夜遅くまで残業していた20代のころ。独り冷える事務所で明朝までの書類を作っていた。ふと窓ガラスを見ると、暗闇の中に映る自分の姿。無力感が一層募った。不意にドアが開き、隣の部署の課長さんがのぞかれ、いたわってくださった。最後に「きっといいことがあるよ」と言って帰っていかれた。お礼を述べつつも「そうかなぁ」と仕事に戻った若輩。今なら分かる。「いいこと」はあった。あの言葉こそがそうだったのだ。なかなか認めてくれる存在のいない昨今。年下の頑張り屋さんを見かけると、私が「きっと……」と言うようにしている。
49 鹿児島県出水市 山下秀雄(49) 2018/12/25 毎日新聞鹿児島版掲載
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