はがき随筆の11月度月間賞は次の皆さんでした。
【優秀作】4日「疑心暗鬼」若宮庸成=志布志市有明
【佳作】20日「一人前」野崎正昭=鹿児島市玉里団地
▽30日「遊んでから」秋峯いくよ=霧島市溝辺町
「疑心暗鬼」は、深夜にジェット機の音で目を覚まし、半睡の中で、米国の爆撃機が空爆から戻る音かと想像したら、眠れなくなったという内容です。現下の両国の宣伝戦だけでなく、ミサイルが飛ぶ事態は、私たちの意識下に危機感を植えつけるようです。戦時中の空襲警報や空襲を体験した世代には、ことは深刻です。
「一人前」は、人生に対する興味深い解釈です。人には成人や就職や結婚など「一人前」と呼ばれる時期が数回あって、その最後は天命を全うしたときだと言う。その意味では、生きている間は「半人前」ですが、半人前でも生きていたいというのも、人情です。
「遊んでから」。小学生のとき、同級生の家に月刊雑誌を見せてもらいに行くのが楽しみだった。ところがなかなか見せてくれない。遊ぶだけ遊んで帰る間際に、やっと見せてくれる。それでも、すでに亡くなった彼女の思い出は懐かしい。雑誌というか活字というか、それへの渇望があの時代には確かにありました。読んでいても懐かしい内容です。
この他に3編紹介します。
年神貞子さんの「家庭菜園」は、トマト栽培の話です。脇芽を摘んで差し芽したら、茎はどんどん伸びるが肝心の実がならない。園芸雑誌によると、トマトは暑過ぎると結実しないとのこと。確かに涼しくなったら、大きな実がなりだした。新しいことを知るのは楽しいですね。
畠中大喜さんの「直角と草」。戦時中、空襲がはげしくなると、神社などに避難しての授業だった。拝殿の板の間に座り、小さな黒板の前で学んだためか、直角と草の漢字を習ったことははっきり覚えている。漢字を学んだ記憶と時代の状況の変化とを、並行して、うまくまとめた文章です。
胡蘭之さんの「鹿児島での暮らし」は、中国人留学生が鹿児島の人々の優しさに触れた印象記です。テレビ番組でも最近よく、外国人による日本の好印象が流されていますが、戦前の軍国日本の悪印象に逆戻りしないことを願うばかりです。
鹿児島大学名誉教授 石田忠彦 201712/13 毎日新聞鹿児島版掲載
【優秀作】4日「疑心暗鬼」若宮庸成=志布志市有明
【佳作】20日「一人前」野崎正昭=鹿児島市玉里団地
▽30日「遊んでから」秋峯いくよ=霧島市溝辺町
「疑心暗鬼」は、深夜にジェット機の音で目を覚まし、半睡の中で、米国の爆撃機が空爆から戻る音かと想像したら、眠れなくなったという内容です。現下の両国の宣伝戦だけでなく、ミサイルが飛ぶ事態は、私たちの意識下に危機感を植えつけるようです。戦時中の空襲警報や空襲を体験した世代には、ことは深刻です。
「一人前」は、人生に対する興味深い解釈です。人には成人や就職や結婚など「一人前」と呼ばれる時期が数回あって、その最後は天命を全うしたときだと言う。その意味では、生きている間は「半人前」ですが、半人前でも生きていたいというのも、人情です。
「遊んでから」。小学生のとき、同級生の家に月刊雑誌を見せてもらいに行くのが楽しみだった。ところがなかなか見せてくれない。遊ぶだけ遊んで帰る間際に、やっと見せてくれる。それでも、すでに亡くなった彼女の思い出は懐かしい。雑誌というか活字というか、それへの渇望があの時代には確かにありました。読んでいても懐かしい内容です。
この他に3編紹介します。
年神貞子さんの「家庭菜園」は、トマト栽培の話です。脇芽を摘んで差し芽したら、茎はどんどん伸びるが肝心の実がならない。園芸雑誌によると、トマトは暑過ぎると結実しないとのこと。確かに涼しくなったら、大きな実がなりだした。新しいことを知るのは楽しいですね。
畠中大喜さんの「直角と草」。戦時中、空襲がはげしくなると、神社などに避難しての授業だった。拝殿の板の間に座り、小さな黒板の前で学んだためか、直角と草の漢字を習ったことははっきり覚えている。漢字を学んだ記憶と時代の状況の変化とを、並行して、うまくまとめた文章です。
胡蘭之さんの「鹿児島での暮らし」は、中国人留学生が鹿児島の人々の優しさに触れた印象記です。テレビ番組でも最近よく、外国人による日本の好印象が流されていますが、戦前の軍国日本の悪印象に逆戻りしないことを願うばかりです。
鹿児島大学名誉教授 石田忠彦 201712/13 毎日新聞鹿児島版掲載
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