はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

心に刻む

2014-08-13 21:53:56 | はがき随筆
 早いもので父の十三回忌も終わり、空を見上げる。ギラギラ太陽、真っ青な空。セミも元気いっぱい鳴いている。ああ、法統に夏が来たんだな。夏は、平和を心に刻む季節――。
 昨年の沖縄戦没者追悼式で、小1の男子が朗読した「へいわってすてきだね」という詩が、絵本になったという新聞記事を読んで、うれしくなった。
 新聞に掲載されたその詩に、私も感銘を受け、教室で子供たちと一緒に読んだ。「へいわってすてきだね」。今年も子供たちと一緒に教室で読もう。二度と戦争を起こさないように。
  出水市 山岡淳子 2014/8/6 毎日新聞鹿児島版掲載

晩のおかず

2014-08-13 21:31:32 | はがき随筆
40年前の夏の午後、私は内之浦の友人宅へ遊びに行った。
 奥さんが夕飯支度をしていたが「父ちゃん、晩のおかずが無か」と言うと、「分かった」と彼は銛を握ると目前の岩場をヒョイヒョイと渡っていき、100㍍先から海に飛び込んだ。
 30分後、海面から顔を出した彼の銛には約80㌢のブダイが突き刺さっていた。驚いて「何で短時間でそんな獲物が捕れるんだ」と聞くと「小さい頃からこの海を我が庭んごっして育ってきた。追い込んだ魚が、どのがまに逃げるかお見通しよ」。
 私は言葉にならず、ただ「うーん」とうなるだけであった。
  日置市 高橋宏明 2014/8/5 毎日新聞鹿児島版掲載 

他人に頼らない

2014-08-13 16:07:47 | はがき随筆
 本欄7月11日の「この子らの未来に」を読んで感動しました。この日本の国は国民が守らなければならない。正にその通りだと思いました。
 ジャイアンにおもちゃを取られても、のび太は友だちに頼ってはいけないのです。思い切って堂々と「返してくれ」と言うべきです。真正面からぶつかっていけば、ジャイアンもびっくりして返してくれるでしょう。
 もし、それでも駄目だったら、ジャイアンの家の前に座り込めば良い。そうすれば、さすがのジャイアンも返してくれるでしょう。そうです。この世にドラえもんはいないのです。
  鹿児島市 野幸祐 2014/8/4 毎日新聞鹿児島版掲載

ある記憶より

2014-08-13 15:49:18 | はがき随筆
 私は、台湾で育った。その時、子供だけで大勢、防空壕にいた。数人がある子供の顔に光を当て執拗にいやがらせをした。
 その子は、日本人の中によく溶け込んでいた台湾人だった。下級生の私は、それにショックを受け、声も出せなかった。
 日本の敗戦で、何が起きても不思議でない情勢が来た。蒋介石の警察は歓呼して迎えられ、日本の警察は瞬時に逃散した。
 それでも私たちは、これといった仕返しを受けなかった。日本は善政をした、と人は言う。本当だろうか。日本語を使わせた一事からも、彼らの文化を抑圧したことが読み取れる。
  出水市 松尾繁 2014/8/3 毎日新聞鹿児島版掲載

私は地蔵堂を

2014-08-13 15:42:45 | はがき随筆
 「最北のしぶし」(6月24日付本紙はがき随筆)を読んだ。私も中2の時調べた。母の里と近辺に地蔵堂という聞き慣れない姓が4軒ばかりあった。当時の町内や学校でも聞いたことがなかった。地図帳を広げ、北海道から南下して調べたら、恣意が他県の日本海側にあった。その時、どうしてこんな所に同名がと思った。その地名と同じ姓があったことに独りぼっちじゃないという幼い考え方のままだった。新潟から船に乗ってたどり着き、住み着いたのだろうか。お地蔵さん信仰者がいただいた姓だろうかと未解決のままだ。
  鹿児島市 東郷久子 2014/8/2 毎日新聞鹿児島版掲載

白映え

2014-08-13 15:36:14 | はがき随筆
 母の命日、白映え、緑の中で来し方を振り返る。
五十数年昔、母は鹿屋に住むと決めて実家の墓地を人に譲ることにした。春休みの帰省中、母の代理で鹿児島市に出向いた。金額を尋ねられて驚いた。墓地を売るなどと、母の念頭にないことだった。母の伝言を告げた。「さし上げます。どうぞお使いください」
 「生まれた、生きた、死んだ」と墓碑に刻んだのは誰だったろう。潔い。
 そんなささやかな自己主張さえもせず、名前と没年と年齢だけを刻んでもらい眠っている母もまた潔い。
  鹿屋市 伊地知咲子 2014/8/1 毎日新聞鹿児島版掲載

母の日

2014-08-13 15:26:52 | はがき随筆
 母が逝って10年。今年も変哲もない「母の日」が巡ってきた。節目と鵜も井、学生時代から温かく声をかけ激励してくださるハツキおばさんに一輪のカーネーションを送った。妻に話したら「良いことをしたね」と久しぶりに褒め言葉が返ってきた。その出来事は、父の日にハツキさんが息子さんと車で来訪され、「花はありがとう。いつもの花より長く咲いていた」と不自由な足で歩み寄り、チョコレートを届けてくださった。わずか一輪の花に対し、喜んでくださり真心は、母にも似た優しさがあった。いつまでもつつがなくと去りゆく車に胸奥で願った。
  出水市 宮路量温 2014/7/31 毎日新聞鹿児島版掲載

トマト作り対策

2014-08-13 15:13:13 | はがき随筆


 近ごろ、トマト作りは面倒になった。昔は植えて支柱を立てるだけだったが、近ごろは植えて、上にビニールを屋根のようにかぶせる。これで腐りにくくなった。ところが、外敵が現れた。それはカラスだ。
 そのため、ツル対策用の網を周りに張り巡らせた。これでひと安心と思っていたら、また外敵ムジナが現れた。編み目の間から入って熟したトマトだけを食い荒らしている。そこでもっと小さい網を土に半分埋めて張った。
 この三つの対策でどにか食べられる。自給自足も腹が立って面倒だが……うまい!
  出水市 畠中大喜 2014/7/30 毎日新聞鹿児島版掲載

がんの治療中

2014-08-13 15:06:59 | はがき随筆
 「検査の結果はほとんで問題ありませんが、ただPSAの数値が高いのでここ数ヶ月のうちに泌尿器科で再度検査してください
」。1月7日に受けた人間ドックの検査説明であった。
 3月中旬、泌尿器科に紹介状を持参して検査を受け、やがて、2泊3日の入院がん検査をうけた。数日後、夫婦同伴で来院するようにとの連絡があり、行って驚いた。がんの細胞が3ヶ所から摘出されたとのこと。
 治療の方法の説明があった。私は度の治療も受けずに、是までの人生の保養を兼ねて、指宿市のホテルに泊まり、粒子線がん治療を受けることにした。
  志布志市 一木法明 2014/7/10 毎日新聞鹿児島版掲載

走れる喜び

2014-08-13 14:55:37 | はがき随筆
 昨年夏、不覚にも転んで頭を強打した。医師の診断は脳挫傷。止血しない時は手術と告げられ、頭が更に重くなった。人生を左右する10月の検査では――。出血は吸収されていて心配ない、とのこと。助かった。
 その間、頭のふらつきや目まいで好きな走り屋飲酒ができず、つまらない古語を過ごしていた。ランニングの再開は3月。ブランクを取り戻すために無理したのか左膝を痛め、治療の春になってしまい悔しかった。
 5月、6月の練習はうまくいき、むんのマスターズ陸上選手権への申し込みができた。短距離で走れる喜びを爆発させたい。
  出水市 清田文雄 毎日新聞はがき随筆欄掲載