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●科学技術ニュース●分子科学研究所など、有機溶媒中で集積し微細な繊維構造を形成する湾曲ナノグラフェンを開発

2021-04-01 09:32:33 |    ★炭素ニュース★

 分子科学研究所の瀬川泰知准教授は、名古屋大学の伊丹健一郎教授、加藤健太大学院生(研究当時)、理化学研究所の高場圭章特別研究員、眞木さおり研究員、米倉功治グループディレクターらとの共同研究によって、有機溶媒中で自己集合しナノファイバーを形成する湾曲ナノグラフェンを開発した。

 炭素68個、水素28個からなる湾曲ナノグラフェンを合成し、各種有機溶媒と混合したところ、約1日でゲル状態になった。ゲル中における湾曲ナノグラフェンの重量比は1%以下であり、効率的なゲル化剤であることが分かった。

 透過型電子顕微鏡によって、ゲル中において湾曲ナノグラフェンがナノファイバーを形成していることが観測された。

 置換基をもたないナノグラフェンが超分子ナノファイバーを形成する例はこれまでになく、集積構造の詳細な解析が求められたが、得られたナノファイバーは最も細いもので直径約3ナノメートル、それが束になった部分でも最大で数100ナノメートルと非常に細いために、従来法であるX線結晶構造解析では解析できなかった。

 そこで、微結晶の解析が可能な電子回折結晶構造解析を適用したところ、ナノファイバー内の分子配列を詳細に明らかにすることができた。
 
 ファイバー内では分子が互いの凹凸に合わせて秩序よく整列し、さらに二重らせん状に絡まった形で直径2.8ナノメートルの1本のファイバーを形成していることが分かった。分子の凹凸によって、置換基のない湾曲ナノグラフェンが超分子ナノファイバーを形成できることを示した。

 同研究によって、分子の凹凸デザインという新しいナノファイバー形成方法が見いだされた。炭素ナノファイバーは分子エレクトロニクス材料として期待されている材料であり、同法によって得られたファイバー内でさらに炭素炭素結合を形成することによって、これまで不可能であった様々な炭素ナノファイバーの合成が可能になることが期待される。(理化学研究所<理研>)


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