(1)厚生労働省は、6月12日から、生食用豚肉と内臓の販売・提供も禁止した。
2011年、「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件が起きた(患者数181人、死亡者5人、うち6歳の男児2人)。これがきっかけで生食用牛の肝臓(牛のレバ刺し)が提供・販売禁止になった。
このたび、禁止の対象が牛から豚へ広がったわけだ。
じつは、豚レバーを提供する店が、2012年の80店から2013年には190店に増えた【厚労省調査】。牛レバーの代替物として豚レバーを提供するようになったからだ。
(2)生の豚肉や内臓は、食中毒の危険もさりながら、E型肝炎に感染する危険性もあるのだ。
E型肝炎に感染すると、死に至ることもある。
それを知らずに平然と食べるのは、提供する店も問題であるにせよ、命知らずと呼ばねばならない。
(3)厚労省は、豚肉や豚の内臓を食べる習慣は日本になかったから、あえて規制する必要性はない、と考えていた。しかし、これ以上、豚の肉や内臓を生食する習慣が広がると、犠牲者が出る危険性が高まるとして規制に踏み切った。
「生食文化の崩壊」という意見もあるが、肉の生食文化など日本には根づいていない。
野菜、魚、卵などは日本の生食文化と言えるが、肉や内臓を生で食べ始めたのは最近のことだ。
(4)特にテレビの影響が大きい。マスコミは美味しさの表現を決めたがる傾向が強い。
「柔らかい」
「口の中に入れたらとろけてしまった」
「噛まなくていい」
要するに、「柔らかい=美味しい」のだ。「肉は柔らかくなくてはいけない」という思いが消費者に強くなり、行き着いた先が「生食」なのだ。
(5)問題は、食にどんなリスクがあるのかを知らない消費者が多いことだ。リスクを伝えようとしないマスコミが多いことだ。
そして、消費者は概して食のリスクを聞きたがらない。
どんな食材にどんな効果があるのかを、ことさら大げさに扱うマスコミは、食のリスクになると、ことさら小さく扱う。
(6)政治以前に、一般生活に係る報道が偏りすぎている。そのため、
「飲食店で提供されるものに危険なものはない」
「市場に流通しているものは、国が安全だと認めたものばかりだ」
などと勘違いする消費者が出てくる。
(7)「食は自己責任だ。国が規制するものではない」という意見もある。実はしかし、食というものは昔から「自分の責任で食べるもの」なのだ。
国が定めている基準は、いかなるものも、あくまで安全の目安にすぎない。「国の基準を守っているものはすべて安全だ」などという保証はない。
(8)今の時代は、いいことばかり、耳当たりのいいことばかりしか情報提供されない。そうなればリスクを知らせる方法は規制しかない。規制が多くなることを歓迎しているわけではないにしても。
厚労省は、ハンバーグの危険性は「業者も消費者も百も承知している」として表示規制すらやっていない。
しかし、ハンバーグの危険性を知っている消費者は少ない。
「ハンバーグは中まで十分加熱しなければならない」と規制しなければならない日は、そう遠くない。
□垣田達哉(消費者問題研究所代表)「規制やむなし。こんなに危ない豚肉&内臓の生食」(「週刊金曜日」2015年6月19日号)
↓クリック、プリーズ。↓
2011年、「焼肉酒家えびす」の集団食中毒事件が起きた(患者数181人、死亡者5人、うち6歳の男児2人)。これがきっかけで生食用牛の肝臓(牛のレバ刺し)が提供・販売禁止になった。
このたび、禁止の対象が牛から豚へ広がったわけだ。
じつは、豚レバーを提供する店が、2012年の80店から2013年には190店に増えた【厚労省調査】。牛レバーの代替物として豚レバーを提供するようになったからだ。
(2)生の豚肉や内臓は、食中毒の危険もさりながら、E型肝炎に感染する危険性もあるのだ。
E型肝炎に感染すると、死に至ることもある。
それを知らずに平然と食べるのは、提供する店も問題であるにせよ、命知らずと呼ばねばならない。
(3)厚労省は、豚肉や豚の内臓を食べる習慣は日本になかったから、あえて規制する必要性はない、と考えていた。しかし、これ以上、豚の肉や内臓を生食する習慣が広がると、犠牲者が出る危険性が高まるとして規制に踏み切った。
「生食文化の崩壊」という意見もあるが、肉の生食文化など日本には根づいていない。
野菜、魚、卵などは日本の生食文化と言えるが、肉や内臓を生で食べ始めたのは最近のことだ。
(4)特にテレビの影響が大きい。マスコミは美味しさの表現を決めたがる傾向が強い。
「柔らかい」
「口の中に入れたらとろけてしまった」
「噛まなくていい」
要するに、「柔らかい=美味しい」のだ。「肉は柔らかくなくてはいけない」という思いが消費者に強くなり、行き着いた先が「生食」なのだ。
(5)問題は、食にどんなリスクがあるのかを知らない消費者が多いことだ。リスクを伝えようとしないマスコミが多いことだ。
そして、消費者は概して食のリスクを聞きたがらない。
どんな食材にどんな効果があるのかを、ことさら大げさに扱うマスコミは、食のリスクになると、ことさら小さく扱う。
(6)政治以前に、一般生活に係る報道が偏りすぎている。そのため、
「飲食店で提供されるものに危険なものはない」
「市場に流通しているものは、国が安全だと認めたものばかりだ」
などと勘違いする消費者が出てくる。
(7)「食は自己責任だ。国が規制するものではない」という意見もある。実はしかし、食というものは昔から「自分の責任で食べるもの」なのだ。
国が定めている基準は、いかなるものも、あくまで安全の目安にすぎない。「国の基準を守っているものはすべて安全だ」などという保証はない。
(8)今の時代は、いいことばかり、耳当たりのいいことばかりしか情報提供されない。そうなればリスクを知らせる方法は規制しかない。規制が多くなることを歓迎しているわけではないにしても。
厚労省は、ハンバーグの危険性は「業者も消費者も百も承知している」として表示規制すらやっていない。
しかし、ハンバーグの危険性を知っている消費者は少ない。
「ハンバーグは中まで十分加熱しなければならない」と規制しなければならない日は、そう遠くない。
□垣田達哉(消費者問題研究所代表)「規制やむなし。こんなに危ない豚肉&内臓の生食」(「週刊金曜日」2015年6月19日号)
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