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はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

宝もの

2016-05-03 18:30:18 | はがき随筆
 日曜日の昼食時は「なんでも鑑定団」を見る。我が家は骨董品に縁がなく、見た目より高値や、思ったより安値の鑑定に一喜一憂して楽しんでいる。
 将来、鑑定される物を見つけて、子や孫に残せればと思う時分に、2月26日の当新聞の「余録」の末尾に2月25日との記載に気付く。この欄の日付違いはまれであり、わが家の宝物にしようと妻に問う。妻は「姉弟、子や孫という宝がある」と壁や棚に飾ってある写真を見る。
 そうだな、お前としう宝もあるとつぶやいたのが聞こえたのか、振り向いた妻はVサインをした。
  鹿児島市 田中健一郎 2016/5/3 毎日新聞鹿児島版掲載

70歳スタート

2016-05-03 18:20:37 | はがき随筆
 元気印の私。70歳代スタートとおもいきや、いつものように奥歯で梅干しの種を「カリッ」。歯が砕けた。治療不能で、3本の入歯となった。自分の歯と比べて食べ物が詰まり、不便このうえない。インプラントにすることにした。他にも何本かあり、保険適用外で、こつこつためた年金はガラッと減った。ただ今、治療中。気になっていた左足の「下肢静脈瘤」も切除した方がいいらしい。これは保険適用で70歳バンザイ。小額ですんだ。ついでに受けた血液検査はすべてグー。65歳以上の高齢者に多い交通事故に気をつけて、こつこつ年金をためよう。
  阿久根市 的場豊子 2016/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載

孫台風

2016-05-03 06:47:43 | はがき随筆
 「ばあちゃんはどこに行ってたの~」と、お気に入りのミニカー持参でやって来た。彼は4歳。隣に住む息子夫婦の次男坊。疲れ知らずだ。
 「タイヨーに行ったの?」「だいわに行ったの?」とたたみかける。「ごめん、ごめん、Tクンが待っていると思って急いで帰って来たのよ」とオーバー気味にハグする。彼は満面の笑みで大照れ。
 頻繁に、台風のごとく我が家にやって来る。同じ遊びをくり返し相手させられる。留守にせず、それにこたえてほしいのだ。
 笑いと元気をもらいつつ、孫台風が去ったあとへたりこむ。
  垂水市 竹之内政子 2016/5/1 毎日新聞鹿児島版掲載

二人三脚

2016-05-03 06:41:21 | はがき随筆
 NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」が面白い。風来坊の叔父さんのせいで姉妹は町内運動会に出場する。二人三脚で3位になり、米5升を獲得する。
 私も新入社員で業界の運動会に二人三脚で出場した。「田中君、ヨーイで飛び出そう」とM課長がささやいた。いち早く走り出した私たちを見て、慌てた何組かが次々ところんだので、難なく1位でゴールインできた。
 昔はドラマのような頼りないおじさんがいたものだ。子供たちに人気があり、おおらかな時代だった。今ではそんなおじさんの存在すら許されない厳しい社会になり、寂しい気がする。
  鹿児島市 田中健一郎 2016/4/30 毎日新聞鹿児島版掲載

夢のような話

2016-05-03 06:26:40 | はがき随筆
 作家夏樹静子さんの突然の訃報にヒッタマガッた。人生は出会いだと言われるが、会員であった同好会に夏樹静子さんを講師に招くとの話。この話を聞いたときは、冗談だろうと思っていた。「文学講演」と先生を交えての会食と雑談に大作家と直接触れ合うことが夢のようだった。「心身相関という言葉があるように、人の心の中に、気が付かないもう1人の自分がいる。それこそ、心のミステリーである」と心に残る印象的な話をされた。出会いに感謝と、心の中で「ヨカトコイ、イッキャンセー」と一言声をかけた。
  さつま町 小向井一成 2016/4/29 毎日新聞鹿児島版掲載