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●科学技術ニュース●NICT、国際宇宙ステーションと地上間での秘密鍵共有と高秘匿通信に成功し衛星量子暗号通信の実用化に期待

2024-05-14 09:36:39 |    通信工学
 情報通信研究機構(NICT:エヌアイシーティー)、東京大学大学院工学系研究科(研究科長: 加藤 泰浩)、ソニーコンピュータサイエンス研究所、次世代宇宙システム技術研究組合及びスカパーJSATは、低軌道上の国際宇宙ステーション(ISS)から地上の可搬型光地上局への光通信により、1回の上空通過で100万ビット以上の秘密鍵を共有し、ISSと地上局とでの情報理論的に安全な通信の実証に成功した。

 同通信実証の成功により、低軌道衛星からの光通信による高速かつ高い安全性を持つ暗号鍵を任意の地上局と共有する技術的な見通しが立った。

 同技術が実用化されれば、原理的に地球上のどこでも安全な暗号鍵の共有ができ、通信で漏えいを防ぐことができるため、国家安全保障や外交の分野において不可欠な重要情報の高秘匿通信が可能になる。

 今後、同技術の開発を更に進め、機密情報を扱うユーザ向けの衛星量子暗号システムの社会実装を目指す。

 今回の実験で同研究開発チームは、低軌道高秘匿光通信装置(SeCRETSシークレッツ)を開発し、ISSの日本実験棟きぼう船外実験プラットフォームに搭載した。

 このSeCRETSから10GHzクロックで乱数データ(鍵データ)を変調した信号光を地上に向けて発射し、NICT本部(東京都小金井市)に設置した可搬型光地上局の直径35cm反射型望遠鏡で信号光を受信することができた(なお、可搬型光地上局及びそこから25m離れた直径1.5m地上固定局望遠鏡で光信号とビーコン光の光強度を測定し、地上での光ビームの広がり具合を推定している)。

 そして、信号の盗聴者への情報漏えい量を無限小とするため、この受信した乱数データをISSと地上局の間で鍵蒸留処理をすることで、1回の上空通過で100万ビット以上の安全な暗号鍵の生成に成功した。

 さらに、この蒸留処理した暗号鍵を用いて軌道上にある写真データをワンタイムパッド暗号化してISSからの電波による通信を通じて地上に送信し、復号することでこの写真データを取得することにも成功した。

 同プロジェクトで行った実証研究では、光送信を行う範囲をセキュリティの確保された受信局周辺の区域に限る方式(物理レイヤ暗号)を用いて行った。今後はここで得られた結果の検証を進めることで、暗号装置に組み込む機器等の開発を更に進め、衛星搭載用の量子鍵配送装置の製作を加速させる。また、量子鍵配送実証に好適な電力系や姿勢制御系を備えた衛星バスシステムの開発を視野に入れた研究・開発を加速させ、実用化への足掛かりとする。さらに、ISS-可搬型光地上局での実験デモを更に進め、わが国独自の衛星量子暗号を実現するための基本データ収集を実施する予定。<情報通信研究機構(NICT)>
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