はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆12月度入選

2010-01-27 18:08:02 | 受賞作品
 はがき随筆12月度の入選作品が決まりました。
▽霧高市溝辺町崎森、秋峯いくよさん(69)の「母の証言」 (13日)
▽鹿屋市寿3、小幡晋一郎さん(74)の「60年前の偶然」(9日)
▽志布志市志布志町内之倉、一木法明さん(74)の「煩悶」(11日)

──の3点です。

 この記事が掲載されるころは案外、春風の気配があるかもしれませんが、遅ればせながらの新年のごあいさつを申し上げます。今年もよろしくおねがいします。
 12月は、1年の総決算という意味もあったのか、過去の出来事についての優れた文章がたくさんありました。それらの中から3編を入選作に選びました。
 秋峯さんの「母の証言」は、大正3年1月12日の桜島大爆発の情景です。聞き書きですが、被災や避難の模様が真に迫っています。二度と起こらないことを願うのみです。
 小幡さんの「60年前の偶然」は、木造の母校の、国の「有形文化財」登録に際して、敗戦後の記憶が鮮やかによみがえり、思い出が懐かしくつづられています。「きばらんね」の壁の落書きが時間を60年前にみごとに戻してくれている文章です。
 一木さんの「煩悶」は「人はどこから来てどこへ行くのか」という人間の根源的な問いが、古希を過ぎた、師走の紺碧の空の下での感慨として吐露されています。老後になって気づく人生の意味への懐疑は厄介なものですね。身につまされます。
 次に優れたもの数編を紹介します。
 清水昌子さんの「ピアス」 (20日)は、いいお年になって耳にピアスの穴をあけられた話ですが、それが必ずしもオシャレのためではなく、立て続けにイヤリングを失くしたからという理由が秀逸です。田頭行堂さんの「白寿の年賀状」(28日)は、白寿になったので賀状は欠礼するという方にもこちらからは出すと、その娘さんから、喜んで読んでいるというお礼が来たという、心温まる内容です。人情未だ地に落ちず。有村好一さんの「サンタクロース」(24日)は豪州での経験。そこではサンタが、汗をふきながら、水着でスイ力を食べていたそうです。若宮庸成さんの「朝を楽しむ」(10日)は、寒中の早朝の散歩は人とはあまり会わない。その代わりタヌキに会ったら、タヌキが照れ笑いしているように見えたという瓢逸な文章です。
  (日本近代文学会評議員、鹿児島大名誉教授石田忠彦)

 係から 入選作品のうち1編は29日午前8時半過ぎからMBC南日本放送ラジオで明読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。


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