ハリ天狗の日々奮戦

天狗のごとく山を駆け、野を走る(かな^^;)。 東京は西の端・青梅発、全国行き。日々鍼を打つランニング鍼灸師の奮戦記。

悪魔が来たりて水を抜く(ハセツネ1/4)

2011年10月25日 | 大会レポート



直前になって急速に盛り上げた気持ちを胸に、ここ何年かで数倍に膨れあがった大勢の同好の士と午後1時を待ち、リラックスしてスタート。すっかり雨のハセツネを覚悟していたが落ちてこない。ぐるりと奥多摩の山々を巡って数時間後には全ての結果が出そろう。時間なんてあっという間だ。

街を抜けるまでは挨拶タイム。いきなりだけど4分台でのアップだけど悪くない。変電所手前でスタート前に会えなかったmakotoさん。ハリ天は彼を今年の50歳台優勝候補No1に押していた。夜間走が加わるハセツネは走力にプラスアルファが大切。このプラスアルファは臨機応変に形を変える。強い人は信じられないようなプラスアルファを光らせてくる。ハリ天の知る限り同世代ではmakotoさんが持つプラスアルファの入れ物が最大なのだ。


さて、とにかく心拍数優先の走りが鍵となるので、いたずらに人を追うことはやめよう。150台前半、出来れば140台で序盤を乗り切りたい。そうすれば後半へ向けたプランに勢いがつく。今熊の上りに入る。makotoさんに4年前は大岳山から一緒に引っ張り合った若いペターくんがつく。後方50mほどをキープ。やがて早々にゴンゾーさんをゲット。タッキーさんが後ろから賑やかにやって来てトライアスロンやバイク談義に花を咲かせていたらサッサと最初の急登が終わってしまった。絶好調宣言を繰り返すタッキーさんやしっかり自分のペースを計算している様子のisoさんには無理につかず、またまた後方待機作戦。連続するアップダウンのトレイルだけど、心拍も実に安定している。


 
上りで160をちょっと越えることもあるけど、意識して落とせば140台にも落ちる。これはいいぞ。走ってみないと調子ってなかなか測りづらいところがあるが、今日はいい。140後半から150前半でいながらスピードも文句なし。いい気にならぬよう引き締めるも思わず顔がほころぶ感覚。フォームを意識してリズムを保つ。

やがてぼんぼり林道との交差点・入山峠へ。

雨予報で今年は浅間峠入りを断念していた我が応援団長・ハリマネがイタキチさんやひげちゃんを伴って待っている。ここなら全員を応援できると選んだポイントだ。いたいたいた。それにしても超余裕だぜ、自分。だから機嫌がいいよ。後ろにはヤジさんや村越先生、こっしーも。

心配された雨の気配は全くなく、それより陽が差してきた。午後の早い時間から雨上がりの木立に日が射し込み始め、幻想的な光景が生まれている。思っていたよりうんと暑くて、汗もかなりかいている。スタート前に前夜作っておいてもらった「経口補水液」を都合1リットル飲み干してあったので、ハイドレーションのメダリスト入りガス抜きコーラはなるべく温存。・・・していたのだ。わざと。意図的に。やがてパンツびっしょり。ま、いつもの滝汗で別段変わったところなし。気になるのはむしろ急きょ登板を決めたシューズの方だった(inov8 FLYROC310)。右の土踏まずの1点にあたる場所は上手に加工済みで調子バッチリ。だけどソックス(tabio)との相性のせいか、靴ずれが出来たっぽい。上りになるとかかとにその靴ずれらしきがあたって痛む。下りと平らな場所では問題なし。嫌だけど仕方ないし、無視しよう。もしひどくなっても今日は集中力ではね飛ばす!そう考えたら晴れ晴れして来た。

だが、そしてこの頃、運命の時は刻一刻と近づいていたのだ。知らぬが仏。
心拍は理想的な展開で自分的には文句のつけようのない走りが出来ていた。びっしょりだったパンツの裾を汗が伝う。ふくらはぎを流れていく感覚がはっきりしている。相当暑いんだな、これは給水に気をつけなきゃいかんぞ。ハイドレに口をつける。いい味だ。前夜、息子が面白がってガス抜きを手伝ってくれた。コップ半分ほど残したそのガス抜きコーラを飲んだ彼はまずい!と。でもこれにメダリストを加えるといけるんだぜ。それにしても汗の量が半端じゃない。体はおかしな所はなにもないよ。しかし、いつの間にか悪魔が忍び寄っていたのだ。伝う汗とおぼしき水分はやがてシューズの中までびちょびちょに入り込み、まるで水たまりの中を走っているかのような感覚。あり得ない。え、え、えっ?
上り坂? 下り坂? いやいや、ま坂? まさか、まさか。
 
胸元のマジックテープをはがしinoxさんの最新作・ベロニカを降ろす。黒い液体がシャーシャーと流れている。チャックを開けるのももどかしく中を覗き、ハイドレを引き出す。空っぽかと思う程の信じられないようなハイドレーションが現れた。300mlあるかなきか。底の部分にしっかり穴があいていて、勢いよく流れ出ている。目を疑うのと同時に血の気が引くのがわかった。んな!ボーッとはしておられん。だけど、まだ1時間半ほどしか経過していない。この後どうするのだ。ここで終わりか。止めなければならないのか。一瞬の躊躇ののち、ハイドレを逆さにし再びセット。何も考えずすぐに走り出す。あわてるな。あわてるな。考えはまとまってはいないが足だけは動き続けている。すぐにペースが戻ってきた。さっきまで前後していた選手にも追いついた。よし。大丈夫だ。何が大丈夫なのか何の確信もなく、ただひたすら、大丈夫大丈夫と言い聞かせる。メイクドラマだ。ちょっと落として走ればなんとかなる。そうだ、逆境がやって来てこそのドラマだ。よし、見てろよ。急激に燃えさかる内なる炎。かなりキリリとかっこよかった・・・はず。
そういや、体育館を出る時に玄関先でカーボショッツ10個+メダリストを薄めた特製ボトルを落とし、なんと口を割ってしまっていた。バタバタとボトル交換して臨んだレースだった。これが一つ目。靴ずれが二つ目。そしてこれが三つ目か。
大丈夫大丈夫と言い聞かせていたけどまたまた濡れがひどくないか?再びストップ。逆さにしていたがつぶれてやっぱり流れ出てしまっている。呆然。横をアレッとDiet Go Go!! さん、USさん、TWさんが続いて走り抜けていく。ハイドレを引き出し逆さに巾着絞りにして手に持ち再スタート。


【by オールスポーツ】

今思えば絶望的な残量だけど、この時はまだ行けるとジタバタしていたのだ。USさんに追いつき先行までする。テープがありますよという申し出をいただくが、NATHANのハイドレ素材はくっつきにくい。2人でしばらく進むうちに段々に冷静になってきた。激しく頭の中が回転を繰り返す。動ける体に「リタイア」という選択肢は全く浮かばない。だけどどうやら今日は完走狙いに切り替えるしかない。タイムは狙えない、それしか道がない。そう決断した瞬間、そっと水を抜きに来ていた悪魔がにやりと笑って立ち去って行ったのだった。

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ハリ天狗マネージャーの笑顔いっぱい!

コメント (10)
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