はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

助数詞

2021-11-29 22:15:44 | はがき随筆
 メキシコ在住の娘が、5歳の孫娘との会話をSNSにアップした。孫「今日公園で友達が3個できた」。娘「3人ね」。孫「うん。あ、間違えた。もう1個いた」。娘「1人ね」。孫「うん」。娘「女の子、男の子?」。孫「男の子がね、4匹」。下手な漫才師よりずっと面白い掛け合いに、私は思わず笑った。
 孫娘は、父親とはスペイン語、母親とは日本語でしゃべる。鉛筆1本のように数字の後に付ける助数詞がスペイン語にはなく、娘はどう教えたらいいか悩んでいる。「3匹の侍」という時代劇もあるので「男は匹でもいいよ」とはいかないか。
 鹿児島市 高橋誠(70) 2021.11.8 毎日新聞鹿児島版掲載


夕暮れの公園

2021-11-29 21:53:50 | はがき随筆
 夏休みが近づく夕方、地区役員と子どもが球技大会の練習する声が聞こえた。この時期は活気づいたものだ。コロナ禍でその姿が見えなくなった。セミの鳴き声が残されただけだ。
 数カ月前から夕暮れになると女の人が、ノーメイクにノーマスク、ハーフパンツで現れる。人がいないのを確認してから、しゃがんで数本草を抜く。そこをスタート地点に、周囲の約300㍍を歩き出す。途中で5個の箱型のベンチがある。それを利用して昇降運動をする。3周回れば息切れして真っ赤な顔。誰かが見ていたら……。
 女の人とはこの私。
 宮崎市 津曲久美(63) 2021.11.7 毎日新聞鹿児島版掲載

版画で年賀状を

2021-11-29 21:45:23 | はがき随筆
 来年は寅年、さぁてどんなデザインにしようかなと思う。奇抜な寅もいいし、従順な寅もありか。絵本の中から一つに決めた。もちろん愛犬の桃太郎君は登場させる。年賀状用の版木は意外と柔らかくスイスイとはかどる。一気に線を彫る。版画の醍醐味はこれだ。しま模様がいい。版木2枚で完成する。彫りながら来年こそはコロナ禍が終息してほしいと願う。マスクをはずしてみんなと大きな声でおしゃべりしたい。遠方に住む子供や孫たちに会いたい。穏やかな日々が恋しい。そんな願いのこもった1枚の年賀状になれば幸せ。頼みますよ、寅さん。
 熊本県八代市 鍬本恵子(76) 2021.11.6 毎日新聞鹿児島版掲載

第8巻上梓

2021-11-29 21:37:51 | はがき随筆
 2010年の第1巻に始まった「高千穂スケッチ(毎日新聞掲載作品集)」の第8巻を上梓できるめどが付きました。
 俳歌壇・男の気持ち・みんなの広場・はがき随筆などの私の掲載作品を、150㌻ほどの文庫本サイズにまとめたもので、毎刊300冊ほどを親しい方々に無料でお配りしています。
 近ごろはありがたいことにて、鹿児島・宮崎・熊本のペンクラブの方々にまで手に取っていただけるようになりました。みなさん、どうぞよろしくお願い致します。
 鹿児島県霧島市 久野茂樹(72) 2021.11.6 毎日新聞鹿児島版掲載

美しい言ノ葉

2021-11-29 21:31:03 | はがき随筆
 読書中に「お福分け」というすてきな言葉を見つけ、メモしていたら、友から「いつもお福分けありがとう」の便りが届いた。心に響いた。
 言葉には不思議な力があり、うれしい言葉を掛けられれば、自然と笑顔になり、たったのひと言が、忘れられない一生の宝となることもある。
 私にも中学生の時、国語の先生に「作文が上手だね」と、ほめられた言葉があった。心に残り、書くことが大好きになった。
 これからも、この言葉は私の生きる調味料となるでしょう。それでは皆様、季節の変わり目、お身体おいといくださいね。
 宮崎県日南市 永井ミツ子(73) 2021.11.6 毎日新聞鹿児島版掲載

びっくり3人姓

2021-11-29 21:19:29 | はがき随筆
 熊本城でボランティアガイドをしている。京都の高校生に「皆さんをご案内する中村です」と型どおりに自己紹介。すかさず1人が「僕も中村です」。「中村姓は多いねえ」と笑いながら見学案内スタート。
 「加藤清正が肥後に入国した際は、別の所にあった隈本城、大隈重信の隈……」と言いかけたら「僕、加藤です」。さらに1人が続けて「隈本です」。「モトは元気の元でなく本なの?」と聞いたら「はい」。
 3人も名前が話のきっかけになるとは。しかも、レアな隈本君まで含まれ、びっくりずくめのお城案内になった。
 熊本市東区 中村弘之(85) 2021.11.6 毎日新聞鹿児島版掲載