語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】マザー・グース「だれがこまどり ころしたの?」

2015年06月08日 | 詩歌
 だれがこまどり ころしたの?
 わたし とすずめがいいました
 わたしのゆみやで
 わたしがころした

 だれがこまどり しぬのをみたの?
 わたし とはえがいいました
 わたしがこのめで
 しぬのをみた

 だれがそのちを うけたのか?
 わたし とさかながいいました
 ちいさなおさらで
 わたしがうけた

 だれがきょうかたびらを つくるのさ?
 わたし とかぶとむしがいいました
 はりといととで
 わたしがつくる

 だれがおはかを ほるだろう?
 わたし とふくろうがいいました
 すきとシャベルで
 わたしがほろう

 だれがぼくしに なるのかね?
 わたし とからすがいいました
 せいしょをもってる
 わたしがなろう

 だれがおつきを してくれる?
 わたし とひばりがいいました
 まっくらやみでなかったら
 わたしがおつきに なりましょう

 だれがたいまつ もつのかな?
 わたし とべにすずめがいいました
 おやすいごようだ
 わたしがもとう

 だれがおくやみ うけるのか?
 わたし とはとがいいました
 あいゆえふかい このなげき
 わたしがおくやみ うけましょう

 だれがおかんを はこぶだろう?
 わたし ととんびがいいました
 もしもよみちでないのなら
 わたしがおかんを はこびます

 だれがおおいを ささげもつ?
 ぼくら といったはみそさざい
 ふうふふたりで
 もちましょう

 だれがさんびか うたうのか?
 わたし とつぐみがいいました
 こえだのうえから いいました
 わたしがさんびか うたいます

 だれがかねを つくのかね?
 わたし とおうしがいいました
 なぜならわたしは ちからもち
 わたしがかねを ついてやる

 かわいそうな こまどりのため
 なりわたるかねを きいたとき
 そらのことりは いちわのこらず
 ためいきついて すすりないた

 "Who killed Cock Robin?" "I," said the Sparrow,
 "With my bow and arrow, I killed Cock Robin."

 "Who saw him die?" "I," said the Fly,
 "With my little eye, I saw him die."

 "Who caught his blood?" "I," said the Fish,
 "With my little dish, I caught his blood."

 "Who'll make the shroud?" "I," said the Beetle,
 "With my thread and needle, I'll make the shroud."

 "Who'll dig his grave?" "I," said the Owl,
 "With my pick and shovel, I'll dig his grave."

 "Who'll be the parson?" "I," said the Rook,
 "With my little book, I'll be the parson."

 "Who'll be the clerk?" "I," said the Lark,
 "If it's not in the dark, I'll be the clerk."

 "Who'll carry the link?" "I," said the Linnet,
 "I'll fetch it in a minute, I'll carry the link."

 "Who'll be chief mourner?" "I," said the Dove,
 "I mourn for my love, I'll be chief mourner."

 "Who'll carry the coffin?" "I," said the Kite,
 "If it's not through the night, I'll carry the coffin."

 "Who'll bear the pall? "We," said the Wren,
 "Both the cock and the hen, we'll bear the pall."

 "Who'll sing a psalm?" "I," said the Thrush,
 "As she sat on a bush, I'll sing a psalm."

 "Who'll toll the bell?" "I," said the bull,
 "Because I can pull, I'll toll the bell."

 All the birds of the air fell a-sighing and a-sobbing,
 When they heard the bell toll for poor Cock Robin.

□谷川俊太郎・訳/堀内誠一・画『マザー・グース・ベスト 第3集』(草思社、2000)
□「Who killed Cock Robin?」(“THE MOTHER GOOSE TREASURY”,YOHAN PUBLICATIONS,INC,TOKYO,JAPAN,1966/レイモンド・ブリッグズ・絵。ケイト・グリナウェイ賞、英国図書館協会大賞)
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 【参考】
【詩歌】マザー・グース「ぼくがつきをみると」
【詩歌】マザー・グース「ロンドンばしがおっこちる」
【詩歌】マザー・グース「ハンプティ・ダンプティ」 ~オール・ザ・キングス・メン~
書評:『映画の中のマザーグース』


【保健】大企業の「販売促進手段」に化したトクホ ~ノンアルコール飲料~

2015年06月08日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)消費者庁が、「サッポロプラス」に許可した表示内容は、「食物繊維(難消化性デキストリン)の働きにより、糖の吸収をおだやかにする」というもの。
 他のビール大手もノンアルコール飲料のトクホを申請している。

 (2)ビール系飲料の減少が続くなか、ノンアルコール飲料の販売は堅調だ。
 しかも、酒税が課されない分、企業にとっては収益性が高い。
 厳しい競争のなかで、各社が売りにしようとしたのが「健康にいい」という機能性(効果)だった。トクホを販売促進に使うわけだ。

 (3)各社の念頭にあるのは、コカコーラ初のトクホ「キリンメッツコーラ」(2012年発売)の成功だ。この商品は、乾きを潤す清涼飲料だったコーラに健康機能を持たせ、メタボリックシンドロームに悩む中年の心をつかみ、大ヒット商品になった。
 いまや、茶、コーヒーなど飲料全般でトクホ商品がしのぎを削っている。

 (4)この流れがノンアルコール飲料にも広がってきたわけだが、昨年8月消費者委員会は、2商品のトクホ許可は「不適切」と答申した。理由・・・・トクホになると健康によいというイメージで未成年も飲むようになる。ノンアルコール飲料はアルコール飲料と清涼飲料の壁を低くし、未成年者を飲酒に誘い込む。かかる商品は、「食生活の改善が図られ、健康の維持・増進に寄与することが期待できる」というトクホの要件の一つを満たしていない。
 この答申に対して消費者庁は、2商品の有効性と安全性に問題はなく、ノンアルコール飲料も清涼飲料なのでトクホの対象となり得る、と判断。「容器に成人向けであることを表示する」「店では酒類の棚に区分陳列する」などの条件を付けて2月18日【注1】に認可した。

 (5)「特定保健食品(トクホ)」制度ができたのは、1991年。根拠不明の「いわゆる健康食品」の発売が活発になりはじめたため、科学的根拠に基づく健康食品の「優等生」をつくり、国民の健康維持・増進に役立てるのが目的だった。
 はじめは普通の食品の形態をしているものに限定されていたが、米国の圧力で、医薬品と紛らわしいサプリメントも認めることになり、2001年には医薬品と食品の区別を緩やかにした。この結果、「もっぱら医薬品として私用されるもの」以外は食品として認めることになり、これまで食べられたことのないもの(<例>イチョウの葉のエキス)まで「食品」とされるに至った。
 2001年には、栄養機能食品制度もできた。トクホと合わせて「保健機能食品」制度が発足した。
 2004年、「トクホをもっと使いやすく」という業界の声を受けて制度を見直し、審査基準を大幅に緩和した。これとともに、トクホの範囲を広げ、次の3つの新制度が追加された。
  (a)条件付きトクホ・・・・有効性の科学的根拠が通常のトクホに届かないものの、一定の有効性が確認される場合、限定的な根拠である旨の表示を条件として許可。
  (b)規格基準型・・・・許可実績が十分にあるなど、科学的根拠が蓄積されている場合、規格基準を定め個別審査を抜きにして許可。現在は食物繊維とオリゴ糖の9成分。
  (c)疾病リスク低減表示・・・・関与成分の疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合、疾病リスク低減を表示できる。現在はカルシウムと葉酸。

 (6)(5)の時期に、トクホは伸び悩む消費市場で「新たな消費を刺激する販売手段」と化していく。次の商品のヒットがその象徴だった。
    「ヘルシア緑茶」(2003年)
    「黒烏龍茶」(サントリー、2005年)
 トクホの売上高は、リーマンショック(2008年)不況や「エコナ騒動」(2009年)【注2】を受けて大きく落ち込んだが、トクホ・コーラの発売を機に急回復した。2013年の総売上高は6,300億円と、ピーク時の6,800億円(2007年)に迫るまでになっている。

 【注1】2月17日、規制改革会議の健康・医療ワーキンググループが開催され、「トクホの認可申請手続きの合理化・迅速化」が議論された。
 【注2】「【食】2年ぶりに食品安全委員会の評価再開 ~花王「エコナ」が復活か?~

□岡田幹治(ジャーナリスト)「大企業の「販売促進手段」に成り果てたトクホ ノンアルコール飲料まで許可」(「週刊金曜日」2015年5月29日号)
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 【参考】
【食】機能性表示食品の安全性 ~茶カテキン過剰摂取の危険性~
【食】健康食品の七つの大罪 ~2兆円規模の成長産業~」 
【食】復活した「魚肉ソーセージ」 ~添加物満載~
【食】2年ぶりに食品安全委員会の評価再開 ~花王「エコナ」が復活か?~
【食】消費者庁が健康食品の機能性表示案を提示
【食】効能表示をしたい健康食品業界と歯止めをしたい消費者庁」 
【保健】2兆円市場の「真実」 ~健康食品・サプリ~

     サルビア・ファリナセア