施設に入所している母の見舞いに行き、バス停で待っていると、中学生くらいの少年が両手に何か大切なものを携え、通り過ぎようとした。のぞき込むと、白い綿毛が指の間から見えた。それは小鳥の生毛にも見え、落下したひな鳥でも助けたのかと思った。なんと、タンポポの綿毛だった。それが飛ばないよう、宝物かのように手で囲っていたのだった。少年の優しさがいとおしく、まぶしく映る。路地に咲き、春の訪れを知らしめるかれんな黄色い花を見ると、「たんぽぽ」の歌詞がメロディーとなり流れ、この純粋な気持ちを忘れないでと、ひたすら祈る。
鹿屋市 中鶴裕子 2014/5/6 毎日新聞鹿児島版掲載
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