語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】安藤次男「球根たち」

2015年06月26日 | 詩歌
 みみず けら なめくじ

 目のないものたちが
 したしげに話しかけ
 る死んだものたちの
 眼をさがしていると

 一年じゅう
 の息のにお
 いが犇めき
 寄つてくる

 小鳥たちの屍骸
 がわすれられた
 球根のようにこ
 ろがつている月

 葬られなかつた
 空をあるく寝つき
 のわるい子供たち

 あすは、
 すいみつ。せみ。にゅうどうぐも。

□安藤次男「球根たち(六月)」(駒井哲郎・画『からんどりえ』(ユリイカ、1960))
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【メディア】とTPPの「壁」を突き崩す調査報道

2015年06月26日 | 批評・思想
 (1)TPPの動きが慌ただしい。米国議会でTPP法案(大統領に貿易交渉の権限を委譲する法案)の成立が微妙になり、協定そのものが危うくなっている。
 TPPの旗を振るのはオバマ大統領だ。しかし、米国でTPP反対派は与党の民主党に多い。推進派は共和党だ。「反TPP」の火の手は政権の足元から上がっている。
 1%の強者が99%の富を握る社会と闘う市民運動、失業を恐れる労働組合。与党民主党を支える米国のリベラル勢力が、交渉に反対している。

 (2)TPPの守秘義務も議会で問題になった。
 民意に押され、米国では1月から条約案が連邦議会の議員に開示されるようになった。
 「米国では議員に閲覧させている協定案が、なぜ日本で開示されないのか」
 国会で問題になると、甘利明・TPP担当相があいまいな答弁で窮地に立った。
 秘密交渉といいながら、交渉相手国の議会には公開されている。大臣が答弁に窮するのも当然だ。
 こうした動きはなぜか記事にならない。野党が委員会で追及しても、国会担当の記者は専門外と放置したのか、それとも「秘密交渉」への感度が鈍いのか。
 「日米議会の情報格差」をメディアは黙認した。

 (3)それが、突如浮上した。
 ワシントンで、西村康稔・内閣府副大臣が、できるだけ早く閲覧できるようにする、と発言したからだ。米国で連邦議員から話を聞き、厳重な守秘義務を条件に案文を閲覧している事実を確認した。記者会見でいわく、
 「日本では国会議員に守秘義務の罰則がないが、どういう範囲で閲覧を認めるか検討する」

 (4)外国での会見は、あらかじめ当てる記者を決め、事前に質問を聞き、想定問答を用意して臨むのが日本のやり方だ。甘利TPP担当相と打ち合わせした上での発言だろう。
 ところが、ニュースが東京に伝わると、菅官房長官が激怒した、という。「どんな権限で言っているんだ」
 西村副大臣は、二日後、あえなく発言を撤回。帰国して国会で詫びた。

 (5)一連のドタバタ劇は、
   「政府苦慮 日米議会で差」【読売】
   「野党反発 経緯検証を求める」【毎日】
   「西村副大臣が謝罪」【朝日】
など西村副大臣がの軽率な発言が巻き起こした事件のように扱われた。
 軽い副大臣と、逆ギレする官房長官。
 対照は妙だが、政治の小咄で終わらせるような出来事か。

 (6)TPP条約文の非公開は、米国の意向で決まった、と言われる。確認はできない。交渉の経過が公開されていないからだ。
 米国は、各国に守秘義務をかませながら、一昨年の米中首脳会談でオバマ大統領は習近平・国家主席にTPP交渉の進展に合わせた情報提供を約束した。
 交渉は対等であるべきなのに、米国はルールを自分の都合で如何様にもできる。第三国に情報を渡し、自国の議員は特別扱いだ。

 (7)不合理に慣らされると、不合理を不合理と感じなくなる。
 (5)に見られる記者の危うさは、そんなところにありはしないか。
 そもそも秘密交渉であることが不合理なのだ。
 交渉は21分野ある。・・・・①物品市場アクセス、②原産地規則、③貿易円滑化、④SPS(衛生植物検疫)、⑤TBT(貿易の技術的障害)、⑥貿易救済(セーフガード等)、⑦政府調達、⑧知的財産、⑨競争政策、⑩越境サービス貿易、⑪商用関係者の移動、⑫金融サービス、⑬電気通信サービス、⑭電子商取引、⑮投資、⑯環境、⑰労働、⑱制度的事項、⑲紛争解決、⑳協力、?分野横断的事項。
 素人にはうかがいしれない項目が並んでいる。
   ・コメの自由化・・・・①物品市場アクセス
   ・東京メトロと東京都との関係・・・・⑨競争政策
   ・ディズニー映画の著作権延長・・・・⑧知的財産
   ・企業が国家から賠償金を取るISDS条項・・・・⑲紛争解決
 無機質な項目に企業と消費者、資本と労働、強者と弱者の利害損得が絡み、切れば血が出る葛藤が渦巻いている。
 秘密交渉だから、何がどう議論されているのか、外からはわからない。

□神保太郎「メディア批評第91回」(「世界」2015年7月号)の「(2)TPPとメディア「壁」を突き崩す調査報道」
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