朝採りのススキを待合に・・・
10月は長雨が続き、今しも台風22号が通り過ぎようとしています。
10月26日、茶友Kさまの古希をお祝いする茶事をしました。
その日は、お客さまの日頃の行いが良いせいでしょうか、久しぶりの快晴でした。
前日が大雨だったので庭の落ち葉や手入れ不足が気になっていたのですが、潔くあきらめました。
席入りは11時、板木が4つ打たれ、桜湯が入った志野の汲み出しを半東Fさんが運び出し、腰掛待合へご案内しました。
待合の掛物は画賛(矢野一甫和尚)
紅葉(画) 舞秋風
とあり、Kさまと一緒にお習いした恩師N先生から頂戴した思い出のお軸です。
煙草盆は竹張香座間透、火入れは染付冠手です。
蹲踞で心身を清め、前日の大雨でしっとりと佳い具合に濡れた露地で迎え付けをしました。
やがて、襖越しに耳を澄ませていると衣擦れの音が静かになり、気を引き締めて襖を開けました。
「Kさま、おめでとうございます。
なにかお祝いをしたいと思っておりましたが、茶事でお祝いするのが一番私らしい・・・と思いましてお出まし頂きました。
たいしたことはできませんが、お楽しみいただければ・・・と思います。」
相客はAさま、Hさま、Yさま(詰)、長年お茶を通して親しくお付き合い頂いている方々なので、皆さまとご一緒にKさまの古希をお祝いできることがとても嬉しいです。
本席の掛物は「七事式偈」(両忘庵・大木宗玄師書)です。
このお軸は、Kさまと初めて出会った東京・高田馬場の某茶事の会でご縁があり、私の手元へ来たものでした。
加えて、七事式はKさまや相客の皆さまと一緒に修練を重ねた思い出があり、今日のお祝いの席にふさわしいと選んだのです。
七つの禅語はどれも厳しい修練を重ねて得られる究極の境地を示唆していますが、員茶の禅語が一番心に残っていました。
員茶 老倒疎慵無事日
閑眠高臥対青山
(ろうとうそようぶじのひ かんみんこうがしてせいざんにたいす)
6月に恩師N先生のお宅に伺った折、先生はじめ80代の先輩方が和気合いあいと茶の稽古に励んでいる様子に感銘を受けました。
・・・・・こんな風にお茶に励み、仲良く一緒に年を重ねて行くのは、なんて素敵なことだろう!
そのことをお話しし、出来る事ならKさまや皆さまとこのような禅語の境地を目指して齢を重ねたい・・・と。
折据の乗った香盆を運び出すと、「ギョッ! 本当に七事式をするのですか?」と皆さま。
折据を回し、本香はKさま、次香は暁庵と香元が落ち着きましたが・・・次香がモタモタで失礼いたしました(汗)。
香は火加減がとても難しいのですが、まもなく馥郁とした優しい香りが席を満たし、香が回され、ゆっくりと心や身体を清めていきました。
香の十徳(伝・一休宗純作)より
感格鬼神 清浄身心 (霊魂や神と感応をし、心や身体を清める)
本香は伽羅、火相も程よく(半東Fさんに感謝!)上品で心安らぐ香りを楽しんで頂けたようです。
香銘は「紫雲(しうん)」(古希の色は紫なのに因んで)です。
暁庵のむらさき茶会の香席でIさまが焚いてくださった香を記念に頂戴したのですが、これが最後の一片でした。
次香は、大学時代からの親友Mさんのアブダビ土産でアラビア語が読めず香木がわかりませんが、伽羅とは違う香りを味わって頂きました。
京都を去る時にSさまから餞別に頂戴した優雅な蒔絵の重香合が皆様のお目に留まり、嬉しいです
頂戴したいろいろなものがお祝いの茶事を華やかに彩り、力強く後押ししてくださって、感謝!です。
茶友の古希をお祝いして・・・・その2へつづく