マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

サンザシの樹の下で

2012-02-07 08:54:53 | 映画ーDVD

ーサンザシの樹の下でー山[木査]樹之恋/THE LOVE OF THE HAWTHORN TREE

2010年 中国

チャン・イーモウ監督 チョウ・ドンユイ(ジンチュウ)ショーン・ドウ(スン)シー・メイチュアン(ジンチュウの母)リー・シュエチェン(村長)チェン・タイシェン(ルオ先生)スン・ハイイン(スンの父)

 

【解説】

HERO』『初恋のきた道』などで知られる世界の名匠チャン・イーモウが監督を務めた、美しくも切ない純愛ストーリー。中国で300万部を売り上げた華僑作家エイ・ミーのベストセラー小説を基に、文化大革命下の中国に生きる男女の実話をつづる。運命に翻弄(ほんろう)されるヒロインを演じるのは、チャン・イーモウが国内の芸術学校を探し回り、2,500人の中から抜てきした新星チョウ・ドンユィ。本作をきっかけにスター街道を進むドンユイの熱演が見どころだ。

 

【あらすじ】

文化大革命下の中国。都会育ちの女子高生ジンチュウ(チョウ・ドンユイ)は、再教育のために送られた農村でスン(ショーン・ドウ)という青年に出会う。エリートでありながら明るく誠実な彼に惹(ひ)かれるジンチュウだったが、それは身分違いの許されない愛だった。その後、2人は愛を交わし合う関係にまで至るが……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

名匠チャン・イーモウと言えば、「初恋のきた道」でチャン・ツイィーに魅了された人は多いのではないでしょうか?

この作品は、「初恋のきた道」を彷彿とさせる純愛物語。

ハンカチを用意しなくっちゃ。

 

1970年代の中国、文化大革命の真っ最中。

都市部で暮す女子高生ジンチュウ(チョウ・ドンユイ)は、農村体験のためにはるばるバスで小さな村にやってきた。

村の入り口にあるサンザシの木。

この木は、抗日戦争のとき、日本兵が中国兵を処刑した場所で、サンザシは普通白い花をつけるが、この木に咲くのは兵士の血を吸った真っ赤な花だと言う。

 

ジンチュウは、村長の家にホームステイすることになり、この家に食事に来る地質調査員スン(ショーン・ドウ)と出会う。

 

二人は淡い恋心を通わせるが、スンに婚約者がいるという噂を聞いて、ジンチュウはスンをさけ、自宅に戻った。

 

☆ネタバレ

ジンチュウの家は母と幼い妹と弟の4人暮らし。

父は思想犯として獄中にいた。

母も、思想教育を受ける身で、一家はとても貧しく、ジンチュウが高校を卒業後、学校に残って働くというのが家族の願いだった。

そのためには、ジンチュウも女学生でありながら、男たちに混じって肉体労働も厭わず働いていた。

 

ときどき村から氷砂糖やサンザシの実などが届くようになった。

スンがジンチュウのことを思って届けてくれていたのだった。

婚約者は実は妹だったということもわかり、二人はときどき会うようになった。

誰も知らない、二人だけの幸せのとき。

ジンチュウの学校への試験採用も決まり、ようやく未来に光が射したかと思われたそのとき、二人のデート中にジンチュウの母親に会ってしまった。

 

母親は「恋愛に反対しているのではない。まだ早すぎるのだ」と二人を説得した。

スンは、理解を示し「いつまでも待つ」といって、二人は無言で別れた。

 

しばらくして、スンが病院に入院したという知らせが届き、ジンチュウは母にも職場にも嘘をついてスンの元へ。

「白血病」と聞いていたのだが、スンは「ただの定期検診」だという。

二人は、看護婦宿舎を借りて一夜を共にする。

そのあとの二人の別れがあまりにせつない。

 

その後スンからの連絡が途絶え、ジンチュウは不安から、スンの愛情まで疑い始める。

ジンチュウは自分が余りにも幼く、恋愛に付いても何も知らないということを、友達の妊娠騒動によって知り、ソンの深い愛情を思い知った。

そして、スンの行方を探し始める。

地質調査の仲間に聞くと「白血病にかかった人はいたが、スンは健康だった」といい、行方は知らなかった。

 

ジンチュウが授業をしていると軍から1台の車が迎えにきた。

連れて行かれたところは病院で、そこには痩せて内出血した痕が全身にあるスンの変わり果てた姿があった。

スンの父が出迎え、「もう長くはない、名前を呼んでやってほしい」と言った。

スンのうつろな目は、天井に貼付けた二人の写真を見ていた。

ジンチュウが呼びかけると、スンの目から一筋の涙がー。

 

文革が終わって、ジンチュウは外国へ留学し、二人の思い出のサンザシの木は、ダムの下に沈んだ。

 

まさに、純愛ストーリーで、とても切ない物語なんだけど、ソンが難病で死んでしまうなんて、チャン・イーモウ作品にしては、単純だなあと言う気持ちがしていました。

 

それで、こんな解釈をしてみました。

 

スンは仕事がら、定期検診を義務づけられていました。

ジンチュウがお見舞いに行ったときは、本当に定期検診だったようです。

でも、「地質調査」ってなんでしょう。

怪しいですよね。

作業員たちも「白血病で亡くなった人もいた」と言っていました。

 

スンは仕事中の事故で、瀕死の重傷になったのには間違いがありません。

かなり急性のものだったと思われます。

身分を回復したスンの父親が、軍を通じてジンチュウを呼びました。

 

ということは、国家の仕事のしていての事故なのでしょう。

死に目に恋人を会わせるという温情も認められたのでしょう。

 

では、スンが謎の死を迎えなければならなかった仕事とは、一体なんなのでしょう。

作品の中ではまったく語られませんでした。

地質調査の装置も布で覆って隠されたままでした。

 

スンの最後の姿も悲惨でした。

あの明眸皓歯の青年が、痩せて横たわっている姿には、観る者もショックを受けました。

でも、スン自身は、こういう結果がいつくるかわからないと、予想していたようでした。

二人が別れるたびに、これで会えないという危機感が漂っていました。

 

以上のことから、私は放射性物質に関係するもの、たとえばウラン鉱の調査かなあ?と思いました。

まったく語られなかった所が、ヒントではないかなあ。

国家機密で、働いている人にもその危険性を教えられてなかったような調査。

そう考えると、二人を引き裂いたのは、まさに国家だったんだと思い、さらに、この作品が奥深いものに思えてきました。

 

貧しさ故に幼くて、あまりにもピュアなジンチュウに惹かれて、自分の人生を全部捧げてもいいと思うほどの愛を示したスンは、自分の短い生涯を予感していたに違いありません。

だからこそ、ジンチュウといる時間を美しいものにしたいと、命を賭けて大切にしたのではないでしょうか。

 

かわいいジンチュウに気持ちを入れて見てしまいましたが、スンの気持ちを考えながら見ると、また違った純愛が見えてくるのかもしれません。

二人の恋愛を通じて垣間見える革命の矛盾や問題点。

監督の意図も、ここにあるような気がしました。

 


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2 コメント

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Unknown (杏子)
2012-02-07 20:32:36
スンが途中からソンになってますが・・
(このコメントは消去してくださいね)
杏子さんへ (マダムよう)
2012-02-08 08:21:34
ていねいに読んでくださって、ありがとうございます。

実は、このスンというのはあだなで、ジンチュウに「恋人らしい名前で呼んで欲しい」と言うのですが、ジンチュウは、結局彼を呼ぶことはなかったの。
だからといって、本名がソンというかどうかは忘れてしまったのですが。汗!!

このことも書き添えたいので、今回はコメント消さずにおかせてください。

こういうコメントは、本当にありがたいです。
これからも、よろしくお願いします。

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