以前、夫の原稿をワープロで打つと時に「荏苒」という文字に出くわした。私の知らない言葉だったので尋ねると彼は「じんぜん、法律屋にとっては使い勝手が良くてね」と苦笑した。辞書を繰ると「月日のたつままに(なにもしないでいること)」とあった。なるほどと得心したが、古くさい言葉ですぐにな忘れてしまった。ところが昨今しきりとこの言葉を思い出す。新型コロナウイルスのパンデミックが起きて以来、政府はじんぜん何ら有効な手を打たず後手ばかりと歯がゆくなる。私もまた不安を抱えたままじんぜんセルフロックダウンをし続けている。
熊本市中央区 増永陽(91) 2021.9.18 毎日新聞鹿児島版掲載
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