はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

夏の朝

2010-08-13 14:39:15 | はがき随筆
 菜園の周りに果樹を植えている。梅や桃の枝先に背を割って目玉や足の末端まできれいに形を残し、ニスを塗ったように光ったセミの抜け殻があった。目を上げると幹に羽を震わし発音筋の腹を超スピードで震わしてあらん限りに鳴くアブラゼミ。
 鳴きなさい。思い切り鳴くがいい。7年目にやっと地上に出て、青い空の下、緑陰の風を吸う。その命は短い。草むらに腹を見せたセミの亡骸が落ちていた。
 庭に出れば、さまざまな生き物の誕生と最期を目にし感動をもらい、またの出会いを期待する。巡る季節を愛おしく思う。
  出水市 年神貞子(74)2010/8/13 毎日新聞鹿児島版掲載

最新の画像もっと見る

コメントを投稿