はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ツワブキの花

2018-12-28 22:22:06 | はがき随筆
 11月中旬の庭にツワブキの花が咲き誇っている。最初は2株ほど植えたのが増え続け、今では始末に困るほどだ。ざっと50株ほどが花を掲げて咲いている。葉も花も元気いっぱいという風情だ。ミツバチやアブなどが来て蜜を吸っている。一点の曇りもない明るさと温かさを感じる。花言葉は「謙譲」「困難に負けない」とある。
 まだこんなに増えていない庭で「こん花があたいは好っじゃがを」と母が言ったことがあった。戦争未亡人となって、ひたすらに働き抜いた母の強さと、いつも人を立てて控えめだった母をしのぶ花である。
 鹿児島県霧島市 秋峯いくよ(78) 2018/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

ウオーキング

2018-12-28 22:13:35 | はがき随筆
 文化の日、時間を作り秋祭りに行った。目的はウオーキング。今は、解散したフラダンスの仲間とその友達との参加だ。
 受付に着き、1年に1度の再会を喜び合う。体操して、注意などの説明を受け開始を待つ。
 市役所を出発し蔵元橋から川沿いに歩いた。秋桜が咲きそろい沿道に秋の風情を添えていた。川面は日差しを受けて輝き静かだ。5㌔のコースを喋りと笑いでゴールに着いた。
 着順にお楽しみ抽選を引き、2等の野沢菜の漬け物が当たる。お米、柿と友達も手にしてる。来年もねと約束。穏やかな秋日和の快い日に感謝の念。
 宮崎県串間市 武田ゆきえ(64) 2018/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

人間の値打ち

2018-12-28 22:03:34 | はがき随筆
 ある寿司店の箸袋に「おごるなよ いばるなよ それで人間の値打ちがわかる」という文章が横書きしてあった。そうだよな。人前でみえを張ったりおごったりするのは確かに見苦しいものだと感銘したものだ。
 私の職業は教師だったが、現役中も退職後も慎ましい生活をしてきたつもりで、周囲の人に対しておごったり威張ったりするような行為をとったことはないと思うが、その値打ちを評価するのは他人ではなかろうか。
 若かったころは仕事に熱中する面があり、家庭のことは家内に任せっきりだったので、苦労かけたなあと反省している。
 熊本市東区 竹本伸二(90) 2018/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

子猫が

2018-12-28 21:51:13 | はがき随筆
 早朝5時、いつものように玄関横のポストに新聞を取りに行く。ところが、待っていたかのように「ニャー」と子猫が泣きながらすり寄ってくる。びっくり。生後1~2ヶ月だろうか。小さくて、とても人なれしている。どうしたものか戸惑う。あまりに「ニャーニャー」泣くので牛乳をついでやると、ペロペロとたいらげた。おなかがすいていたのだ。次に煮魚の身をご飯にまぶして食べさせた。
 以来、1週間たっても飼い主が現れない。もうペットは飼わないと決めていたのに、ついにキャットフードを買いに行った。
 鹿児島県志布志市 一木法明(83) 2018/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

なにがおかしい?

2018-12-28 21:45:36 | はがき随筆
 友人の着ていたTシャツの色が素敵だったので、ごく自然に褒めたつもりだった。「きれいな藤色ね~」と。
 そのとき、周りにいた若い仲間たちはドッと吹き出した。趣味で通っているダンススタジオ内でのことだ。なんで笑われたのか理解できなかった。キョトンとしていると「ラベンダーですよ」と教えてもらった。
 そうか、いまどきの人は藤の花の色なんて使わないんだ。世代の違いをつくづく感じた。
 言葉も世につれれて変化するのはわかる。とすると小豆色とか山吹色なんてのも時代遅れで忘れ去られていくのだろうか。
 宮崎市 藤田悦子(70) 2018/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

方言はいいな

2018-12-28 21:38:28 | はがき随筆
 先日のはがき随筆、鹿児島の方の「クッサレ イオ」を読み、何とも心がほっこりした。祖母の懐かしい顔を思いだした。熊本に来て五十余年、鹿児島弁健在なりとうれしい。
 夫いわく、最初はまったく分からなかったと。特に祖母の言うことは? だったらしい。鹿児島弁には優しさがある。とりわけ男性が話しているとそう思う。看護学校で、方言を直しなさいと言われ、同郷の友に変な敬語を使った。
 あれから随分時間が流れたが、やはり方言はいいなと実感した。鹿児島弁は独特である。幼い日々が懐かしくよみがえる。
 熊本県八代市 鍬本恵子(73) 2018/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

JRと終活

2018-12-28 21:30:28 | はがき随筆
 JR九州に自由時間ネットパスという3日間九州管内乗り放題のありがたいシステムがある。年金族にも手が届く。時刻表を手にコースを探り、細かい数字を追う。秋深まる中、「海幸山幸」日南線をメインにいざ挑戦。九大線、日豊線、唐津線、長崎線、鹿児島線と列車にゆられる。ローカル松浦鉄道のガタゴトにも2時間半。気ままな一人旅でもいたって楽しい。車窓の緑やもの静かな海原や、ビルの谷間を抜け走る快感と、すごし人生の時間をしのびつつ老体をいたわる。博多の屋台のラーメンと一杯。じいちゃんがんばるねといたわられ、感謝!
 鹿児島県姶良市 宇都晃一(86) 2018/12/13 毎日新聞鹿児島版掲載

秋に咲いた桜

2018-12-28 21:22:30 | はがき随筆
 「西都原に行ったらコスモス。向日葵、桜も咲いてた」と友からメール。私も今秋、義兄の納骨の折、えびので桜を見た。
 1年前、同じ菩提寺に義母の法事で兄弟夫婦がそろった。義兄は病気を抱えていたが、福岡からいつものダンディーな姿でやつて来、皆一安心した。それから病状が進み、初夏に見舞った時は「来年の桜が見られるかどうか」と言われたと。それなのに9月に逝ってしまった。
 そして、コスモスが揺れるえびので私は桜の花を見た。だが、申し訳なさげに遠慮がちに咲いているように思えた。やっぱり桜は春がいい。春が似合う。
 宮崎市 堀柾子(73) 2018/12812 毎日新聞鹿児島版掲載

今年の漢字

2018-12-28 21:14:17 | はがき随筆
 「改竄」の意義を解説した解説記事がありました。「ネズミが穴に隠れるように難を逃れたり人を欺いたり不正を施したりすること」。その例に国政の公文書の書き換え、障害者雇用の水増し、自動車・鉄鋼・免震装置の検査ごまかし、大学入試の得点操作……。
 戦後政治でこれほど国民をばかにした答弁の記憶はない。森友、加計学園に至っては開いた口が塞がらないほどの政治家の横暴と思う。今年の漢字の一字は「竄」が一番ふさわしく、他にはあるまいと加えてあった。
 私も的確な一字と思いました。年末の一字に興味津々です。 
 熊本市中央区 田尻五助(97) 2018/12/11 毎日新聞鹿児島版掲載

流転の海

2018-12-28 17:58:08 | はがき随筆
 宮本輝といえば私には「錦繡」の都会的な作品のイメージ。だが「流転の海」は真逆だ。昭和22年、松阪熊吾という男が50歳で初めて子を持ったところから物語は始まる。ひ弱な息子が成人するまでは生き抜くと誓った熱血漢の後半生は、息子である著者の自伝となっている。
 5部で完結の予定が7部へ、更に9部まで続くという。昨年末文庫3冊を買い、次に2冊、7部まで延びて更に2冊。当時文庫化はここまでだった。
 「第9部完結」のポスターを先日目にした。文庫も8部が売り場にあった。9部の文庫化を一日も早くと待っている。
 鹿児島市 本山るみ子(66) 2018/12/9 毎日新聞鹿児島版掲載

かかと

2018-12-28 17:51:12 | はがき随筆
 あみだくじのようだなあ。かかとの白い筋をみながら思った。秋が深まる前から既にかかとはカサカサの状態で、ふくらはぎでさえも潤いを無くして粉っぽかった。夫が「クリームを塗って靴下を履いて寝よ」という。結果少しはましになったが。問題は小寒から雨水にかけて。筋のひび割れは深く裂けて疼く。そうなると風呂あがりのクリームも効果はない。ただただ春の女神の登場を待つのみだ。
 89歳だった母が入院した折は「こんな綺麗な足は見たことがない」とほめられていた。なのに……私はちょっと哀しい。つるんとしていたっけなあ。
 宮崎県延岡市 佐藤桂子(70) 2018/12/8 毎日新聞鹿児島版掲載

天草の特攻隊

2018-12-28 17:42:20 | はがき随筆
 
「天草の佐伊津に海軍特攻基地があったのよ」とMさんがポツリと言った。彼女は父上が戦死されたので神戸から天草に帰郷した。「伯父が村長だったから着物を着て家に手伝いに来てと頼まれて、戦時下に小振袖を着ることがうれしかった。うすうす特攻隊員のための宴会だとは知っていたけれど。隊員たちがどんな気持ちだったか、私何もわかっていなかったのよね」
 ここからの出撃は3回16名、訓練中の事故により3名、計19柱の若い命が散った。終戦よりほんの少し前のことだった。私は長年熊本に住みながらその事実を今まで全く知らなかった。
 熊本市中央区 増永陽(83) 2018/1287 毎日新聞鹿児島版掲載