はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

忘れ難きは

2019-04-14 20:50:30 | 岩国エッセイサロンより

2019年4月13日 (土)

  岩国市  会 員   横山 恵子


 「花は咲く」の曲が流れると山懐に抱かれた古里を思う。9人家族だったが、父の転勤で私たちは岩国へ。その後、次々と祖父母たちを見送った。そして10年間、1人で家を守っていたおじも力尽きた。
 昨年、雪の降る前にと、いとこたちと墓参りし、おじたちをしのびつつ、昔話をした。家の裏に行くとたわわに実ったユズ。あるじなくともと思うと切なくなった。
 大豆を石臼でつき、作った豆腐、走り回ったレンゲ畑。思い出は、ぜーんぶこの胸に。帰る度、元気をもらった。あり難きかな古里は。
   (2019.04.13 毎日新聞「はがき随筆」掲載)