80年は長いが、振り返ると速い。懐かしく楽しかった出来ごとが浮かんでくる。ところが、ビザなし訪問団で国後島を訪れた国会議員が、島を取り戻すには戦争を考えてはどうかと言いだした。眠っていた記憶、ぼくの世代なら最初に体感した恐怖が呼び覚まされた。
戦況の悪化が物心ついたぼくに恐怖を植えつけた。父は出征し、妹を背負った母に手を引かれ、炎が染める夜空を眺める。探照灯の光芒の中、焼夷弾がゆらゆらと落ちてゆく。国会議員は、関ヶ原の戦いを漫画で見た程度だろう。現実はボタンを押せば始まり、そして終わる。
鹿児島県志布志市 若宮庸成(79) 2019/7/21 毎日新聞鹿児島版掲載
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます