はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆3月度入選作品

2009-04-21 18:38:20 | 受賞作品
はがき随筆3月度の入選作品が決まりました。
▽志布志市志布志町志布志、小村豊一郎さん(83)の「別れ」(4日)
▽出水市緑町、道田道範さん(59)の「要介護レベル10」(31日)
▽薩摩川内市高江町、上野昭子さん(80)の「焦らないで」(6日)
─の3点です。

 桜花爛漫の中で選評を書いていますが、これが掲載されるころは葉桜になっていることでしょう。『徒然草』に「花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは。」という名文句がありますが、皆さんもその時期ごとの季節の風情を楽しんでおいでのことと思います。今年度も素晴らしい随筆のご投稿を期待しています。
 小村さん「別れ」は、奥様が亡くなられた後の片付けも終わり、娘さんが大阪に帰られるのを近くの無人駅まで見送った内容です。往年の小津安二郎の映画の一シーンを思い起こさせます。落ち着いたたたずまいの文章です。
 道田さん「要介護レベル10」は、腰を痛めてからの日常生活の不便さが、ユーモラスに描かれています。「世の中すべてが癇に障る」というお気持ちよく分かります。きっと、6段階しかない介護レベルも10まで上げたい痛さでしょう。
 上野さん「焦らないで」は、身体が不自由なのを気遣って、後輩の2人の元女教師が大阪から大掃除に来てくれ「焦らないでね」の一言を残して帰っていった。人情いまだ地に落ちずといったところで、こういういい話はいいですね。
 奥古志代子さん「元気でいてね」 (23日)は、退職して時間ができたので離れた所に住む義母を引き取ろうと行ったら、断られた内容です。「今度来る時は、葬式の時でいい」とはご立派です。馬場園征子さん「父の味、甘酒」(19日)は、今の甘酒の味に物足りず、父親が作った甘酒に挑戦し、成功した喜びです。味の好みも本卦還りします。一木法明さん「孫の雄姿に」(5日)は、お孫さんが高校テニスの九州大会に出場して優勝したのを、遠くまで2日間も応援に行った話です。子供には少し照れて控えめになるのが、孫のこととなるとあられもなくなるのは不思議です。中島征士さん「恋……?」(16日)は、子供の時からメジロの鳴き声が好きで、今でも恋したように胸ときめくという経験です。
(日本近代文学会評議員、鹿児島大名誉教授・石田忠彦)
  2009/4/21 毎日新聞鹿児島版掲載











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