子供の頃から、私は短気だった。
身体に幾つかの傷があるが、我慢が出来なかったことによって負った傷だ。
母親にはその都度諭されたが、短気はおいそれと直るものではなかった。
母親の言葉に、「腹が立ったら、親指の爪を舐め、その爪が乾くまでものを言うな」というのがあった。母親の知恵だったのか、誰かの知恵だったのか、私は知らない。ことがある度に言い聞かされていた。
爪が乾くまでには、気持ちが落ち着くということらしかった。
その後、幾度も腹を立てたが、親指の爪を舐めたことはなかった。常に、指を舐める余裕はなかったのだ。
間もなく米寿という今、短気とは言えども、怒り方が少し和らいできたと思っている。もちろん、爪は舐めていない。
一方、詫び言がサマになってきたとも思っているのだが、果たしてどうだろうか。
詫び言は大仰がよし芋嵐 ひよどり 一平
(わびごとはおうぎょうがよしいもあらし)