はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

平和歌う舞台に感涙

2019-08-14 21:46:37 | 岩国エッセイサロンより

2019年8月12日 (月)

   岩国市   会 員   横山恵子

 平和をテーマにした創作ミュージカル「I PRAY 2019」を広島市内で見た。
 原爆犠牲者を悼む黙とうに続いて開演した。3歳から大人まで約30入が仲良く暮らす日々から始まる。それが突然の原爆によって一変し、みんな心身共に深く傷ついた。その地獄から立ち上がり、平和を願う・…
 人々の再生の過程を、歌と踊りで舞台狭しと表現していた。圧倒されるような迫力で、出演者と観客の間に一体感が生まれた。
 最後に「いのちの歌」を全員で合唱。「生まれてきたこと 育ててもらえたこと 出会ったこと 笑ったこと そのすべてにありがとう この命にありがう」。歌詞にそれぞれの親への感謝の思いが感じられ、涙があふれた。
 上演に携わった人から、子どもたちは練習を重ねるうちに、当たり前の毎日が幸せなことであると思うようになった、と聞いた。感動に感謝し、子どもたちの未来が平和でありますようにと願った。
    (2019.08.12 中国新聞「広場」掲載)


畑仕事の親睦

2019-08-14 21:44:16 | 岩国エッセイサロンより

2019年8月11日 (日)

   岩国市   会 員   片山清勝

 100坪ほどの畑で月1回、十数人の仲間と汗を流す。朝から昼まで、運動不足の私もくわや鎌を手にする。草抜きでしゃがみ、自然と腰を鍛えている。
 予定の作業が終わると昼食だ。手作りの食卓に手作りの差し入れ弁当が並ぶ。皆、思い思いにいただく。きれいになった畑を眺めながらのにぎり飯や家庭料理は格別である。
 全員が高齢なので、食卓を囲んでの話題は政治、経済、地域、ボランティアと幅広く深い。また、各人の経歴も多種多様だから、この年になっても教えられることが多い。驚き学ぶ有意義な時間になっている。
 話題はプロ野球に及ぶと、熱を帯びる。広島東洋カープのファンばかりなので、リーグ4連覇と日本一について戮持論を展開する。カープ2軍の由宇球場まで数㌔の所にある畑だから、チームへの親しみはどこにも負けない。試合の日は多くの車を見る。
 植えたりまいたりすれば次は収穫、これは何度経験してもいいものだ。畑に通い続ける大きな理由だ。
 土中の成果は掘り出すまで分からない。大きければ「ほおー」と歓声が湧く。時には悩ましいポーズの大根やニンジンの形が笑いを誘う。取れたてを参加者で分けあう。家内はいつも野菜を待っている。
 はびこる草を抜くのに時間かかかる。手抜きはできない。野菜もそれぞれの根元に日が当たるようになると、喜ぶように見える。
 こんな親睦がまもなく10年に。
      (2019.08.11 中国新聞セレクト「ひといき」掲載)

 

 


ハプニング

2019-08-14 21:42:34 | 岩国エッセイサロンより

2019年8月 9日 (金)

   岩国市  会 員   森重 和枝


 おいの結婚式に姫路まで行った。帰りの新幹線の中でのことだ。途中から、若い外国人男女10人が乗ってきた。その中でも年若くみえる女性3人は、通路を行ったり来たりしていた。
 そのうち、3人とめいの子で中2と高1の姉妹で会話が始まった。姉は英語が得意で、今日の披露宴でも伯父へのお祝いメッセージを英語で書いていた。広島までの短い聞だったが、にぎやかな笑い声が聞こえ、楽しそうだった。
 若い人たちのチョットした国際交流。このハプニングに疲れ気味だった気持ちもすっかり明るくなれた。めいの子に工―ル!
 (2018.08.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載


父の話重なる赤い絵

2019-08-14 21:41:01 | 岩国エッセイサロンより

 

   岩国市   会 員   片山清勝

 5日付広場欄で広島の高校生が描いた原爆の絵に関する投稿を読み、入市被爆した父の話を思い出した。
 父は原爆が投下された日、業務連絡で広島へ自転車で赴いた。惨状を目にしたはずだが、聞いても語らなかった。ただ一つ「防火用水に人も犬も頭から漬かって亡くなっていた」と話してくれた。その話はモノクロで記憶していた。
 ある年、原爆展で「水を求めて」という一枚の絵の前で足が止まった。父の話と同じ光景だった。違うのは熱線で焼けた体が赤く描かれていたこと。その赤は今もまぷたに残っている。
 投稿によると、生徒は証言者の記憶に最も近い絵に表現しようと努めているという。筆者は「あの日の被爆者の様子を写した写真はわずかだ。生徒たちの描いた絵は限りなく写真に近い貴重な記録となるに違いない」と述べている。
 被爆者の語り部の活動と絵画による被爆の悲惨さを伝える活動が携え合い、核兵器禁止運動の糧となることを心から願う。
     (2019.08.09 中国新聞「広場」掲載)


アイスキャンディ

2019-08-14 21:39:26 | 岩国エッセイサロンより

2019年8月 2日 (金)

    岩国市  会 員   吉岡 賢一


 瀬戸の夕凪と言われる暑い夏の夕暮れは、あのアイスキャンディの素朴な昧を思い出す。
 市場で競り落とした新鮮野菜を積み込んだリヤカーを引き、1里半の道のりをものともせず行商に出かける母ちゃん。朝は早いし帰りは遅い。姉たちが夕飯の支度を始める頃、小学3年のボクはそっと家を出て、母ちゃんの帰る道を走る。空のリヤカーを引き受け、今日一日の話をする。
 小さな親孝行のご褒美は、水色の氷に割り箸を突っ込んだアイスキャンディ。貧乏な世の中で「小さな贅沢と束の間の母ちゃん独占」。遠い昔の懐かしい味である。
  (2019.08.02 毎日新聞「はがき随筆」掲載)


夕立ちはどこへ

2019-08-14 21:38:03 | 岩国エッセイサロンより

2019年7月31日 (水)

     岩国市  会 員   角 智之


 子供の頃、夏休みになると毎日のように川遊びに興じた。
 宿題もそこそこにいとこたちと遊んでいると、急に空か真っ暗になり、大粒の雨が降り始めた。川の近くで大工をしている叔父の家へ避難すると、激しい雷が鳴り始めた。
 帰りたくても怖くて動けない私を見て、叔父は長めのカンナくずでヘソの周りを数回巻いて腰のあたりで強く結び、「ヨシ、これでせわあない……」と。
 雨も小降りになって、一目散に家まで走ったのを覚えている。異常気象で夕立も来なくなったのだろうか。真夏が近づくにつれ、あの頃を思い出す。
   (2019.07.31 毎日新聞「はがき随筆」掲載)


大きくなあ-れ

2019-08-14 21:33:33 | 岩国エッセイサロンより

2019年7月30日 (火)

   岩国市  会 員   横山 恵子


 「えっ、この桃作ったの?ワー感動した」と友に言われ、心の中で「ヤッター」と叫ぶ。桃の木を植えて十数年だが、満足になったのは数回のみ。今年こそはと思ったが、またもアブラムシの被害。思い切ってそれらの枝を処分した。
 残りにニンニクなどを入れ煮出した木酢液を朝夕吹き付ける。少しずつ大きくなり台所用の水切りネットをかぶせたら、太陽の光を浴び、赤く色づき始めた。
 傷やアリなどの被害もあったが「瑞々しくておいしい」との言葉に苦労も吹き飛ぶ。収穫40個あまり。動画も撮った。かくして「桃狂騒曲」は終わる。 
 (2019.07.30 毎日新聞「はがき随筆」掲載)