語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【古賀茂明】維新が復活する日

2015年06月06日 | 社会
 (1)5月17日、大阪都構想の賛否を問う住民投票が行われた。久々の政治ドラマに国中が沸き返った。
 大騒動後の政治ドラマ「第二幕」はどうなるか。
 都構想が否定されて、主役だった橋下徹は、大阪市長の任期(12月まで)満了後に政治家を辞める、と宣言した。

 (2)皮肉にも、今回の住民投票は、負けた橋下徹の実力の大きさを見せつけた、と言っても過言ではない。
 良くも悪くも、「橋下だからできた住民投票。橋下だから負けた住民投票」ということに尽きる。

 (3)橋下を失って、しばらくすればどうしようもない焦燥感が大阪を覆うだろう。
 橋下のような人物抜きで大阪を大きく変えることは、とてもできないからだ。
 それは、日本中、どこでも同じことだ。
 目前に迫った高齢化コスト大爆発への対応に目処が立っている自治体など、皆無と言ってよい。そういう普通の自治体の仲間入りした大阪には、茨の道が待っている。

 (4)国政では、橋下が住民投票で敗れたことは、安倍政権には打撃で、民主党には追い風という解説が多いが、そう単純でもない。
 安保法制の国会審議はもちろん、来年以降の憲法改正で維新と連携して参議院の3分の2を制したい、と考えていた安倍政権には、直接的には打撃だ。
 しかし、松野頼久・元民主党が維新代表に就いたから、維新の路線が橋下時代の自民党寄りが消えて、民主党寄りになる、という民主党の期待はいかがなものか。
 これで民主党主導の野党再編気運が高まる、というのは余りにも楽観的だ。
 なぜなら、先の統一地方選挙で、国民は民主党に期待していないことが極めてはっきりしたからだ。

 (5)維新の力が落ちたからと言って、どうして国民が民主党に期待するだろうか。
 むしろ、浮かれる民主党を見て、ますますシラケてしまう。

 (6)とりわけ、これから議論される安保法制について、民主党の立ち位置は極めて微妙だ。
 安倍政権の下では、集団自衛権にも改憲にも反対、というが、裏を返せば、他の政権ならいずれも認めたい、という党内タカ派の声が透けて見える。
 そんないい加減な政策を掲げていては、民主党への国民の不信感は払拭されるはずがない。

 (7)解体説も囁かれる維新に復活の芽はないか。
 起死回生の一策があるとすれば、リベラル色を強め、タカ派議員を離党させることだ。
 大阪以外では、実は、橋下が「怖い」とか「嫌い」とかいう女性は非常に多い。
 橋下が抜けたことでリベラルな維新が出現すれば、「改革はするが戦争はしない」という政党を探して漂流していた無党派層が、一気に維新に流れ込む可能性がある。
 維新復活があるとしたら、大胆なリベラル化路線しかない。維新の議員は、それに気づくか。 

□古賀茂明「維新が復活する日 ~官々愕々第156回~」(「週刊現代」2015年6月6日号)
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【詩歌】マザー・グース「ハンプティ・ダンプティ」 ~オール・ザ・キングス・メン~

2015年06月06日 | 詩歌
      Humpty Dumpty ”Through the Looking-Glass,and What Alice Found There”
    


 ハンプティ・ダンプティ へいにすわった
 ハンプティ・ダンプティ ころがりおちた
  おうさまのおうまをみんな あつめても
  おうさまのけらいをみんな あつめても
 ハンプティを もとにはもどせない

 Humpty Dumpty sat on a wall,
 Humpty Dumpty had a great fall.
 All the king's horses,
 And all the king's men,
 Couldn't put Humpty together again.

  *  

 ヨーロッパ各地(仏、独、デンマーク、スウェーデンなど)に卵の紳士を題材とした唄が伝わっている。ハンプティ・ダンプティの唄は、もとは卵を答とする謎々だったが、ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』によって謎々だったことが忘れ去られるほど周知された。名高い唄だけに、パロディも多い。
 ハンプティ・ダンプティのイメージは「非常に危なっかしい状態」「もとに戻せない状態」「丸まるとした人や頭」などだ。

 ハンプティ・ダンプティは、今や古典となった2本の映画のタイトルの下敷きになっている。
 (1)『オール・ザ・キングズメン』の原題は ”All The King's Men”(1949.US)。ロバート・ペン・ウォレンの長編小説『王様の臣下をみんな集めても』(1946年ピューリッツア賞受賞)の映画化だ。独裁的な権力をふるった政治家ウィリー・スタークの破滅の物語で、「もうどうにもならない」政治腐敗の状況を描いている。
 (2)ウォーターゲート事件を扱った『大統領の陰謀』の原題は "All the President's Men"(1946.US)。このフレーズを聞いただけで、マザーグースを聞いて育った人なら「塀から落ちた卵」を連想する。大統領の側近がどれだけもみ消し工作をしたところで、失脚したニクソンを元に戻すことはできない、というニュアンスをこの本歌取りで鮮やかに描きだす。

□谷川俊太郎・訳/堀内誠一・画『マザー・グース・ベスト 第1集』(草思社、2000)
□「Humpty Dumpty」(“THE MOTHER GOOSE TREASURY”,YOHAN PUBLICATIONS,INC,TOKYO,JAPAN,1966/レイモンド・ブリッグズ・絵。ケイト・グリナウェイ賞、英国図書館協会大賞)
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 【参考】
書評:『映画の中のマザーグース』

     楽譜
   
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