たんぽぽと叫び喧嘩を仲裁す ひよどり 一平
(たんぽぽとさけびけんかをちゅうさいす)
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数人の小学生低学年の男の子たちが、険悪な雰囲気でワイワイやっていました。
その時、たまたま私は腹這いになって、タンポポを撮っていたのです。
低学年の子供たちですから、さほどの騒ぎにはならないでしょうが、私の目の前で喧嘩をして欲しくはありませんでした。
一計を案じました。
「おーいタンポポだぞ~、ちょっと見てみろよ!」。とっさに大声で叫びました。
呆気にとられた様子の男の子たちが、それでも仕方なしに寄ってきました。
見慣れたタンポポだったので、一様に興味なさそうな顔でした。
「これ、仲好しタンポポっていうんだよ。知ってた?」 みんなが首を振りました。
「よく見ておきなよ。喧嘩はそれからだって遅くないよ。喧嘩は逃げないんだから」
「でも、同じタンポポじゃん、ほかのヤツと」 言いながらも、じっと眺めていました。
「へー、それでは仲好しにはなれないなぁ。仕方がないねぇ、じゃ、喧嘩していいよ」と、言ってみたのです。
「いいよ、もう終わったんだから……」 年長らしい男の子が、ボソボソと言った。
「ふーん、もう終わっちゃったのか。じゃ、私も帰るかな」と、腰を上げました。
その時、男の子たちから、元気な声が上がりました。
「ありがとうございました!」
私は黙ったままで、三脚を大きく振りました。
やっぱり、仲好しタンポポは効き目があるのです。
わぁ、良い仲裁法でしたね。
春ですねぇ。