ー美しき諍い女(うつくしきいさかいめ)ーTHE BEAUTIFUL TROUBLEMAKER/LA BELLE NOISEUSE
ジャック・リヴェット監督 ミシェル・ピッコリ ジェーン・バーキン エマニュエル・ベアール マリアンヌ・ドニクール
【解説】バルザックの『知られざる傑作』を原作に撮った、ジャック・リヴェット監督作品。孤高の画家フレンホーフェルは、自らの最高傑作“美しき諍い女”を描こうと妻をモデルにするが完成直前に破棄してしまう。そして10年後。彼の前に、若いモデル、マリアが現れた事から彼は再び“美しき諍い女”の仕上げにとりかかるが……。(allcinema ONLINE)
【感想】
「美しき諍い女」という邦題は素晴らしい。
日本語は詩情があります。
英語ではザ・ビューティフル・トラブルメーカーですもの。
無修正版4時間の作品を鑑賞しました。
若い画家のニコラ(ダヴィッド・バースタイン)は、ガールフレンドのマリアンヌ(エマニュエル・ベアール)知り合いの画商ポルビュスに頼んで、尊敬する画家のフレンホーフェル(ミシェル・ピコリ)の屋敷を訪ねた。
美しいプロヴァンスの古城。
屋敷では、フレンホーフェルとその妻リズ(ジェーン・バーキン)が心よく出迎えてくれた。
夜遅くなって、ポルピュスが、かつてフレンホーフェルがリズをモデルに描こうとして挫折した「美しい諍い女」を、マリアンヌをモデルに描いてみないかと持ちかけた。
できたら、どんな作品でも市場価格で買い取るという。
ニコラとフレンホーフェルが乗り気になり、マリアンヌも、その夜は承諾しなかったが、朝になると、画家の屋敷に出向いていった。
ここから、この作品はほとんどがアトリエでの描写になります。
老画家と裸で向き合うマリアンヌの、濃密な4日間。
デッサンから始まり、クロッキーなど、私のような絵画に何の知識もない人間には、はっきり言って苦痛な時間が過ぎていきます。
その間に、マリアンヌは解体され、内面をさらすと言う過酷な作業をさせられます。
エマニュエル・ベアールのヌードが素晴らしい。
この肉体こそが芸術品だなあ、とうっとりします。
真剣に芸術に向き合う姿が、鬼気迫ります。
二人とも、自我をむき出し、傷つけ合い、ある時は共感し、芸術作品が苦しみながら産まれていく様子を、観客は冷静に観察することになります。
☆ネタバレ
マリアンヌにも苦しい時間ですが、やがてマリアンヌは高揚していきます。
反対にリズは、自分で挫折した絵の書き直しと知って、傷つき、夫にも失望を感じます。
夫が挫折したとき、リズもまたすごく傷ついていたからです。
このへんのジェーン・バーキンは鬼気迫った感じで素晴らしい。
ニコラもまた、嫉妬に悩まされていきます。
弱さを露呈して、妹に頼る有様です。
さて、「美しき諍い女」が出来上がりました。
マリアンヌは一目見るなり、顔色を変えてアトリエを飛び出していきました。
怒りを抑えることができない様子です。
そして、ニコラの妹に「自分の冷淡さを見た」と打ち明け、落ち込みます。
リズは椅子を持って来てじっくりと見て、「やっぱりね」という感じです。
なぜか、絵の裏に印を入れました。
夫の意図を汲んだような感じでした。
画家の家で働く若いメイドは、この絵を見て「美しい人」と感嘆しました。
そして、この絵は画家の手によって、アトリエの壁に塗り込められてしまいました。
ちらりと見えたのはバックが赤ということだけでした。
そのあと、画家は画商に渡すための作品を仕上げました。
結局、観客は「美しき諍い女」を見ることはできません。
ここまで付き合わせて「うっそー!!」と思いましたが、これが正解かもしれません。
マリアンヌの人生観を根底から変えてしまった作品。
画家を生き返らせた作品。
リズを落ち着かせた作品。
いつか、世に出ることもあるのでしょうか?
いつも見るばかりの絵画を、書き手の側から体験したような気分になりました。
ジャック・リヴェット監督 ミシェル・ピッコリ ジェーン・バーキン エマニュエル・ベアール マリアンヌ・ドニクール
【解説】バルザックの『知られざる傑作』を原作に撮った、ジャック・リヴェット監督作品。孤高の画家フレンホーフェルは、自らの最高傑作“美しき諍い女”を描こうと妻をモデルにするが完成直前に破棄してしまう。そして10年後。彼の前に、若いモデル、マリアが現れた事から彼は再び“美しき諍い女”の仕上げにとりかかるが……。(allcinema ONLINE)
【感想】
「美しき諍い女」という邦題は素晴らしい。
日本語は詩情があります。
英語ではザ・ビューティフル・トラブルメーカーですもの。
無修正版4時間の作品を鑑賞しました。
若い画家のニコラ(ダヴィッド・バースタイン)は、ガールフレンドのマリアンヌ(エマニュエル・ベアール)知り合いの画商ポルビュスに頼んで、尊敬する画家のフレンホーフェル(ミシェル・ピコリ)の屋敷を訪ねた。
美しいプロヴァンスの古城。
屋敷では、フレンホーフェルとその妻リズ(ジェーン・バーキン)が心よく出迎えてくれた。
夜遅くなって、ポルピュスが、かつてフレンホーフェルがリズをモデルに描こうとして挫折した「美しい諍い女」を、マリアンヌをモデルに描いてみないかと持ちかけた。
できたら、どんな作品でも市場価格で買い取るという。
ニコラとフレンホーフェルが乗り気になり、マリアンヌも、その夜は承諾しなかったが、朝になると、画家の屋敷に出向いていった。
ここから、この作品はほとんどがアトリエでの描写になります。
老画家と裸で向き合うマリアンヌの、濃密な4日間。
デッサンから始まり、クロッキーなど、私のような絵画に何の知識もない人間には、はっきり言って苦痛な時間が過ぎていきます。
その間に、マリアンヌは解体され、内面をさらすと言う過酷な作業をさせられます。
エマニュエル・ベアールのヌードが素晴らしい。
この肉体こそが芸術品だなあ、とうっとりします。
真剣に芸術に向き合う姿が、鬼気迫ります。
二人とも、自我をむき出し、傷つけ合い、ある時は共感し、芸術作品が苦しみながら産まれていく様子を、観客は冷静に観察することになります。
☆ネタバレ
マリアンヌにも苦しい時間ですが、やがてマリアンヌは高揚していきます。
反対にリズは、自分で挫折した絵の書き直しと知って、傷つき、夫にも失望を感じます。
夫が挫折したとき、リズもまたすごく傷ついていたからです。
このへんのジェーン・バーキンは鬼気迫った感じで素晴らしい。
ニコラもまた、嫉妬に悩まされていきます。
弱さを露呈して、妹に頼る有様です。
さて、「美しき諍い女」が出来上がりました。
マリアンヌは一目見るなり、顔色を変えてアトリエを飛び出していきました。
怒りを抑えることができない様子です。
そして、ニコラの妹に「自分の冷淡さを見た」と打ち明け、落ち込みます。
リズは椅子を持って来てじっくりと見て、「やっぱりね」という感じです。
なぜか、絵の裏に印を入れました。
夫の意図を汲んだような感じでした。
画家の家で働く若いメイドは、この絵を見て「美しい人」と感嘆しました。
そして、この絵は画家の手によって、アトリエの壁に塗り込められてしまいました。
ちらりと見えたのはバックが赤ということだけでした。
そのあと、画家は画商に渡すための作品を仕上げました。
結局、観客は「美しき諍い女」を見ることはできません。
ここまで付き合わせて「うっそー!!」と思いましたが、これが正解かもしれません。
マリアンヌの人生観を根底から変えてしまった作品。
画家を生き返らせた作品。
リズを落ち着かせた作品。
いつか、世に出ることもあるのでしょうか?
いつも見るばかりの絵画を、書き手の側から体験したような気分になりました。
>この肉体こそが芸術品だなあ、とうっとりします。
そう思います。
そして、画家のフレンホーフェルの絵に対する凄い集中力も感じました。
僕の長女も現在高校で油絵を学んでいます。やはり集中力が必要なんです。
>ここまで付き合わせて「うっそー!!」
そうですよね。でも、これで良かったのかも知れません
随分前に公開されたこの映画。「いつか見よう」と思いながらここまでズルズルと来てしまいました見て良かったです