語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】安藤次男「碑銘」 ~敗戦忌~

2015年06月29日 | 詩歌
 建てられたこんな塔ほど
 死者たちは偉大ではない
 ぼくは死にたくなんぞないから
 ぼくにはそれがわかる
 ところでなぜぼくは
 こんなところに汗を垂らしてうつむいて
 いるのだ一篇の詩がのこしたいためか
 似たりよったりの連中のなかで
 生れもつかぬ片輪の子を生んで俺の
 子ではないとなすりつけ
 あいたいためかぼくにはそれがわかる
 建てられたこんな塔ほど
 死者たちは偉大ではない。

□安藤次男「碑銘(八月)」(駒井哲郎・画『からんどりえ』(ユリイカ、1960))
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 【参考】
【詩歌】安藤次男「年齢について」
【詩歌】安藤次男「鎮魂歌」
【詩歌】安藤次男「球根たち」





【メディア】集票キャンペーンの検証が課題 ~橋下劇場の終幕~

2015年06月29日 | 批評・思想
 (1)大衆を扇動する力量は安倍首相を凌駕するポピュリストが、住民投票で舞台から引きずり降ろされた。
 さすが、テレビから生まれた政治家だ。カメラに向かって引退を語る橋下徹・大阪市長は、精一杯の潔さを装って、次へと命脈をつないだ。

 (2)「橋下劇場・大阪都合戦」の幕が下りると、関心事は市長退任後の去就へ移った。
 その前に、メディアにはなすべきことがある。
 集票活動の決算だ。
 大量のテレビCMや折り込みビラなどの運動資金は、誰がどこから集めたのか。

 (3)公職選挙法の規制がない住民投票は、さながら米国大統領の選挙だ。運動資金を集めて、CMをじゃんじゃん流す。強者に有利な集票運動だ。大阪の住民投票は、かんじがらめの公選法の対極にあって、「規制緩和の集票運動」だ。
 都構想賛成派の前線は、橋下人気にだけに拠るのではない。大量の資金がモノを言った。
 メディアの仕事は、収支報告をきちんと検証することだ。

 (4)橋下市長は、1月の記者会見で、住民投票は「憲法改正・国民投票の予行演習」と発言した。このことは、もっと注目されてよい。憲法改正は、住民投票の裏テーマだったのだ。
 改憲というキーワードが、大阪の運動と首相官邸をつないだ。自民党大阪府連反橋下でまとまったが、党本部は動かず、首相官邸は橋下支持を隠さなかった。

 (5)大阪での争点は、「都構想の是非」だが、中央政界では「改憲連合」が画策された。都構想で勝利した橋下と組めば、悲願の憲法改正にはずみがつく。安倍首相は期待しただろう。
 朝日、毎日、読売など全国紙は、大阪発行の紙面で「熱気帯びる都合戦」を細大漏らさず取り上げた。東京発行の紙面に大阪の熱気はほとんど載らず、維新の党を軸とする政局記事が目立った。
 政党再編は政治記者が好きな話題だが、読み足りない。安倍・橋下が水面下でどのように繋がっているかが描かれていない。
 安倍政権にとっては、官房機密費を投じてでも勝たせたい選挙に違いなかった、 
 表立っては応援できない首相や官房長官は、裏で何をしていたのか。
 現在進行形で記事にするのは難しいだろうが、これからでも遅くはない。読者がメディアに期待するのは、権力者への監視だ。

□神保太郎「メディア批評第91回」(「世界」2015年7月号)の「(2)TPPとメディア「壁」を突き崩す調査報道」
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