はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

古里の山

2014-05-27 16:36:11 | はがき随筆
 「ふるさとの山に向かひて 言うことなし ふるさとの山はありがたきかな」と石川啄木が詠んだ。私も家から望む鉾立山を眺めるのが好きだ。生前、母が遊びに来た時、水田が広がる山並みに「良い所だ」と故郷をほうふつさせたようで、昔話に花が咲いたからである。程なく山の屋根伝いに送電線の鉄塔が並び、時の流れは環境を変えている。母に「鉄塔を木の形で緑色にしたら景観に抵抗ないかも」と言えば、「まだ山らしい山で見られる」との答え。思えば、環境が変わっても「自分らしく」と暗に母の声がする。今日も黙して古里の山を眺めている。
  出水市 宮地量温 2014/5/26 毎日新聞鹿児島版掲載

最新の画像もっと見る

コメントを投稿