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命を削って働く先生たち~子どもたちのまなざし 28

2009年09月09日 | 土佐いく子の教育つれづれ

 「先生は、給料がいいし、休みも多いから楽でよろしいなあ」と言われたり、一部の心ない教師の起こす事件で「近ごろの教師は…」と厳しいバッシングを受けたり、ということが増えました。

 しかし今、日本の先生たちはまさしく命を削って働いているのです。

 暑い夏の日のことでした。学校帰りに涼むつもりで思わず飛び込んだ喫茶店。「あー、暑かったなあ。37度の部屋で一日クーラーなしの生活って地獄やなあ」と言うと、ウエイトレスのおばさんが「えー、今どきクーラーのない仕事場があるんですか」。

「そうですよ、クーラーはないし、一日騒音の中で、しかも立ちっぱなしの仕事で、もうくたくたですよ」

「みなさん、何の仕事してはるんですか。まるで昔の『女工哀史』みたいでんなあ」と言われ、私たちって、えらいところで働いているんだと苦笑したことでした。

 朝6時50分に家を飛び出し、8時に学校に駆け込む。急いでプールサイドへ走り、水温を測ったり、消毒液を入れたりと準備をする。今日の学級だよりと夕べ作った算数のプリントを印刷し、社会の資料を整えて教室へ走る。

 窓を開け、昨日のテストの丸つけを始めたら、保護者から電話だというので職員室へまた走る。「『友だちともめて学校に行きたくない』と言ってるので、先生頼む」と言うのだ。とにかく顔を見てこようと、自転車で家へ向かう。説得して自転車に乗せ、また学校へ帰ってくる。朝から汗が流れる。

 すぐに職員朝会、研究授業の検討会を早くしてほしいという。次々と仕事や取り組みが追いかけてくる。目が回る。教室へ向かう。何やらにぎやかで、朝からもめている。暑い! やかましい! 37度の教室で朝からケンカだ。話を聞いてやって、朝の会が始まる。

 4人の子を置いて母親が家を出た子が休んでいる。心が痛む。連絡ノートを見ると、万引きをしたわが子のことや、家で暴れる兄のことで相談したいと書いてある親もいる。日程を調べ、学校に来てもらう日を連絡する。

 そしてやっと授業。休み時間には丸つけをし、トラブった子どもの話を聞いてやる。さあ次はプールの時間。駆け下りて行って、水着に着替え、プールサイドへ。終わると着替えて理科の実験の用意。

 昼になれば、給食の準備を一緒にして、子どものグループで話を聞いてやりながら流し込むように食べる。あっ、今日もトイレに行くのを忘れている。病気になる…。

 給食を済ませると一緒に片づけ、「先生、今日Sケンして遊ぶから、先生はぼくのチームやで」と、食べ物がまだのどを通っているのに遊び仲間入りし、一緒に汗を流す。チャイムが鳴ったら掃除や。何ヵ所もの掃除場所を廻り、ほうきで掃き雑巾がけをする。

 チャイムが鳴ると、5時間目の授業。3時半に6時間目が終わり、終わりの会をしていたら、研究授業の検討会を始めるから集まれ、と放送が入る。また走って行く。5時過ぎまでかかる。また教室へ戻り、日記に返事を書き、提出期限の迫った書類を書く。あっ6時を回っている。夕方からの組合の会議にまた走って行く。

 10時に帰って、そこから学級だよりを書き、明日の教材の用意をして、それでもまだ頭はオン状態。オフにならぬ頭で横になる。今寝たのにすぐ朝が来る。

 そして、また慌しい一日が始まる。休息、休憩時間なんてない。トイレに行くのも忘れるほどの日々。

 病気をしてもクラスをみてくれる先生がいないから(いても忙しい同僚に気を遣う)休むこともできない。

 評価制度が導入され、校長にSABCDなどとランクづけされて息が詰まる。しかもそれで給料格差がつく。橋下府政になってからその給料も毎月1万~5万くらいカット。

 そして大阪の子の学力が低いのは、先生よ、お前たちが悪いとバッシング。1クラス40人の児童がいて、病気をしても替わりの先生もいないほどの定員削減、親の暮らしはズタズタで、そのしわ寄せが弱い子どもたちを直撃。

 精神を患って学校に来れない先生が増えている。これでも教師は楽ですか?

(とさ・いくこ 中泉尾小学校教育専門員・大阪大学講師)

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