はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ジェスチャー

2019-04-04 17:58:29 | はがき随筆

 勉強嫌いな私は学生時代、試験前には一夜漬けで丸暗記した(特に英語は)。点数はとれたが、実力試験はさんざんだった。50年以上たった今でも「明日は試験なのに勉強してない」と夢にうなされることがある。

 主人がスイスの高原列車に乗りたいといいだした。現地は何語なのだろう。エジプトに行ったとき朝夕の温度差に困り、毛布の端をつまんで指を1本たて、1枚では寒いブリブル、2.3枚ほしい、と手を合わせたら通じた。娘たちが「お母さんはどこに放り出しても生きていけるネ」と笑うが、なぜか通じるんです。旅行の出発は未定だ。

 鹿児島県阿久根市 的場豊子(73) 2019/4/4 毎日新聞鹿児島版掲載


小さな畑

2019-04-04 17:18:01 | はがき随筆

 中学校の校庭を見下ろす場所に小さな畑を残して義父が突然他界してしまった。

 90歳になってもここに通っていた。畑の横に物置があって、使いかけの肥料や様々な農機具が私たち夫婦に「さあどうぞ」と言わんばかりだ。その勢いに圧倒され、夫も私もしばらく手をかけずにいた。草が生え、枯れ葉が重なるまで眺めていたのは、死を受け入れるために必要な時間だったのかもしれない。

 今では夫が畝をつくり、私が本を見ながら種をまく。3回目の春だ。風が竹林を通って畑に吹く時、義父が喜んでくれている様な気がする。

 宮崎県日南市 小野小百合(60) 2019/4/4 毎日新聞鹿児島版掲載


2019-04-04 17:09:49 | はがき随筆

 「武士は食わねど高ようじ」なんて言うがうそだ。私の成長期は戦争中で衣食が欠乏し、毎日ひもじい思いをしたものだ。

 「欲しがりません勝つまでは」とか「ぜいたくは敵だ」などの標語があったけど「ぜいたくはすてきだ」とやゆしたものだ。「衣食足りて礼節を知る」。孔子の方が人間味がある。

 人に聞いた話だが、昔はおかずのことを菜と言ったそうだ。酒のつまみは「酒菜」(肴)と言う。野菜のおかずは「ま」を冠して「ま菜」。それを切り刻む時の板が「まな板」と言うのだそうだ。子どもの頃は葉野菜を菜っ葉と言っていたなあ。

 熊本市東区 竹本伸二(90) 2019/4/4 毎日新聞鹿児島版掲載


朝の声かけ

2019-04-04 16:58:34 | はがき随筆

 今朝も孫の登校に気づいて「行ってらっしゃーい」と見送る。孫の成長はうれしいものの、成長の変化にはついていけない祖母である。今年はこの1人が卒業なので、朝の声かけは半減するわけだ。我が家の今の横を通るので気配を察して声をかけるのだが、時々は朝寝坊をして間に合わない日もある。特に冬は省エネのための朝寝坊もするので希少価値がある。またちょうど居合わせて下校時の「お帰りなさい」を言えた日は得をした気分になる。それに明るく返してくれるのが何よりうれしい。声をかけられる距離にいる幸せを思う日々である。

 鹿児島県霧島市 口町円子(79) 2019/4/4 毎日新聞鹿児島版掲載


お助けマン

2019-04-04 16:50:33 | はがき随筆

 新卒の私は小学3年生の担任になった。腕白エイジ元気一杯の子どもたちとやる気満々の私。クラスは活気に満ちていた。

 興味関心の旺盛な彼らは質問も多彩だった。大体の事には対応できたが、理系の質問に「ウーン」となることもあった。そんな時N君が、「僕が」と穏やかなゆっくり口調で分かりやすく答えてくれた。リニアモーターカーの仕組みを説明してくれたのは今も鮮烈に覚えている。

 その彼と昨年会った。やはり理系へ進み自動車関係の研究をしている。さすがに風貌は変わったが口調は昔と同じだった。きっと職場でもお助けマンだ。

 宮崎市 堀柾子(73) 2019/4/4 毎日新聞鹿児島版掲載


デジタル新聞

2019-04-04 16:27:52 | はがき随筆

 3月18日付本紙にデジタル毎日が宅配購読者は無料との特集記事があった。早速タブレットに毎日IDを登録することに。せっかくだからワンコイン奮発してプレミアムプランを選んだものの、支払方法がカードを持っていないので困った。翌日ヨタヨタ歩行器を押してソフトバンクに行ってパスワードを登録し、めでたく毎日ビューアーのアプリが入った。夕食後くつろいで夕刊が読めて何よりうれしい。地域面も北海道版を見たりする。サンデー毎日やエコノミストも読める。新しい楽しみが増えて、数え年の卒寿に贈り物をいただいた気分である。

 熊本市中央区 増永陽(88) 2019/4/4 毎日


グローバル化

2019-04-04 16:09:37 | はがき随筆

 小学校5.6年生に英語の授業が始まるとテレビで流れていた。

 先日、水前寺公園に出向いた。参道に入るなり「エッ、ここは日本?」と見まがうばかり。外国人の中の私。約50年前、子どもを連れて出水神社にお参りした後、コイに餌やりしていた静かで厳かな公園はいずこへ。しかし、経済効果を考えたらありがたいことと思い直した。「アーユーフロム」「オーサンキュー」。笑顔で終わる。小学生に英語もありだとつくづく思った。80歳とともに新元号を迎える。グローバル化に後れをとらぬよう頭脳を鍛えたい。

 熊本市東区 川嶋孝子(80) 2019/4/4 毎日新聞鹿児島版掲載