家にある成瀬監督のビデオは20本くらいでしょうか。
機械が変わったりするたびに見られなくなるものが増え
重要な作品でも抜けてしまったものがあります。
○
小津のものはNHKが現存するものを徹底して放映した
時期がありましたので、それは欠けずにある筈です。
あと溝口の重要な作品はたぶん大丈夫。
黒澤のビデオは手元には、ほぼありませんね。
かなり強烈に焼きついちゃってるし、ふと見たくなる
感じではないし、なぜか無くても構いません。
ちなみに好きな黒澤映画は、平凡ではありますが
『七人の侍』『羅生門』『生きる』がベスト3で 他には
『酔いどれ天使』『醜聞』『白痴』『どん底』でしょうか。
(全ての作品を見ていますが改めて見てもこれくらいかな)
線が太いので何度見ても同じなのです。
成瀬は見るたびに新しい発見がある気がします。
名人の落語は何度聞いても良いですね、・・同じようです。
○
その成瀬監督の作品で『あらくれ』は未見でした。
・・というか20代前半に見ていたかもしれません。
まったく記憶がないのですがラストが気になるのですね。
見たかなあ?
見ていたとしても分からなかったのですから実質未見。
とまあ、前置きが長くなりました。
『あらくれ』はとても良い映画でした。
私としては、成瀬のベスト5・・・、ベスト10なら必ず!
何より光の加減が抜群で、大正時代はこんなイメージだった
という香りがするのです。
スタッフが超一流だった筈ですね。
(以下、きっとネタバレになりますから、興味がおありで
しかし読みたくないという方はご注意ください)
従来、評論家や映画好きにはそんなに高い評価はなかった
作品のようです。
それは大間違い、『歌行燈』と並ぶ名作です!
もっとも、長い間、成瀬作品自体の評価が内容よりも低かった
ようで、評論家って連中がいかに井戸端会議的世界で仕事を
してきたか、よく分かります。
『あらくれ』は徳田秋声の著名な作品を昭和32年('57)に
映画化したものです。
当時監督は52歳、仕事ざかりですね。(私は8才・・無関係か)
前年には『流れる』を撮っています。
同じ年の映画に、今井正『米』木下恵介『喜びも悲しみも幾年月』
川島雄三『幕末太陽伝』などがあります。
小津は『東京暮色』黒澤が『どん底』という年で
溝口は前年に亡くなっています。
また主演の高峰秀子はその前後に'54『二十四の瞳』
'55『浮雲』'58『無法松の一生』などに出ています。
なんという名画ぞろい、芸の巾の広さ・・
○
成瀬の研究書など読んだことがないのに勝手な推測ですが
この映画は監督としては気が入っていたのではないでしょうか。
映画はひとりの女性がいかに強く生きたかを描くものです。
(少しずつ強くなります←男が頼りない)
どこか『カーネーション』と通じます。
いま見たら面白いと思われる方も多いのでは?
暗い映画にも作れる内容ながら、笑えたりもし
何よりバランスが良いので、品があります。
昭和30年代前半にはまだ強い女性を描くとヒットしづらい
ところがあったのかもしれません。
それも舞台が大正時代ですからね。
監督の気が入っている証拠にセット・カメラ・照明・・は勿論
それ以外に役者のすごいこと。
主演クラスのスターの何人かは省略します。
それ以外に東野英治郎、仲代達矢、志村喬、宮口精二、田中春男
坂本武、左卜全、中村是好、高堂國典、横山運平
中北千枝子、千石規子、丹阿彌谷津子、賀原夏子、沢村貞子
ほかにも大勢、この人、え~っと名前は・・
○
働いている場面の多い映画です。
昔の様子を動く絵で見られるというのは有り難いですね。
若い学校の先生などにもお勧めしたい。
大正デモクラシーの中、女性の社会進出が少しずつ認められ
そういう時代背景があるから強い女性も登場したのでしょう。
(もっとも室町でも江戸でも強い女性はおられました。
比較的弱かったのが明治時代)
もちろん大正時代ですから今のようには参りません。
そこを強く生きるのですから無理も生じますね。
現代の目から見れば、頑張ってはいるけれど、それってダメな男と
同じレベルになるだけのことであって、それだけでは・・
・・なんて思うのです。
その限界があるから、最後の大雨をゆく主人公も
行く手は決して明るいだけではない、今までと似たことが待っている
多難な様子を暗示する、微妙な、絶妙なシーンでした。
(また、雨の使い方が上手いんだ。
この映画では自立に関して使われています。)
○
一人の強~い女性とダメ~な男どもを描きながら暗くならず
品の良い出来あがりです。
映画では、町を行く行商の人たちが目立ちます。
ただの場面転換なのですが、その雰囲気がGOOD
きっとこんなところも成瀬マジックの秘密の一端が。
旗を飾った桶を頭に、団扇太鼓の飴屋さん
沢山の風鈴を運ぶ涼しげな風鈴屋
ラウ屋(煙管そうじです)
風琴を持ったオイチニの薬売り
金魚屋
イカケ屋
甘酒売り
などなど。
細かいところを上げればキリがありません。
はっきりとした「記号」をさりげなくちりばめて
話を進展させるところが(名人)なんですよね。
機械が変わったりするたびに見られなくなるものが増え
重要な作品でも抜けてしまったものがあります。
○
小津のものはNHKが現存するものを徹底して放映した
時期がありましたので、それは欠けずにある筈です。
あと溝口の重要な作品はたぶん大丈夫。
黒澤のビデオは手元には、ほぼありませんね。
かなり強烈に焼きついちゃってるし、ふと見たくなる
感じではないし、なぜか無くても構いません。
ちなみに好きな黒澤映画は、平凡ではありますが
『七人の侍』『羅生門』『生きる』がベスト3で 他には
『酔いどれ天使』『醜聞』『白痴』『どん底』でしょうか。
(全ての作品を見ていますが改めて見てもこれくらいかな)
線が太いので何度見ても同じなのです。
成瀬は見るたびに新しい発見がある気がします。
名人の落語は何度聞いても良いですね、・・同じようです。
○
その成瀬監督の作品で『あらくれ』は未見でした。
・・というか20代前半に見ていたかもしれません。
まったく記憶がないのですがラストが気になるのですね。
見たかなあ?
見ていたとしても分からなかったのですから実質未見。
とまあ、前置きが長くなりました。
『あらくれ』はとても良い映画でした。
私としては、成瀬のベスト5・・・、ベスト10なら必ず!
何より光の加減が抜群で、大正時代はこんなイメージだった
という香りがするのです。
スタッフが超一流だった筈ですね。
(以下、きっとネタバレになりますから、興味がおありで
しかし読みたくないという方はご注意ください)
従来、評論家や映画好きにはそんなに高い評価はなかった
作品のようです。
それは大間違い、『歌行燈』と並ぶ名作です!
もっとも、長い間、成瀬作品自体の評価が内容よりも低かった
ようで、評論家って連中がいかに井戸端会議的世界で仕事を
してきたか、よく分かります。
『あらくれ』は徳田秋声の著名な作品を昭和32年('57)に
映画化したものです。
当時監督は52歳、仕事ざかりですね。(私は8才・・無関係か)
前年には『流れる』を撮っています。
同じ年の映画に、今井正『米』木下恵介『喜びも悲しみも幾年月』
川島雄三『幕末太陽伝』などがあります。
小津は『東京暮色』黒澤が『どん底』という年で
溝口は前年に亡くなっています。
また主演の高峰秀子はその前後に'54『二十四の瞳』
'55『浮雲』'58『無法松の一生』などに出ています。
なんという名画ぞろい、芸の巾の広さ・・
○
成瀬の研究書など読んだことがないのに勝手な推測ですが
この映画は監督としては気が入っていたのではないでしょうか。
映画はひとりの女性がいかに強く生きたかを描くものです。
(少しずつ強くなります←男が頼りない)
どこか『カーネーション』と通じます。
いま見たら面白いと思われる方も多いのでは?
暗い映画にも作れる内容ながら、笑えたりもし
何よりバランスが良いので、品があります。
昭和30年代前半にはまだ強い女性を描くとヒットしづらい
ところがあったのかもしれません。
それも舞台が大正時代ですからね。
監督の気が入っている証拠にセット・カメラ・照明・・は勿論
それ以外に役者のすごいこと。
主演クラスのスターの何人かは省略します。
それ以外に東野英治郎、仲代達矢、志村喬、宮口精二、田中春男
坂本武、左卜全、中村是好、高堂國典、横山運平
中北千枝子、千石規子、丹阿彌谷津子、賀原夏子、沢村貞子
ほかにも大勢、この人、え~っと名前は・・
○
働いている場面の多い映画です。
昔の様子を動く絵で見られるというのは有り難いですね。
若い学校の先生などにもお勧めしたい。
大正デモクラシーの中、女性の社会進出が少しずつ認められ
そういう時代背景があるから強い女性も登場したのでしょう。
(もっとも室町でも江戸でも強い女性はおられました。
比較的弱かったのが明治時代)
もちろん大正時代ですから今のようには参りません。
そこを強く生きるのですから無理も生じますね。
現代の目から見れば、頑張ってはいるけれど、それってダメな男と
同じレベルになるだけのことであって、それだけでは・・
・・なんて思うのです。
その限界があるから、最後の大雨をゆく主人公も
行く手は決して明るいだけではない、今までと似たことが待っている
多難な様子を暗示する、微妙な、絶妙なシーンでした。
(また、雨の使い方が上手いんだ。
この映画では自立に関して使われています。)
○
一人の強~い女性とダメ~な男どもを描きながら暗くならず
品の良い出来あがりです。
映画では、町を行く行商の人たちが目立ちます。
ただの場面転換なのですが、その雰囲気がGOOD
きっとこんなところも成瀬マジックの秘密の一端が。
旗を飾った桶を頭に、団扇太鼓の飴屋さん
沢山の風鈴を運ぶ涼しげな風鈴屋
ラウ屋(煙管そうじです)
風琴を持ったオイチニの薬売り
金魚屋
イカケ屋
甘酒売り
などなど。
細かいところを上げればキリがありません。
はっきりとした「記号」をさりげなくちりばめて
話を進展させるところが(名人)なんですよね。
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