kan-haru blog 2011 第83幅部分拡大
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その2に続き、展示された第11幅からの五百羅漢図の各場面を観賞して回ると、第81~90幅の「さまざまな天災、人災からの救済を表す場面」で地震や台風・洪水などの天災・人災が描かれており、大変とショックを受けました。東日本大地震は、五百羅漢図の時代から変わることなく地震、津波の天災により大災害を被りました。さらに今日では放射能の人災の災害が新たに加わりました。これを契機に復興を図り、さらに人智を尽くして天災から守り、人災をなくすことを明日の日本のために進めなければなりません。
第11~20幅
第11~20幅の「自ら懺悔し、出家者や異教徒を教化する場面」は、第11、12幅が「授戒」で僧になろうとする人に戒律を授ける場面、第13、14幅が「布薩」で羅漢達の反省会の場面、第15、16幅が「論議」で羅漢達の議論の場面、第17、18幅が「剃度」で仏門に入る少年を剃髪する場面、第19、20幅が「伏外道」で異教徒の外道を力ずくで入信させる場面が描かれています。ここまでの、第20幅までが五百羅漢図のプロローグです。
第11幅部分拡大(第11幅 授戒)
第21~40幅
第21~40幅の「生前の罪により巡る地獄など六道から救済する場面」は六道輪廻の描写で、第21~24幅が「六道 地獄」で地獄の描写は一信がもっとも意気を込めて筆を走らせた場面であり、第25~28幅が「六道 鬼趣」で餓鬼道を描いた場面、第29、30幅が「六道 畜生」で畜生道を描いた場面、第31、32幅が「六道 修羅」で阿修羅道を描いた場面、第33~36幅が「六道 人」で人道を描いた場面、第37~40幅が「六道 天」で人道を描いた場面が描かれています。この第21~40幅は「第1部」であり、六道 地獄の絵は恐ろしいほど迫力のある絵で、ざっと見て歩きましたがここまででかなり疲れがでてきました。
第22・23幅部分拡大(左:第22幅六道 地獄、右第23幅六道 地獄)
第41~50幅
第41~50幅の「12の衣食住に関する欲を取り除く修行の場面」は「第2部」でここからの羅漢図はさらに凄みが増していきます。第41、42幅が「十二頭陀 阿蘭若」で羅漢たちが仏像を彫ったり、数珠を作っているところを描いており、一信が西洋画法に傾斜していき、透視遠近法的な表現になっています。第43~50幅は、「十二頭陀 常乞食、次第乞食、節食之分、中後不飲漿 一座食 節量食、衲衣、但三衣、冢間樹下、路地常座」で羅漢達の托鉢や裁縫、洗濯と路地修業が描かれています。第45、49、50幅では陰影法を駆使して一信の独創的な表現法を生み出しています。
第45・49幅十二頭陀(左:第45幅十二頭陀 節食之分、右:第49幅十二頭陀 冢間樹下)
第51~60幅
第51~60幅の「神通力を発揮する場面」は「神通」で羅漢達の超能力の神通力を描いており、突飛な発想で羅漢の頭から水が噴き出したり、羅漢が顔の皮を剥ぎ観音菩薩であることを示したり、鏡面から放たれる釈迦のビーム(その2部分拡大参照)を描いたりの突飛な構想はここで終わり、「第2部」のハイライトである。
第51・55幅部分拡大(左:第51幅神通、右:第55幅神通)
第61~70幅
第61~70幅の「禽獣たちを手なづける場面」は、「禽獣」を描きここから「第3部」です。ここでは、さまざまの動物を手なずける描写が見られます。
第69幅部分拡大(第69幅 禽獣)
第71~74幅
第71~74幅の「竜宮に招かれ、供養を受ける場面」は、「龍供」で羅漢達が竜宮に行き歓待を受ける描写で、これまでの羅漢図と比較すると人物が小さくなり、弟子の一純の関与する割合がたかまっています。
第71・74幅龍供(左:第71幅龍供、右:第74幅龍供)
第75~80幅
第75~80幅の「仏像や舎利を洗い、寺院を建立する場面」は、「洗仏等、洗舎利、堂伽藍」では釈迦誕生の場面、寺院建立の場面が描かれている。
第80幅部分拡大(第80副堂伽藍)
第81~90幅
第81~90幅の「さまざまな天災、人災からの救済を表す場面」は、「七難 震、風、羅刹、悪鬼、刀杖、賊、枷鎖、盗」では、地震の場面、台風による洪水の場面、親子に襲いかかる羅刹・悪鬼・兵士の戦い・盗賊・裁き・盗賊等を羅漢がビームで懲らしめる場面が描かれており、第80幅までの画面と異なり背景は全て真っ黒に塗りこめられている。地震、洪水など、今でも変わらぬ辛い光景には恐ろしく感じます。
第81・83幅七難(左:第81幅七難 震、右:第83幅七難 風)
第91~100幅
第91~100幅の「須弥山のまわりにある4つの大陸を巡る場面」は、「四州 南、東、西、北」では、仏教の世界観で外周に位置する東西南北の「洲」のありさまを描いています。
一信は、91幅を描きはじめたころにはすっかり弱っており、96幅まで描いたところで没しました。残りの4幅は、下絵をもとに妻と弟子が補作したとされている。第95幅までと第96幅以降の五百羅漢図の画質は背景図を簡略され、なんとなく見栄えがしなくなった感じです。(増上寺秘蔵の壁画五百羅漢幕末の絵師狩野一信から)
第93・99幅四州(左:第93幅四州 南、右:第99幅四州 北)
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毎月1日付けのIndexには、前月の目次を掲載しております(5月分掲Indexへ)
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次回 イベント 東京国立博物館 江戸三座の役者28図を描いてデビューし10カ月で姿を消した東州斎写楽を見るその1
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その2に続き、展示された第11幅からの五百羅漢図の各場面を観賞して回ると、第81~90幅の「さまざまな天災、人災からの救済を表す場面」で地震や台風・洪水などの天災・人災が描かれており、大変とショックを受けました。東日本大地震は、五百羅漢図の時代から変わることなく地震、津波の天災により大災害を被りました。さらに今日では放射能の人災の災害が新たに加わりました。これを契機に復興を図り、さらに人智を尽くして天災から守り、人災をなくすことを明日の日本のために進めなければなりません。
第11~20幅
第11~20幅の「自ら懺悔し、出家者や異教徒を教化する場面」は、第11、12幅が「授戒」で僧になろうとする人に戒律を授ける場面、第13、14幅が「布薩」で羅漢達の反省会の場面、第15、16幅が「論議」で羅漢達の議論の場面、第17、18幅が「剃度」で仏門に入る少年を剃髪する場面、第19、20幅が「伏外道」で異教徒の外道を力ずくで入信させる場面が描かれています。ここまでの、第20幅までが五百羅漢図のプロローグです。
第11幅部分拡大(第11幅 授戒)
第21~40幅
第21~40幅の「生前の罪により巡る地獄など六道から救済する場面」は六道輪廻の描写で、第21~24幅が「六道 地獄」で地獄の描写は一信がもっとも意気を込めて筆を走らせた場面であり、第25~28幅が「六道 鬼趣」で餓鬼道を描いた場面、第29、30幅が「六道 畜生」で畜生道を描いた場面、第31、32幅が「六道 修羅」で阿修羅道を描いた場面、第33~36幅が「六道 人」で人道を描いた場面、第37~40幅が「六道 天」で人道を描いた場面が描かれています。この第21~40幅は「第1部」であり、六道 地獄の絵は恐ろしいほど迫力のある絵で、ざっと見て歩きましたがここまででかなり疲れがでてきました。
第22・23幅部分拡大(左:第22幅六道 地獄、右第23幅六道 地獄)
第41~50幅
第41~50幅の「12の衣食住に関する欲を取り除く修行の場面」は「第2部」でここからの羅漢図はさらに凄みが増していきます。第41、42幅が「十二頭陀 阿蘭若」で羅漢たちが仏像を彫ったり、数珠を作っているところを描いており、一信が西洋画法に傾斜していき、透視遠近法的な表現になっています。第43~50幅は、「十二頭陀 常乞食、次第乞食、節食之分、中後不飲漿 一座食 節量食、衲衣、但三衣、冢間樹下、路地常座」で羅漢達の托鉢や裁縫、洗濯と路地修業が描かれています。第45、49、50幅では陰影法を駆使して一信の独創的な表現法を生み出しています。
第45・49幅十二頭陀(左:第45幅十二頭陀 節食之分、右:第49幅十二頭陀 冢間樹下)
第51~60幅
第51~60幅の「神通力を発揮する場面」は「神通」で羅漢達の超能力の神通力を描いており、突飛な発想で羅漢の頭から水が噴き出したり、羅漢が顔の皮を剥ぎ観音菩薩であることを示したり、鏡面から放たれる釈迦のビーム(その2部分拡大参照)を描いたりの突飛な構想はここで終わり、「第2部」のハイライトである。
第51・55幅部分拡大(左:第51幅神通、右:第55幅神通)
第61~70幅
第61~70幅の「禽獣たちを手なづける場面」は、「禽獣」を描きここから「第3部」です。ここでは、さまざまの動物を手なずける描写が見られます。
第69幅部分拡大(第69幅 禽獣)
第71~74幅
第71~74幅の「竜宮に招かれ、供養を受ける場面」は、「龍供」で羅漢達が竜宮に行き歓待を受ける描写で、これまでの羅漢図と比較すると人物が小さくなり、弟子の一純の関与する割合がたかまっています。
第71・74幅龍供(左:第71幅龍供、右:第74幅龍供)
第75~80幅
第75~80幅の「仏像や舎利を洗い、寺院を建立する場面」は、「洗仏等、洗舎利、堂伽藍」では釈迦誕生の場面、寺院建立の場面が描かれている。
第80幅部分拡大(第80副堂伽藍)
第81~90幅
第81~90幅の「さまざまな天災、人災からの救済を表す場面」は、「七難 震、風、羅刹、悪鬼、刀杖、賊、枷鎖、盗」では、地震の場面、台風による洪水の場面、親子に襲いかかる羅刹・悪鬼・兵士の戦い・盗賊・裁き・盗賊等を羅漢がビームで懲らしめる場面が描かれており、第80幅までの画面と異なり背景は全て真っ黒に塗りこめられている。地震、洪水など、今でも変わらぬ辛い光景には恐ろしく感じます。
第81・83幅七難(左:第81幅七難 震、右:第83幅七難 風)
第91~100幅
第91~100幅の「須弥山のまわりにある4つの大陸を巡る場面」は、「四州 南、東、西、北」では、仏教の世界観で外周に位置する東西南北の「洲」のありさまを描いています。
一信は、91幅を描きはじめたころにはすっかり弱っており、96幅まで描いたところで没しました。残りの4幅は、下絵をもとに妻と弟子が補作したとされている。第95幅までと第96幅以降の五百羅漢図の画質は背景図を簡略され、なんとなく見栄えがしなくなった感じです。(増上寺秘蔵の壁画五百羅漢幕末の絵師狩野一信から)
第93・99幅四州(左:第93幅四州 南、右:第99幅四州 北)
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