月間賞に立石さん(熊本)
佳作は年神さん(鹿児島)、橋本さん(宮崎)西さん(熊本)
はがき随筆9月度の受賞者は次の皆さんでした。
【月間賞】19日「秋はもうすぐ」立石史子=熊本県玉名市
【佳作】27日「水面の美術館」年神貞子=鹿児島県出水市
▽26日「二つの花」橋本京子=宮崎県延岡市
▽16日「男の料理」西洋史=熊本市北区
残暑の日々が続きますが、そんな中にも秋を感じる方がいらっしゃいました。今回はそんな方の随筆です。
秋と言って思い出すのはフランスの詩人ポール・ヴェルレーヌの「秋の日の ヴイオロンの ため息の 身にしみて ひたぶるに うら悲し……」(上田敏訳)でしょうか。でもこんなに暑くてはおセンチにもなれませんね。
「秋はもうすぐ」立石史子さんは豊かな感性をお持ちの方だとお見受けします。日常のさりげない風景や感触からふっと秋の気配を感じる。まさか湯船に落ちてきたどんぐりから秋の到来を知る。まさに詩人ですね。
年神貞子さんは車窓を過ぎてゆく一服の絵画のような美しい球磨川の風景に感動。心洗われるひと時をお持ちでした。山々の木々が色とりどりの紅葉に変わってゆく。それが川面に映る、秋のカラフルな景色も想像できたのではないでしょうか。絵をお描きになるのでしょうか。
橋本京子さんの随筆も自然の描写です。花壇の中に場違いに育ったケイトウが威勢がいい。花壇の主の日々草をガードするようにナイト然と威張っている。そのアンバランスさについ笑ってしまう。初秋を彩る楽しくて愉快な風景ですね。花を擬人化して面白いです。
退職後に挑戦した料理。その悪戦苦闘ぶりを描いたのは西洋史さん。息子からバカにされてきたけど、ある日のこと「大事な人を連れてくるから父さんの料理をぜひ」。息子から星一つもらったとさりげなく綴っていますが、さすがに西さんもぐっと胸に来るものがあったに違いありませんね。心温まるお話です。
他に、井手口あけみさん(宮崎)の「憧れたおっぱい」▽若宮庸成さんの「川の流れのように」▽相場和子さん(熊本)の「独り言」ーーが印象に残ります。
季節の変わり目、皆様ご自愛のほどを。
熊本県文化協会理事
和田正隆