マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

歓喜の歌

2008-02-12 11:36:24 | 映画ー劇場鑑賞
ー歓喜の歌ー
松岡錠司=監督 立川志の輔=原作
小林薫(飯塚正)安田成美(五十嵐純子)伊藤淳史(加藤俊輔)由紀さおり(松尾みすず)浅田美代子(飯塚さえ子)田中哲司(北澤直樹)藤田弓子(大田登紀子)根岸季衣(塚田真由美)光石研(五十嵐恒夫)筒井道隆(「リフォーム大田」の客)笹野高史(伊藤茂)塩見三省(大河原勇)渡辺美佐子(大河原フク)斎藤洋介 片桐はいり でんでん 
猫背椿 平澤由美 江本純子 吉本菜穂子 土屋久美子 峯村リエ 於保佐代子 
宮本裕子 波岡一喜 山本浩司 野嵜好美 安田祥子 立川志の輔 立川談志 
リリー・フランキー

【解説】
人気落語家、立川志の輔の同名落語を、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』の松岡錠司監督が映画化したヒューマンドラマ。大晦日の市民ホールを舞台に、紛らわしい名前のママさんコーラスグループをダブルブッキングしてしまったことから起こる騒動を描く。“事なかれ主義”の主人公に実力派の小林薫がふんするほか、本作が6年ぶりの映画出演となる安田成美、“日本の歌唱”の第一人者、由紀さおりらが出演。クライマックスの大合唱シーンは圧巻。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
文化会館で働く飯塚主任(小林薫)は、似た名前の2つのコーラスグループを聞き違え、大晦日のコンサートホールをダブルブッキングしてしまう。双方に掛け合うものの、どちらも一歩も譲らず大問題に発展。“事なかれ主義”で生きてきた飯塚だったが、2つのグループの板ばさみとなってしまい途方に暮れる。(シネマトゥデイ)

【感想】
よかったです。
お薦めです。

「邦画が見たい」という夫のご要望にお応えして、見に行きました。

 安田成美さん率いる「みたま町コーラスガールズ」

 由紀さおりさん率いる「みたまレディースコーラス」

みたま町文化会館の主任の飯塚さん(小林薫)は、ことなかれ主義の公務員根性丸出して生きて来た人物。
ガイジンホステスに入れあげて、職場も左遷され、家族とも別居状態。
それでも、懲りない男。
その彼が、こともあろうに12月31日のママさんコーラスのイベントを2つ同時間に受けてしまったことが、前日になって発覚した。
「みたま町コーラスガールズ」と「みたまレディースコーラス」。
名前は似ているけど、全然違うグループです。
「これって、ダブルブッキングっぽくないですか?」と、部下の加藤君(伊藤淳史)。

たかがママさんコーラスだろう、とタカをくくっていたら、それぞれに事情があって前日から予定は変更できない。
「私たちに非があるとおっしゃるの?」と詰め寄る松尾さん(由紀さおり)さんと塚田さん(根岸季衣)さん。
「悪いのは当方です」と引き下がる飯塚さん。
それでも、ちゃらんぽらんやってきた根性はなかなか直りません。

けれども、なんとかしようと努力しているうちに、天然キャラの五十嵐純子(安田成美)はじめ、いろんな人と出会い、いよいよ本気になっていきます。
いくつになっても、生き甲斐を見いだすきっかけってあるもんです。

ラーメン屋の娘さんが語る、おばちゃんのエピソードから涙を拭きだす我が夫。
なんで?これコメディですけど…。

ても、彼も公務員のはしくれ、日頃いろいろ苦労があるのかもしれません。
見終わった後で、「僕の仕事は『ギョーザ』ばかりや」と嘆いていました。
(『ギョーザ』の意味は映画を見たら解りますよ)

最後は小林薫さんの熱演に、私も思いっきり笑っているのに、ああ涙が…

ややっ、前の席のはげ頭に刺繍のジャンバーを着ている怪しいおっちゃんまで泣いているようです。

まるで、中年女性のための映画みたいなのに、おっちゃんも泣く映画みたいでした。
(私には謎ですが)

私はコーラスが好きだし、ママさんコーラスの懐かしい歌を聞いているのも心地よくて、この映画はお気に入りです。
ドラマチックじゃないという意見もあるようですが、私は「フラガール」よりよかったと思いました。

小林薫さんを最初に見たのは伊丹十三監督の「お葬式」の焼き場の人の役で、ちょい役でしたが、あれも存在感があって光っていました。
いい役者さんです。

志の輔さんの落語も聞いてみたいなあ。

アンジェラの灰

2008-02-12 11:32:40 | 映画ーDVD
ーアンジェラの灰ーANGELA'S ASHES
1999年 アメリカ/アイルランド アラン・パーカー監督 フランク・マッコート=原作 エミリー・ワトソン ロバート・カーライル ジョー・ブリーン キアラン・オーウェンズ マイケル・レッグ ロニー・マスターソン ポーリン・マクリン リーアム・カーニー エアンナ・マクリアム 

【解説】
大恐慌に陥った1930年代。アイルランドからニューヨークに渡ったマラキとアンジェラはそこで出会い結婚する。やがてふたりは5人の子どもに恵まれるが、マラキは仕事もなく、失業手当すら酒代に消えてしまう。末娘を亡くした一家は結局故郷のアイルランドに戻ることに。しかし、アンジェラの実家のある街リムリックも決して一家を優しく迎えてはくれなかった……。フランク・マッコートの小説を「ザ・コミットメンツ」のA・パーカーが再びアイルランドを舞台に映画化。(allcinema ONLINE)

【感想】
アイルランドの独立戦争に参加し、国を追われ、アメリカで暮らす一家。
しかし、職はなく貧しく、待望の女の赤ちゃんは死んでしまった。

一家は失意のまま、アイルランドの妻の実家を頼って帰郷するが、そこに待っていたのも、貧しさだけだった。
愛する子供たちが次々と亡くなり、そしてまた新しい命が生まれる。

夫マラキ(ロバート・カーライル)、妻アンジェラ(エミリー・ワトソン)。
そして、この小説の原作者であり主人公であるフランクを3人の子役が演じていました。

時代的には「麦の穂を揺らす風」の次の時代でしょうか。

フランクのお父さんはもとIRAの戦士、プライドばかり高くて、貧乏には向かない男だったのでしょう。
仕事は続かず、稼いだ日銭もお酒に消える。
出稼ぎに行っても、仕送りはなく、無一文で帰って来て、なじられると「出稼ぎに行く」と言ったまま、二度と帰ってはきませんでした。

父を演じていたロバート・カーライルはよかったです。
酒に溺れ、自己愛に満ちたダメ男なんだけど、彼だったら許せると思いました。
教養とかわいげのある男でした。

母を演じたエミリー・ワトソンも素晴らしい。
貧しくて、家の壁を壊して薪にするしかないほどの極貧を、笑い飛ばしてしまう母の強さを、説得力を持って演じていました。

貧しい話でも、辛さがないのは監督アラン・パーカーの力量でしょう。
監督が何度見ても泣くという、フランクにおばさんが就職祝いにと服を買ってくれるシーン、私も涙があふれました。
監督と一緒で、うれしいなあ。

日本の戦後もこのように貧しかったのでしょうね。
でもアイルランドは雨ばかり。
裏町の石畳の道はでこぼこしていて、いつも水たまりができているようでした。
フランクの家はその坂の下にあり、隣はこの街に1カ所の共同トイレ。
1階はいつも水浸しで、冬は二階に避難する。
すざましい、貧しさです。

今のアイルランドは豊かになって、再開発が進み、こういう街が残っていなくて、映画のために作ったセットだそうですが、原作者のフランク・マッコートは、そのままに再現されていたと言っていました。

冷たくて美しささえ感じる街ですが、こんな中で暮らす人々は、心も凍える思いだったでしょう。

フランクがいよいよアメリカに渡るという前の晩、家族揃って月食を見るシーンは、一編の詩のように美しいです。

メイキングで作家のフランク・マッコートが語っていましたが、この話は実話だそうです。
もしそうだとしたら、お母さんは過去が公表されるのはいやだったでしようね。
貧乏は美談ではないですもの。
貧乏から我が子と自分の生命を守るためには、何でもしてきたでしょう。
そう思うと、とても痛い気持ちになりました。

ショート・カッツ

2008-02-12 11:22:48 | 映画ーTV
ーショート・カッツー
1994年 アメリカ ロバート・アルトマン監督 アンディ・マクダウェル ブルース・デイヴィソン ジャック・レモン ジュリアン・ムーア マシュー・モディーン アン・アーチャー フレッド・ウォー ジェニファー・ジェイソン・リー クリス・ペン リリ・テイラー ロバート・ダウニー・Jr マデリーン・ストー ティム・ロビンス ロリ・シンガー ライル・ラヴェット バック・ヘンリー ヒューイ・ルイス リリー・トムリン フランシス・マクドーマンド マイケル・ビーチ

【解説】
メド・フライと呼ばれる害虫を駆除するため、農薬散布のヘリコプターが市街地を飛び回る。都市の上にばらまかれた農薬によって、人々は次第に狂気に陥っていくのか……。ハリウッドを徹底的に皮肉った傑作「ザ・プレイヤー」に続いて、R・アルトマンが豪華キャストで完成させた、3時間を越すユニークな群像劇。レイモンド・カーヴァーのいくつかの短編を基に、10組の人々の日常の中にひそむ非日常を鮮やかに描いている。(allcinema ONLINE)

【感想】
「今宵フィッツジェラルド劇場で」で、興味を持ったアルトマン監督。
この作品は、ご覧下さい、キャストが豪華でしょう?

この作品は、ロサンゼルスにメド・フライと呼ばれる害虫を駆除するため、ヘリコプターから農薬散布された夜から、大地震に教われる夜までの、様々な人たちの生活が描かれています。
だから、あまりドラマティックとは言えない、平凡な日常生活です。

でも、それはそれで、ひとりひとりにとっては大問題。

たとえば、人気ニュースキャスターの一家(夫ブルース・デイヴィソン、妻アンディ・マクダウェル)。
ある日、一人息子が車に轢かれた!!
事故現場からは歩いて帰って来たのに、脳に血腫ができて意識不明が続いたあげく、とうとう死んでしまった。
死の床にある孫の元へ、祖父(ジャック・レモン)が訪ねて来た。
父が幼い時に別れたその父。
そして、懺悔にも似た打ち明け話をする、母の妹との情事。
いまさら、言われても、このじいさん何しに来たの?息子は呆れて病室にも乗ってしまう。

この子供を車で轢いたのはウエイトレス(リリー・トムリン)。
彼女の夫はリムジンの運転手(トム・ウェィツ)。
彼は飲んだくれで、ふたりはくっついたり離れたりを繰り返している。
腐れ縁とでも言うのでしょうか?
これはこれで、二人は仲がいいようです。

その娘(リリ・テイラー)とメイクアップ・アーティストの夫(ロバート・ダウニー・Jr)。
お金持ちの人の留守番に行って、肉食魚に生き餌をやったり、妻に暴力を受けた後死んだようなメイクをして、それを写真に撮って楽しんだりしている。

この二人の友人でプール掃除屋(クリス・ペン)とテレフォンセックスのアルバイトをしている妻(ジェニファー・ジェイソン・リー)。
子供のおしめを替えながら、変態の相手。
夫はニュースキャスターの家のプール掃除もしている。

この2組の夫婦はしょっちゅう一緒に遊んでいて、ある日、ピクニックに行って女房どもに内緒でおねえちゃんをナンパしようと思ったまではよかったが、なぜかプールの掃除屋が女の子を石で殴り倒してしまった!!

この夫婦がよく通っている場末のパプでは、かつてスターの頂点にいた女性ジャズシンガー(アニー・ロス)がライブをしている。
彼女にはチェロを弾いている娘(ロリ・シンガー)がいるが、最近彼女が精神的に不安定。
家はニュースキャスターの隣。
隣の男の子が事故で死んだことにショックを受け、自分も自殺してしまう。

このチェリストのアンサンブルを、ニュースキャスターの息子の主治医(マシュー・モディーン)とその妻(ジュリアン・ムーア)が聞きに来ていた。
妻が有名人を見つけ、その事が縁で隣に座っていたの夫婦と仲良くなり、彼らを家に招くことになった。

仲良くなった夫婦は、失業中の夫と、ピエロのパフォーマーの妻。
夫は、招かれた手みやげに魚釣りに出かける。
そこで、川に沈んでいる若い女性の全裸の死体を発見する。
でも、それを放置したまま魚釣りに3日間興じ、その後に通報した。
それを聞いた妻は、なんと非人間的な好意と憤り、密かに被害者の葬式に参列した。

医師の妻は絵描きで、妹(マデリーン・ストー)をヌードモデルにして大きな絵を描いている。
この二人は理想のカップルを演じているが、夫は妻が3年前のパーティで浮気をしたのではないかと疑っている。
問いつめられた妻は、ものの弾みでといいながら告白を始めた。

医者はがっかりするが、レイの夫婦が、釣った魚を手みやげに来たので気を取り直し、バーベキューでもてなした。
その後、ピエロの格好をさせてもらって一晩中、乱痴気騒ぎをする。

医師の妻の妹は警官(ティム・ロビンス)の妻だが、夫は不倫している。
ウソはすぐばれるので、夫をいたぶっては楽しんでいる。

警官の不倫の相手(フランシス・マクドーマンド)の夫は、農薬散布のヘリコプターの操縦士だが、この夫婦は破綻している。

妻は一人息子を連れ、別の愛人と旅行している間に、夫がチェーンソーを使って家をめちゃめちゃにしてしまった。
恋人に送ってもらって、家に入った彼女はびっくり。

こういう中に大地震が起こる。
それぞれの持ち場で仕事をこなし、また日常に戻っていくー

死体と死と疑似死が出て来て、やはり死がテーマかなあと思わせますが、登場人物がみんな深刻そうな顔をしながら、軽薄です。
その方がよっぽど問題があるのではないかなあ。

でも、こういうところがアルトマンの天才的なところなのではないでしょうか。
軽薄なりに調和がとれているのです。
たくさんのエピソードを追いかけながら、矛盾がない。
ただただ、恐れ入った映画でした。