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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アジアへの技術・システム輸出は雇用を生むのか?

2009年12月30日 15時37分52秒 | 国際政治
100兆円超の需要創造=成長戦略、400万人を新規雇用-政府(時事通信) - goo ニュース
 政府は、2020年までに、環境、健康、観光の三分野において、400万人の雇用を創出する新戦略を策定すると報じられています。この中で、日本の技術やシステムをアジアに輸出することで経済成長を後押しし、外貨を獲得してゆく方針を示したそうです。市場のパイを拡大するという意味において、アジア諸国の経済成長を促進することは重要なことですが、この政策が、日本国内の雇用創出に繋がるのか、ということになりますと、いささか疑問があります。

 第一に、我が国とアジア諸国との労働コストや為替相場を比較しますと、現地生産の方が遥かに企業にとって有利になります。このため、国内の企業が、技術と共に生産拠点を海外に移すか、もしくは、現地企業が我が国から獲得した技術で安価な製品を生産することで、反対に、外国製品が輸入される可能性もあります。何れにしても、国内の雇用は減少することが予測されます。

 第二に、現時点においては、我が国は技術面において優位を保っていますが、この政策を長期にわたって継続するには、常に、高度先端技術のトップ・ランナーである必要があります。つまり、国内の雇用は、研究・技術開発部門において増えることになりますので、早急に、人材を育成しなければならないのです(現在の教育体制では不十分・・・)。

 第三に、政府が、民間企業に対して、正当な対価なく開発した技術の移転を強要しますと、企業の研究・技術開発に対するインセンティヴが低下します。企業が、インセンティヴを失えば、国際競争力も低下しますので、やがて雇用の減少を引き起こします。

 以上の点を考慮しませんと、産業の空洞化を防ぐ対策や、民間企業の競争力強化のための措置、通貨安政策への是正要求など、適切な対策を伴わない限り、安易な技術移転は、我が国の産業の衰退を加速化することになりかねないと思うのです。

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コメント (2)
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