Side Steps' Today

裏版Side Steps' Today

散財日記

2020年10月10日 | CD批評
高中正義「Takanaka Sings」
地元で知り合ったギター少年から中学時代にその名を聞いて以来、なんとなく「軽フュー」(=軽薄なフュージョンの意。我々の大学サークルではこのように揶揄されていた)の代表的存在としてのイメージが強く、さらには雑誌で見たサーフボード型のギター等、完全に色物系というイメージも加わって、ギター少年でもない当方にとっては音楽を聴く以前の段階として完全に食わず嫌いで来ていたが、コレを聞いて刮目。ただ、アルバム中の白眉なのは「アルジャロウないじゃろ」…。このタイトルを見ただけでも色物系のトレンドを強く感ずるが、聴くだに「これ、どうやってレコーディングしているのだろう?」という疑問が即座に擡頭。ギターに歌という弾き語り形式のシンブルな構成だが、歌はボコーダーがかけられていて音程はキーボードでコントロールされている筈。歌詞から類推するに即興的に演奏していると思われるが、少なくとも手が3本(2本はギター、1本はキーボードでボコーダー)必要となる中、ガイドとなるリズムトラックもないが、1)歌もしくはギターを先に録ってから(タイミングや雰囲気からおそらく歌が先に録られているものと推測)他方を後でオーバーダブしているか、2)ギターと歌を同時に録音し、あとから歌のトラックにボコーダーをかまして別トラックへ、さらにボコーダーをコントロールするキーボードのMIDIを合わせて録って後からコントロールを編集する、という具合なのだろうか…。ボコーダーはギターでもコントロール可能だが、タイミングが相違している。まあ今の編集テクノロジーがあれば問題なくできるが、絶妙なのは歌とギターのタイミング。アルバムタイトルは「~Sings」だが、ギターサウンドもよろしく、この「アルジャロウないじゃろ」もコンプのかかり具合が素晴らしく(冒頭のギター少年がMXRのダイナコンプを使用していた印象が強すぎて、このプツプツした圧縮具合がなんとなくダイナコンプに聞こえる)、さらにアンプのサチュエーション感もグーで、このような何気ない部分に実力やセンスが光っている!と思い、過去の誤ちを反省しながらそれまでの高中アルバムをほぼ全て収集して聞いたが、この曲のインパクトが強すぎたためか目下これを超えるものは出現せず。