柿はさほど好みの果実ではないのだけれど、その色はまことに美しいと、季節が廻るたびに思う。一関の街なかで、軒に柿を吊るしている茅葺家に出会う。晩秋の日差しをいっぱいに浴びて、柿は艶やかに照り返り、土壁にくっきりと影を映している。一関藩家老職の沼田家屋敷跡だという。素朴な門の内に小さな庭が造られてはいるものの、内部はやや豊かな農家の風情。支藩とはいえ三万石を領しながら、その家老屋敷は実に質素である。
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