今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

182 旭川(北海道)・・・静謐と寒さが霧の旭川

2008-12-07 22:00:28 | 北海道

「温暖」と「寒冷」の地、選択が可能ならどちらを生活の場として選ぶだろう。私は多分「温暖」の地へとなびくのだろうが、しかしいろいろな意味で北欧が人気スポットであるように、日本でも北海道で暮らしたいという人は多い。確かに「寒冷地」から来る清澄なイメージはなかなか魅力的である。その代表的な街が旭川ではないだろうか。よけいなものはすべて凍り付き、削ぎ落とされて澄みわたっている、のではないか?

寒さ、から来る勝手な連想で、旭川に一方的に憧れを抱いている私なのだが、一度や二度(ちなみに今回が2度目)訪問したからといって、そこでの実際の暮らしがどのようなものかなど、分かるはずがない。しかし街の南部を流れる美瑛川に添って広がる「外国樹種見本林」を歩いていると、澄んだ空気に全身が洗われていくようで、ただそれだけで何とも心地よい。

この林は、外国の樹が日本でも育つかを試す林野庁の実験場なのだといい、ヨーロッパトウヒ、チョウセンカラマツ、ウラジロモミといった具合に、聞き慣れない名札が次々と現れる。小説『氷点』の舞台にもなっていて、入口には三浦綾子記念文学館があった。

よく晴れた平日の午前、試験林に人影はない。林を進むとカメラと三脚を抱えたおじさん、そして土手の上でウォーキングらしいおじいさん、さらには林の出口付近で犬を連れたおばさんに出会った。いずれもちらりとこちらに視線を投げ、硬い表情のまま目をそらし、去って行く。私の風体が怪しげだからか、あるいは北の人たちには人を拒む癖があるのか。

色彩の少ない季節に、ひときわ自己主張しているのがナナカマドだ。真っ赤な粒がひしめき合って、それはもう賑やかである。旭川の「市の木」なのだという。カラスが一房、嘴に鋏んで飛び立った。

午後4時を過ぎると、街はどんどん暮れて行って、早々と夜になった。そんな市街地をとぼとぼ歩いて、旭川のランドマークなのだという旭橋を見に行く。途中のロータリーに建つタワーは「17:08 +5.0°C」と表示している。穏やかな1日だった。

旭川は川の街であり、市内に750を超す橋が架かっている。その代表格が石狩川に架かる旭橋らしい。重量感のある鋼材が描くアーチは優雅で、街路灯に浮かび上がった橋は川面に美しいシルエットを浮かべていた。架橋70年、道北の拠点都市として生きて来た旭川とともにあり、市民の愛着は深いらしい。

ところでわが家の乏しい家財の中で、いささか目立つ家具はタモの無垢板を使ったテーブルである。購入したのは東京のショップだが、それが旭川の家具であった。しかしいまその地元で聞けば、特産の高級家具も往事の勢いを失い、職人の数も減ったとか。疲弊する北海道経済にあって人々は札幌に集中しているらしく、旭川は静かな地方都市へ移行しつつあるのかもしれない。
 
常盤公園は凍えた空気が張りつめていて、数日後には満ちるのであろう月が、池を冷たく照らしていた。その佇まいは、確かに寒冷地ならではの清澄さを感じさせたが、いささか寂しくもある。私はやはり温暖派なのだろうか。翌朝、午前8時発の札幌行き特急に乗ろうと駅を目指すと、大改修中だという駅舎は深い霧の中にあった。(2008.11.10-11)
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