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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

対テロ戦争のためのルール造りを

2011年05月05日 16時08分02秒 | 国際政治
ビンラディン容疑者は殺害時は非武装 米大統領報道官(朝日新聞) - goo ニュース
 米軍特殊部隊によるオサマ・ビン・ラディン殺害について、国際社会では、ビンラディンが非武装であったことなどから、国際法上の合法性を疑問視する声も聞かれるそうです。しかしながら、現時点では、幾つかの点から、この決断も致し方なかったのではないかと思うのです。

 まず第一に、戦う相手は、国家ではなく、テロ組織であったことです。ビン・ラディンは、1998年2月に、「ユダヤ・十字軍に対する聖戦のための国際イスラム戦線」を結成し、イスラム教徒に対して、”アメリカと同盟国の国民を殺害する義務がある”、と宣言し、相次いでテロ事件を起こしました。アメリカとアルカーイダとの関係は、”殺すか殺されるか”の敵対関係に至り、2001年の同時多発テロにより、アメリカは、アルカーイダに対する対テロ戦争を開始したのです。アフガニスタンでの戦争は、あくまでも、テロ組織と国家の政府が結びついたことで引き起こされたものであり、敵の本隊は、国家ではなく、テロ組織であったのです。

 第二に、テロ組織であるからこそ、従来の戦争法を適用することもできない、という問題点があります。無差別殺人という人類の禁じ手を武器とするテロリスト達には、戦争法といったルールを守る意思は全くありません。このことにより、戦闘員と非戦闘員の区別はつかなくなり、有事と平時を分けることもできなくなりました。ビンラディンは、自宅で命を落としますが、テロリストもまた、数多くの無防備な民間人を無差別に殺害したのです。正当な司法手続きを経ずに、ビンラディンを殺害したことを批判する意見もありますが、自らを法の保護の外に置いたのはテロリスト自身ですし、テロ組織相手では、常に”戦争状態”となるのです(戦争では殺害は許されている・・・)。

 第三に、たとえ、個人の刑事責任として、アメリカの国内裁判所や国際刑事裁判所においてテロリストを訴追することができても、逮捕することができない限り、刑を言い渡し、罰を課すことはできないことです。国際警察部隊が存在しない現状では、国家レベルの軍が動かなければ、テロリストを捕縛することはできないのです。

 現在の国際社会には、政治と司法が混在していることは以前の記事で書きましたが、もし、より法に沿った形で対テロ戦争を行おうとするならば、むしろ、対テロ戦争のための国際的なルール造りをすすめるべきです。例えば、テロリストが正規の部隊ではない以上、国際社会は、平時にあっても、攻撃対象とされた国の特殊部隊に対して、テロリストに対するピンポイント型の活動を広く許容すべきなのかもしれません。

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コメント (11)
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