はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

11月の蚊

2008-11-28 19:34:03 | はがき随筆
 消灯後、弱々しい蚊の羽音がする。夏と違って勢いも元気もない。ここ数日、部屋に居着いているのか、床に就く時分に現れる。蚊は何回か旋回するものの刺す気力はないらしい。私には蚊が、地球温暖化の影響で死する時を失い、ただ命を永らえているように思われる。
 ふと私は自分の人生を思った。「団塊世代」の私の老後はどうなんだろう。今時、子供をあてにする親は少なかろう。寝たきりで病院をたらい回しにされるのも嫌だ。適当な施設があって入ることがはたして可能か。
 季節外れの蚊は、老後をさまよう人間の姿に似て悲しい。
   伊佐市 山室恒人(62) 2008/11/21 毎日新聞鹿児島版掲載

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