著者は女性だけの異業種交流ネットワークで知り合った
ライターさんで、三十年くらい交流のある方です。
(2010年の「枯れるように死にたい」も老人医療の
問題点を鋭く突く力作でした。)
そして今回は、まさに彼女がご主人の看取りをされた内容で、
私にとっても、身につまされる緊迫感を感じるほど切実なもの。
ショッキングなことは、ご主人が長年、病院や老人医療施設で
活躍された<気骨のお医者さん>なのに、認知症になられ、
がんの痛みからも逃れられなかったことです。
どんなに健康に留意していても、ヘルシーな生活に徹していても
誰でもがこの二重苦に陥る可能性がある、ということなのです。
大事なことは、正しい対処で、「本人を安心させてあげること」。
鬱病の人に「頑張るのよ」なんて言っちゃいけないのと同様に、
物忘れで混乱状態にある人にキツイ言葉や𠮟責は禁物です。でも、
看病(介護)する人も、極限に近く疲れていれば、分かっていても
つい、キツイ言葉や表情が出てしまうらしいので大変です。
この本を読んで思うのは、認知症患者への接し方についての、
最新の知識や知恵の重要性です。例えば、
p.35 (何度も繰り返される、同じ質問にさすがにイラっとして
その日の外出がおじゃんになってしまった経験から)
以来、私は「さっき言いました」を禁句とし、尋ねられた
ことに対しては、毎回初めて聞かれたこととして答える、を
肝に銘じました。
夫は単にわからないから私に尋ねているのであって、
何度も同じ質問を繰り返しているという認識はないのでしょう。
p.36 だとしたら物忘れの酷さを指摘されたくなないでしょうし、
責められれば嫌な思いをするだけです。
(中略)五回目になると顔が少しひきつるか、声のトーンが
上がりそうになります。なので、そうなる前に用事を見つけた
ふりをして、速やかに夫の前から姿を消すことにしました。
しばらく離れている間に認知症のお陰もあり、夫はこだわって
いた出来事をすっかり忘れ、一件落着となります。
なぁ~るほど・・・・・ 言われてみれば、尤もなことだけれど、
プロの介護者でなく、一日中追い回されて疲労の曲にある家族は
なかなか思いつかないことかもしれません。