はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆8月度

2022-09-18 11:06:45 | はがき随筆
 はがき随筆8月度の受賞者は次の皆さんでした。(敬称略)

月間賞に相場さん(熊本)
佳作は山野さん(宮崎)、清水さん(鹿児島)、増永さん(熊本)


 【月間賞】6日「忘れられないあの音」相場和子=熊本県八代市
 【佳作】6日「あっぱれ。名言」山野秋男=宮崎市
     24日「かわいいよ」清水昌子=鹿児島県出水市
     10日「カボチャ嫌い」増永陽=熊本市中央区



 「忘れられないあの音」は、戦時中、勤労奉仕の帰りに友達と米軍の機銃掃撃を受けたが、幸いにも助かった。しかし弾が地面に刺さるブスブスという音は今でも耳に残っているという、稀有な体験談です。私も近くの製麺所が爆撃され、家の近くまで馬の首が飛んできたのを覚えています。空襲警報のサイレンの響きはトラウマになって、高校生になってもサイレンの音に、ビクッとしました。
 「あっぱれ、名言」は、ローカル番組を聞いていたら、小学生の海水浴場ゴミ拾いが紹介されていた。その一人が、「ゴミを捨てた人に拾ってほしかった」と感想を述べていた。この一言に感動し、ごみを捨てる人にはなるまいと思ったという内容です。負うた子に教えられ、ではありませんが、こういう決心にはいくつになられても、若々しさを感じます。
 「かわいいよ」は、抗がん剤治療で頭髪が抜けていく。鏡の中には、さびしげな表情の自分がいる。見たくもないが、ある時その自分に「かわいいよ」と笑いかけてみた。すると不思議なことに、気持ちが明るくなったという内容です。さぞおつらいことだろうと推察しますが、私たちはそれでも生きていかざるをえない。そのような自分を、文章に書いたりして客観視するのも、生きていく知恵かもしれません。
 「カボチャ嫌い」は、南瓜料理を見ると戦時中を思い出し、箸が進まない。栄養失調になるくらい、毎日が水っぽい南瓜のスイトンであった。今の南瓜は栄養満点だと分かってはいるが、箸は動かない。現在では理解しにくい内容かもしれませんが、ある世代には身につまされる内容です。私も、南瓜は嫌いではないが、一生食べる分を食べたような気がして、あまり食べたくはないですね。8月のせいか、戦争に関する文章を多く見かけました。増永さんの文章を読んで、戦争を知らない政治家たちに、国策を誤らないように、毎日、うらなりの南瓜を食べてみたほしいと考えたりしました。
 鹿児島大学 名誉教授 石田忠彦

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