はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

黒い小さい

2008-06-19 21:51:38 | はがき随筆
 見つけたとき、コジュケイの卵1箇は割れていた。卵の中をのぞくと、充血した目のように血管が縦横に走っていた。
 「この巣に親鳥はもう帰らないと思う」と妻が言う。残った2個の卵を綿にくるみ電気スタンドの熱で温めることにした。時々卵を回したり、霧を吹いたり、妻とともに注意を払った。
 何日目か、ひよこの声がした気がして行ってみると、卵にひびが入ってゆく。そっと手伝い、じっと見守る。くり返す。と、やがて真っ黒いものが現れ、両方とも立ち上がり、元気に鳴き始めた。それは、燃えだした黒い小さい炎のよう──。
   出水市 中島征士(63) 2008/6/18 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はridiaさん

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