返ったということは、件の笛はザラストロ側に渡ったということになる。まるで鉄人２８号のリモコンである。昔はセキュリティの意識が低かったから、パスワードもなにもない。単純にリモコンを手にしたものが鉄人を操ることができた。だから、リモコンが敵の手に渡ったとたん、鉄人は「悪魔の手先」になる（主題歌）。「いいも悪いもリモコン次第」だ（同）。この主題歌の「リモコン次第」を「持ち主次第」に置き換えればそのまま魔笛になる。