はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

サクラ

2013-03-19 12:02:12 | はがき随筆


 西鹿児島駅発大阪行き特急。姉を見送った母がプラットホームで号泣した。その年、大阪万博があった。
 今春、大学卒業の娘が大阪へ行く。口では「さびしくない」と言いつつも、私の心の片隅に一抹の悲しみが。
 初詣の夜、境内の赤々とした燃える炎に、親の元を離れて自活する娘を、暖かく見送ろうと誓う。
 あの日亡き母が泣いた。ほんの少し“母の気持ち”が分かる気がする。私は「親」になれたのかな。
 気の早い桜が咲き始めた。別れの朝に、旅立ちの朝に。
  鹿児島市 吉松幸雄 2013/3/19 毎日新聞鹿児島版掲載

こんにちは

2013-03-19 11:54:32 | はがき随筆
 いつも夕方、歩いている。数日前も歩いていたら、1人の女子高生が自転車で帰宅しているのに出会った。風上に向かって体を揺すってこいでいた。私は声をかけず黙ってやり過ごそうと思っていた。ところが、大声で「こんにちは」と言われた。私は気勢に押され、返事をするのがやっとだった。彼女は何事もなかったかのように去っていった。きっと家庭のしつけと学校の教育がいいのだろう。苦しい体勢のままで自然に挨拶できた彼女は立派だった。私は恥じ入る思いをしたが、心は暖かくなり、元気をもらった。「ありがとう」「さようなら」
  出水市 畠中大喜 2013/3/18 毎日新聞鹿児島版掲載

小さな友

2013-03-19 11:30:38 | はがき随筆


 寒風は野鳥を連れてくる。どこに餌はあるのだろう。私はミカンや焼き芋を庭に置く。しばらくしてなくなっている。
 中にはあいさつしてくれる鳥もいる。本当です。庭でも畑でもわざわざ近くに寄ってくれてエールをくれる。尾羽と頭を直線にして添水のように傾けてクックッと鳴く。よく目も合う。ジョウビタキです。翼におしゃれの白斑をつけている。
 鋤で畑を打っているといつの間にか姿がある。小さなクモなどが好物と聞いている。
 遠い昔から彼らの祖先と我々の祖先はこうやって、よしみを深めあってきたのだろうか。
  出水市 松尾繁 2013/3/15 毎日新聞鹿児島版掲載

「子育て卒業式」

2013-03-19 00:36:39 | アカショウビンのつぶやき
2013年3月18日 (月)

山陽小野田市  会 員   河村 仁美

3月は卒業式シーズン。娘も社会人となり無縁と思っていたら、結婚式は親にとっても子育て卒業式という大きな意味を持つ大切な日と聞いた。
 小学校卒業の時には「親子の心むすびを心を込めて結び続けた6年間。美しく結ぶという腕前には、まだほど遠いが崩れることなく卒業を迎えられたことに母親として喜びをかみしめている」とメッセージを送った。
 子育て卒業にあたり感謝されたのは、写真整理大好きな私が作った子供の数冊のアルバム。いっぱいあってうれしいと披露宴用の写真を選ぶ娘を見ていたら、寂しさより楽しみになった。

   (2013.03.18 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載